1995年/アメリカ/監督:トニー・スコット/出演:ジーン・ハックマン、デンゼル・ワシントン、ヴィゴ・モーテンセン、ジョージ・ズンザ、ジェームズ・ガンドルフィーニ
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
「艦の名を知っているな?」
———–「知っております」
「栄光に輝く名だ」
————「栄光に輝く名です」
「艦員は粒ぞろい」
————「粒ぞろいです」
「誇り高いアメリカ人だ」
————「その通りです」
「世界最高の国だ」
————「世界最高の国です」
「その艦の名は?」
————「“アラバマ”です」出典:【クリムゾン・タイド】字幕
雨の出航の日、愛犬のリードを大事に握って軍の雨具に身を包んだラムジー大佐(ジーン・ハックマン)が颯爽と現れ、部下に叫び問いかけ士気を上げる。
余りのカッコ良さに冒頭15分で全身鳥肌に覆われ目頭が熱くなる映画もそうあるまいよ。
1995年公開のヒーローアクション、【クリムゾン・タイド】です。
映画【クリムゾン・タイド】のタイトルの意味とあらすじザックリ
タイトル【クリムゾン・タイド】の意味については諸説ありますが、直訳はとりあえず「深紅の潮流」。
言われてみればメディアのパッケージデザインも真っ赤っか。
よく言われるのがこの赤系の色(深紅)が「ソ連」や「共産主義」を表していて、ソ連の脅威(潮流)にさらされた状況を指しているというもの。
これはこれで納得してしまいそうではあるんですが、よく考えたら別にソ連の脅威にさらされているという内容の映画ではない。
パッケージ写真からも分かるように、自身のたぎる血潮と信念を隠すことなく燃え上がらせているのはジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンのお二人。
すなわち原子力潜水艦の艦長と副艦長という立場にある彼らの白熱の攻防によって生まれた激しい潮流を指しているのではないでしょうか。
ここで言う「潮流」とはもちろん艦内に漂う抗いがたい「流れ」であって、次第にその流れは艦長と副艦長の2人を中心に望むと望まざるにかかわらず艦内の人員総てを巻き込んだ大きな潮流となっていきます。
艦長が愛する原子力潜水艦「アラバマ号」と同じ名前のアラバマ大学フットボール部の愛称「クリムゾンタイド」から取られてるなんて説もありますが、これは正直よく分からないです。
逆なんじゃないの?
アラバマ大学のフットボール部の方がこの映画にちなんでそう呼ばれてるんじゃないの?
世界で最も力のある3人
世界で最も力のある3人は
合衆国大統領、ロシア大統領、そして弾道ミサイルを搭載した合衆国原子力潜水艦の艦長である。
出典:【クリムゾン・タイド】字幕
かっこいいですねえ~。
この3人のうちの一人、原子力潜水艦の艦長が既出のラムジー大佐な訳です。
「世界の平和は我らアメリカにかかっている!」と言わんばかりのトキの声を上げて原子力潜水艦アラバマ号は深海へと出航します。
アメリカ(アラバマ号)を取り巻く今の状況と以後の流れはこんな感じ。
はっはあ~ん。
あっそぉ~。
そーゆーことぉ~。
ラムジー大佐とハンター少佐の対決がカッコいい!!
アメリカ最強の原子力潜水艦の艦長を務めるのがジーン・ハックマン扮するフランク・ラムジー大佐、若くして副艦長に任命されたのがデンゼル・ワシントン扮するロン・ハンター少佐。
【トレーニング デイ】からこっち、デンゼル・ワシントンも随分色んな役をこなすようになっていますが、やっぱり彼の持つルックスと品格と雰囲気は優等生キャラがしっくりきます。
実践経験豊富で自信過剰なラムジー大佐と、エリート街道まっしぐらのハンター少佐の対比が端的で素晴らしい。
2001年/アメリカ/監督:アントワーン・フークア/出演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、スコット・グレン、エヴァ・メンデス、トム・ベレンジャー/第74回アカデミー主演男優賞受賞注※このサイトは映画のネタバレしようが[…]
犬だけが心の拠り所
序盤では、氷雨が激しく窓を打つ海軍基地の一室で、ハンター少佐がアラバマ号の副艦長として適任かどうか面接を行う場面があります。
2人とも時折冗談を交えながら冷静に話してはいますが、お互い出方を伺うピンと張りつめた空気には思わず息を殺してしまいます。
淡々と交わされる2人の会話以外に聞こえるのは窓の外の雨音だけ。
ハンター少佐はさて置いても、ラムジー大佐がとにかくイジワル。
皮肉たっぷりの妙な質問をしてきてはハンター少佐をなめるように品定めして嘲笑じみた笑いを浮かべます。
この緊迫した場面を緩和してくれる唯一の存在はラムジー大佐の愛犬ジャックラッセル・テリアの“ベアー”。
熊には程遠いキューティーなルックスだけど名前は“ベアー”。
軍隊一本で堅物すぎるため妻にも逃げられてしまったラムジー大佐の心の拠り所はこの犬だけ。ラムジー大佐はなんと潜水艦にもベアーを連れて乗り込み、艦内を平気でウロチョロさせてます。
…そりゃベアーかわいいけど、ちょっとこれは酷い。
潜水艦のあちこちでおしっことかしとるんですけど…。
深海の閉鎖された空間でアンモニア臭漂うとか勘弁して。
二人の対比に一役買っているもの
【クリムゾン・タイド】ではラムジー大佐とハンター少佐が対峙する時、自分の肩越しから相手の射るような眼差しを映すカットが数多くみられます。
そして数秒でお互いの視線が切り替わり、切り替わるたびに自分が睨まれているような気がして手に汗握ります。キャメラワークにも着目して観てると楽しいかも。
特にラムジー大佐は迫力ありすぎて、
大佐とは相反する自分の信念を曲げようとはしないハンター少佐に
大佐怒ってるからそれ以上言うなって!
ってビビッてアドバイスしてあげたくなること請け合い。
どちらにも共感できる各々の正義
この映画で対立する二人が取った行動は、軍隊の規約としてはどちらも間違っていないんだそうです。
しかし回避しようのない事件がいくつも重なって各々が各々の正義に従って意見を違えるしかない(例え相手が上官であろうとも)状況に陥ってしまいます。
物語の9割が狭く閉ざされた潜水艦の中の限られた人員だけで静かに、次第に激しく繰り広げられていく【クリムゾン・タイド】。
映画を鑑賞する時って登場人物と自分を置き換えて、自分だったらどうするだろうと考えたりしますよね?
スタンダードに主人公を応援したり、逆に悪役に心奪われてしまったり、どちらにしてもその対象は冒頭からエンディングまで余り変わることはありません。
でもこの【クリムゾン・タイド】では、フラフラするんですよ。まるで自分が優柔不断になった気分になります。
だって先ほど書いた通り、ラムジー大佐もハンター少佐も、どちらも間違ってないんですもん。
ラムジー大佐の独断に頷いてしまうのも、ハンター少佐の理詰めの反撃に納得してしまうのも当然なんです。
だから意見の割れた2人の上官の狭間で、あっちゃこっちゃ支持したり寝返ったりする船員がいるのも至極当然。ただ命令に従っていればいいと思いきや、まさか自分たちまで究極の選択を迫られることになる船員達には同情すらしてしまいますけどね。
それほどジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンのリーダーシップが画面を通じてビシバシ伝わってくる映画です。
鑑賞後には携帯をマイクに見立てて口元にあて、
艦長より無線へ!艦長より無線へ!
と潜水艦乗りごっこをしてしまうことでしょう。
少なくとも私はしました。
「老兵は死なず、ただ去るのみ」
【クリムゾン・タイド】のラストにばっちり当てはまる良い言葉ですねえ。
映画【クリムゾン・タイド】の感想一言
冒頭の移送車の中でヴィゴ・モーテンセン扮するウェップス達がロバート・ミッチャム主演の【眼下の敵】の共演者は誰か?などとクイズにして楽しんでます。
クルト・ユンゲルスかハーディ・クリューガーかという二択ですが、正解はクルト・ユンゲルス。
【深く静かに潜航せよ】の主演はケーリー・グラントではなく、クラーク・ゲーブルとバート・ランカスターが正解です。
勤務中に一生懸命戦争映画のことを語り合ってる姿がかわいいですよね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。