1963年/アメリカ/監督:スタンリー・クレイマー/出演:スペンサー・トレイシー、ミルトン・バール、シド・シーザー、バディ・ハケット、エセル・マーマン、ミッキー・ルーニー、ディック・ショーン、フィル・シルヴァース、テリー・トーマス、ジョナサン・ウィンタース、ウィリアム・デマレスト、ピーター・フォーク、ジェリー・ルイス、バスター・キートン/第36回アカデミー音響編集賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

本日の映画は【おかしなおかしなおかしな世界】です。
一度聞いたら忘れられない珍妙なタイトルですよね。これでも邦題はまだマシ。言うても「おかしな」×3ループでしょ?原題はこうですよ。
空前絶後の“Mad”4ループ。
監督は【手錠のまゝの脱獄】や【ニュールンベルグ裁判】などセンシティブな内容のシリアスドラマを手掛けたスタンリー・クレイマー。
1958年/アメリカ/監督:スタンリー・クレイマー/出演:トニー・カーティス、シドニー・ポワチエ、セオドア・ビケル、ロン・チェイニー・ジュニア、チャールズ・マッグロー/第57回アカデミー脚本・撮影(白黒)賞受賞注※このサイト[…]
1961年/アメリカ/監督:スタンリー・クレイマー/出演:スペンサー・トレイシー、バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、マクシミリアン・シェル、マレーネ・ディートリヒ、ジュディ・ガーランド、モンゴメリー・クリフト、ウィリア[…]

さてはて、ある晩枕もとに笑いの神でも舞い降りたんちゃいますか。
映画【おかしなおかしなおかしな世界】のあらすじザックリ
35万ドルを遺して所有者(?)死亡!
先行車を追い抜き対向車をかわしながら、とある山道を130km/hで疾走する1台の車がありました。「危ない危ない!」と思って観ていると案の定、車は谷底へ真っ逆さま。
近くを走っていた数人のドライバーが車を降りて駆け寄ります。

しかし暴走車を運転していた老人スマイラー(ジミー・デュランテ)はすでに虫の息。彼は息も絶え絶えにこんなことを口にします。

ロジータ・ビーチ州立公園に35万ドル埋まっとる…。トランクに入っとる…。
大きな「W」の下や、見たら分かる。みんなお前らにやる…。
15年も埋まっとるんや…(ガクッ)。
そのままスマイラーは息を引き取ってしまいます。
この言葉を聞いた男は5人。車は4台。そのうち2台には女性の同乗者がいます。

車②荷物を輸送中のトラッカー
引っ越しドライバーのレニー・パイク(ジョナサン・ウィンタース)が乗ってる。これだけトラック。
車③旅行中の夫婦(姑付き)
ほぼ婿養子状態のラッセル・フィンチ(ミルトン・バール)とその妻エメライン・フィンチ(ドロシー・プロヴァイン)、それにエメラインの母マーカス夫人(エセル・マーマン)が乗ってる。
実はスマイラーはカルペッパー警部(スペンサー・トレイシー)が何年も追っているお尋ね者で、スマイラーが盗んだ35万ドルを隠していることも警察は掴んでいました。ただ「どこに隠したのか」が分からない。
スマイラーが死んでしまったことでいよいよ35万ドルの行方が分からなくなってしまったカルペッパー警部は、スマイラーの死に目に居合わせた男達が35万ドルの情報を得たと目 して、彼らを尾行することにします。

かくしてスマイラーの遺言を聞いた8人の「35万ドル争奪レース」が幕を開け、警察はそんな彼らを泳がせつつ密かに追跡を始めるのでした。
そこ!「W」そこやそこ!
要はただロジータ・ビーチ州立公園まで行って「W」を見つけてその下を掘れば35万ドル手に入るよってことなんですが、その情報を聞いた人間が5人(それぞれの連れ合いを含めたら総勢8人)もいるため、分け前を増やすためにはいち早く金を見つけてトンズラするしかありません。
それもスピードを競いつつもなりふり構わずお互いを邪魔し合いますから、乗ってた車を破壊されてアシがなくなってしまうチームもあるんですよね?
そうなると彼らは「第三者」の力を借りざるを得なくなり、道行く人に「車に乗せて!分け前あげるから!」と言って今の切羽詰まった状況を洗いざらい吐いてしまうワケですよ。
そうやって35万ドルを狙うアホの数はどんどん増えて、目的地ロジータ・ビーチ州立公園に着く頃には一体何人に膨れ上がっているんだか(数えるの面倒くさい)。

とは言えここまで来たらもう「W」を見つけた者勝ちですよ。シンプルで分かり易いやん。
どこや「W」は!
スマイラーはすぐ分かるって言うてたけど…。

「W」!!!
あるやんそこ!!
そこほら!
ヤシの木!
「W」になってる!

どけデブ邪魔じゃ!
カルペッパーお前もか
「W」のヤシの木の下を掘ってみると確かに35万ドルが入ったトランクがありました。
さてそれではいよいよ山分けしましょうと言う時、シレっと35万ドル捜索隊に紛れ込んでいたカルペッパー警部が正体を明かします。


俺はカルペッパー警部や。この金は俺が預かる。
事情を聞くから君らは先にタクシーで警察署まで行ってくれたまえ。
スマイラーが盗んだ35万ドルは無傷で見つかり、窃盗未遂犯は一網打尽。
これで一件落着かと思うでしょう?
ねえ、そうだったら良かったのにねえ。
カルペッパー警部は違法な売春宿を廃止したりして、市民のために尽くしてきたすごく良い警察官なんですよ。嫁はんの尻に敷かれてるけどね。娘は嫁き遅れ寸前だけどね。
それなのに市長や警察署長らが冷遇するもんだからさあ、さすがにヘソ曲げちゃってねえ?

警部みずから35万ドル持ってトンズラしちゃうんですよねえ~。
大物俳優、コメディアン、トニー賞女優などがカメオ出演
【おかしなおかしなおかしな世界】はスペンサー・トレイシー以外の主要キャストも(ほぼ)コメディアンならカメオ出演しているのも(ほぼ)コメディアンです。
「カメオ出演」って言うくらいですから一瞬しか映りませんけどせっかくですから認識できた人だけでもご紹介しておきます。
まずは序盤。カルペッパー警部が誤って道路に投げてしまった帽子を車で轢いて喜ぶドライバーは「底抜けシリーズ」のジェリー・ルイス。出演時間約3秒。

不自然な尺と立ち位置で映り込む消防士は三ばか大将。出演時間約2秒。

波止場でカルペッパー警部とちょっとだけ絡むのは“世界三大喜劇王”に数えられるバスター・キートン。出演時間約5秒。

コメディアンじゃないけど、のちの「刑事コロンボ」ピーター・フォークも出てます。タクシー運転手として終盤からフィナーレまで出演。

トニー賞女優まで出てるんですよねこの映画、マーカス夫人を演じたエセル・マーマンね。カメオ出演じゃなくてガッツリメインキャストだけど。

よく通るハスキーボイスでキャンキャン吠えて、スカート姿のまま逆さ吊りを受け入れる彼女に芸人魂を見ました。
映画【おかしなおかしなおかしな世界】の感想一言
当時のコメディアン界隈オールスターキャストの豪華な映画。
後半(カルペッパー警部がトランクを持ち逃げして以降)少し失速するので上映時間161分はさすがに長すぎなような気もしますけど、まるで「よーいドン!」の合図のようなスマイラーの遺言からの疾走感溢れるドタバタ喜劇は爆笑せずにはいられないでしょう。
一番笑うのはマーカス夫人の息子シルヴェスター(ディック・ショーン)とその恋人が、半裸かつ無表情で奇怪なダンスを踊っているシーンで間違いない。
むっちゃくちゃおもろい。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。