1950年/アメリカ/監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ/出演:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、セレステ・ホルム、ヒュー・マーロウ/第23回アカデミー作品・監督・助演男優・脚本・衣裳デザイン・録音賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
日本の芸能界にも枕営業がどうとか芸能事務所の力関係がどうとかって噂は絶えませんよね。
実力だけではどうしようもない部分も少なからずあるんでしょう。私にはまったく縁のない世界ですけども。
本日の映画には「ブロードウェイでののし上がり方」が詳細に記されています。
何はなくとも目指す世界で力を持っている人に取り入るのが最良最短の策のようです。時には嘘も方便、人を裏切り蹴落とし陥れてのし上がった人々の集合体が「芸能界」であるのなら…ホント怖すぎ。
でもそんな芸能界よりも怖いのは、栄えある賞をいくつ獲得したところで心から祝ってくれる親友の1人もいない人生を送ることでしょう。
【イヴの総て】のイヴ・ハリントンのように。
映画【イヴの総て】のネタバレあらすじザックリ
謙虚で控えめな田舎娘イヴ・ハリントン
ブロードウェイの大スター、マーゴ・チャニング(ベティ・デイヴィス)の舞台を毎日観に来ている若い女性。
彼女のことがなんとなく気になっていたマーゴの親友で劇作家ロイド・リチャーズ(ヒュー・マーロウ)の妻カレン(セレステ・ホルム)は、ある晩ついに彼女をマーゴに紹介することにします。
演劇、そしてマーゴの大ファンだという彼女の名はイヴ・ハリントン(アン・バクスター)。
美しいけれど地味な身なりをしていて、消え入りそうな声で話す儚げな女性です。
大女優“ベティ・デイヴィス”
マーゴも毎日劇場に来ているこの変な格好の女性のことは知っていて、「会ってあげてよ~」というカレンの頼みを聞き入れ楽屋にイヴを招き入れます。
私…私…感激です!
いつも観てます!
大ファンなんです!
この感動は一生忘れません!
マーゴを紹介してもらったイヴはしどろもどろ…。続いてマーゴの傍らに座る劇作家のロイドにも涙を流しそうな勢いでこう言います。
先生!
先生の書く劇は最高です!
素晴らしいです!
…ん?
なんか色々と過剰すぎへんかこの女?
謙虚で奥ゆかしいイヴの不幸な境遇を聞いたマーゴは、彼女を付き人として自宅に住まわせそばに置くことにします。
まだまだこの辺りでは私は、「実はイヴがマーゴ達を踏み台にしてブロードウェイでのし上がろうとしてたらおもろいな~」とシャレ半分に思いながら観てました。
まさかホンマにそうやったとは。
アメリカ映画の名セリフに数えられるあのセリフ
よく働きどこまでも控えめな態度を崩さず、みるみるうちにマーゴや舞台関係者の信頼を得ていくイヴ。
しかしある日マーゴは、イヴが自分の承諾も得ずマーゴの恋人で演出家のビル・サンプソン(ゲイリー・メリル)に電話をかけたことに違和感をおぼえます。
ビルはツンデレのマーゴが自分の誕生日にメッセージをくれたことを喜んでいたし、イヴに悪気はなくただ忙しい2人のために良かれと思ってしてくれたことだと分かっていても、マーゴはなんとなく腑に落ちません。
人間関係なんて一度わずかなほつれが気になりだすと疑心暗鬼がどんどん膨らんでいくもので、それからのマーゴときたら、自分の真似ばかりするイヴも、イヴのことを褒めちぎる周囲の人間も、どいつもこいつも猫も杓子も気に入らなくなってしまいます。
誰彼構わず当たり散らす中年大女優マーゴ・チャニングが、まるで演じたベディ・デイヴィスそのもののようでスーパーエクセレント。さすがハリウッドきっての演技派女優、人間臭い役を演らせたら彼女の右に出る者はいませんよ本当に。
そんな折、自分のバースデイパーティの席でイラ立ちMAXのマーゴが吐いたセリフ、
Fasten you seatbelts. It’s going to be a bumpy night.
(今夜は大荒れよ。シートベルトを締めてね)
こちらは「AFIアメリカ映画の名セリフベスト100」の9位にランクインしています。カッコいいですよね。
これがブロードウェイの女優、芸能界
最初にイヴの正体に気付いたのはマーゴですが、それが次第に周囲の人間にもバレていくのは必然。
だってイヴを取り巻く人々にしても百戦錬磨の業界人。権力者に取り入ってのし上がろうとする隣人なんてゴマンといるであろう芸能関係者であるなら尚のこと、のぼせていたのが落ち着いてきて冷静にイヴの人となりをみれば、自ずと知れるものがあるのでしょう。
しかしここまできたら本性がバレたところでイヴはお構いなし。今度は弱みを握っているカレンを脅してロイドの劇の主演を自分に回すように迫ったり、あの手この手で食らいつきます。
最初に劇場で出待ちしていた時のイヴの印象と余りに違う豹変ぶり。
これが女優。
これがブロードウェイ。
芸能界怖いよブルブル。
芸能界のトップに君臨するのは?
しかし24歳の小娘にいいようにされるようでは芸能界もとっくに終わってますよ実際。
総てを見抜いた批評家アディソン・ドゥイット(ジョージ・サンダース)によってイヴの暴走は止められ、イヴはドゥイットのものとなります。
その見返りとしてイヴは演劇界最高の栄誉であるサラ・シドンズ賞を史上最年少で獲得することができるのです。
結局食物連鎖の一番上にはステレオタイプの悪くてエロそうなおっさんが君臨していて本気で怖いんですけども。
芸能界の何から何まで掌握しとるんですよこのおっさん。抜け目なく次の獲物(若い女優)もロックオンしてます。
駆け出し時代のマリリン・モンロー
最後に。
作中でイヴと一緒にオーディションを受けるちょっと天然のカズウェルという女性がいます。
マリリン・モンローに似た女優やなあ……。
はいハズレ。
「似た女優」じゃなくてこの女性は、駆け出しの頃の本物のマリリン・モンローです!
まあ【イヴの総て】の魅力は主演のベティ・デイヴィスの鬼気迫る演技に尽きるのであって、この時点のマリリン・モンローは完全に没個性だし主役を食うほどの雰囲気も皆無ですけど、のちのネームバリューは半端ない女優ですから一応ご紹介しておきます。
数分しか出ないので注視しときましょう!
ププッピドゥ~!
映画【イヴの総て】の感想一言
とにかくベディ・デイヴィスの抜群の演技力と周囲を呑み込む存在感を一度は堪能してほしい!(←めちゃ好き)
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。