1939年/アメリカ/監督:ジョージ・マーシャル/出演:ジェームズ・スチュアート、マレーネ・ディートリヒ、ブライアン・ドンレヴィ、チャールズ・ウィニンガー、ミシャ・オウア、サミュエル・S・ハインズ、アレン・ジェンキンス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

荒々しいイメージの西部劇ジャンルの映画にしては珍しく、登場人物の会話が小粋でオシャレ。
ファッショナブルな会話だけならフランク・キャプラ監督の名画【或る夜の出来事】レベルに匹敵すると言っても過言ではない(言い過ぎたか?)。
1934年/アメリカ/監督:フランク・キャプラ/出演:クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール、ウォルター・コノリー、ロスコー・カーンズ、ジェムソン・トーマス/第7回アカデミー作品・監督・主演男優・主演女優・脚色賞受賞注[…]
「僕の友人がこんなことを言っていた」から始まる“トム(ジェームズ・スチュアート)の友達の話”の下りは、同じジェームズ・スチュアート主演の【ハーヴェイ(1955)】にも通じるものがあります。
1950年/アメリカ/監督:ヘンリー・コスタ―/出演:ジェームズ・ステュアート、ジョセフィン・ハル、ペギー・ダウ、チャールズ・ドレイク、セシル・ケラウェイ、ヴィクトリア・ホーン/第23回アカデミー助演女優賞受賞注※このサイト[…]
実質“酒場の(表の)ボス”と化してる歌手フレンチー(マレーネ・ディートリヒ)の、お水のオネエちゃんならではの酔っ払いのさばき方もお見事。
めちゃくちゃ爽快で笑える映画だけどラスト10分だけやや惜しい。
【砂塵】です。
映画【砂塵】のあらすじザックリ
銃を持たない保安官助手トム・デストリー
ボトルネックというこの町では、酒場のオーナーのケント(ブライアン・ドンレヴィ)が好き放題やってます。
この日の夜は酒場の歌手で自らの愛人でもあるフレンチーとも共謀して、牧場主のクラゲット(トム・ファデン)からイカサマ賭博で土地と牛を巻き上げました。

仕返しをしようとするクラゲットを制止して代わりに話し合いにやって来たのはキーオウ保安官(ジョー・キング)。しかしこのボトルネックでは保安官と言えどもケントに逆らって生きてはいられないのです。
キーオウ保安官をあっさり殺したケントは、仲間である悪徳町長スレード(サミュエル・S・ハインズ)の権限を借りて、飲んだくれでいつも町民からバカにされているウォッシュ・ディムズデイル(チャールズ・ウィニンガー)を新保安官に任命します。

これでますますやりたい放題だとニヤつくケント一味でしたが、意外にもウォッシュは突然使命感に燃え始め、酒を断って保安官の職務を全うすると高らかに宣言するのでした。
…とか言うても老体ひとりきりではケント一味に敵うはずもなし。
ウォッシュは旧友の息子で凄腕ガンマンに成長していると聞き及んだトム・デストリー(ジェームズ・スチュアート)を町に呼び寄せます。

ところがいざ出会ってみると、トムはとても“凄腕”には見えないひょろっとした優男。
しかも「保安官助手として手伝って欲しい」と頼んでいるのに、銃を携帯していません。
これで悪党を相手に秩序を取り戻そうだなんて言うもんだから、ケント一味にも酒場の客にも爆笑されてしまいます。


しかしトムにはトムの信念があったのです。

親父は背後から撃たれました。
僕は銃を信じていません。
例え悪党でも撃たれて死んだらなぜか英雄扱いされてしまう。
でも逮捕されて罪状を明らかにされ檻の中に長い間閉じ込められた悪党というのはみじめなものです。
僕は法と秩序を信じています。

トムの眼差しの奥に確かな正義の光を見たウォッシュは、こわごわトムを保安官助手に任命するのでした。
カッコいいですよね「無抵抗主義」。
いや無抵抗主義とはちょっと違うのか、とにかくトムが信じるのは“法”。
だから件 のイカサマ賭博で奪われたクラゲットの土地権利についても、法的にはどうしようもないのでいったん牧場をケントに引き渡すように進言したりします。しかしそこは天網恢恢疎 にして漏らさず、どこかにあるはずの悪のほころびを調査し始めるんです。
ひょうひょうとして普段は木彫りのナプキンリングを作ったりしてるトムですが、本気出した時の銃の腕前は折り紙付き。人間は撃たないけど作中一度だけいなせなデモンストレーションを披露してくれます。

ちょっとだけ残念なのは、トムがこの信念に背いて最後の最後で銃を手にするところでしょうか。
父親の死で銃を置いたと言うのなら、何があろうと誰が殺されようと死ぬまで銃を持って欲しくなかったなあ。
フレンチーとの小粋なラブストーリー
フレンチーを演じたマレーネ・ディートリヒの魅力も爆発。彼女の特徴であるドスの効いた低い歌声のステージも、ほぼフルコーラスで3曲くらい聴くことができます。

フレンチーのセリフはホントに機知に富んでて女性なら一度は言ってみたいものばかり。でも瞬時にこんなセリフ絶対出て来ない。
だって初対面の長身のトムを見上げてひとこと、

ですよ?
何となくスペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘップバーンが出会った時の有名なやり取り思い出したわ。
忘れ去られたタイトル【砂塵】
タイトル【砂塵】の意味は、「悪党はみんな、正義の人であったトムの父親を恐れて風車を回すほどの風を巻き起こして猛スピードで逃げた」と言う逸話によるものだと思われます。
かなり序盤のウォッシュのこのセリフは、恐らく伏線になっていてクライマックスで本当に「砂塵」が巻き起こって幕を閉じるものだと信じて観ていましたが、このセリフ以降全然「砂塵」らしきものは出てこなかったんで泡食いました。

映画【砂塵】の感想一言
「無抵抗主義」を貫くと言う意味ではグレゴリー・ペック主演の【大いなる西部】の方が徹底しています。
あの映画でペックは最後の最後まで銃を抜くことも手にすることすらもありませんでしたから(肉弾戦はある)。
銃の力ではなくトムの機転で「砂塵」を巻き起こして逃げて行くケント一味が観たかった。
まあ私が「ラストがちょっと残念」と言うのもすべては中盤までが面白すぎるから。
惜しい。
1958年/アメリカ/監督:ウィリアム・ワイラー/出演:グレゴリー・ペック、ジーン・シモンズ、チャールトン・ヘストン、キャロル・ベイカー、バール・アイヴス、チャールズ・ビックフォード/第31回アカデミー助演男優賞受賞注※この[…]
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