1996年/イギリス/監督:ダニー・ボイル/出演:ユアン・マクレガー、ロバート・カーライル、ジョニー・リー・ミラー、ユエン・ブレムナー、ケヴィン・マクギット、ケリー・マクドナルド
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
若い頃はタバコ吸ってました。
妊娠中にスッパリ止めましたけど。
吸ってた時は本当に、それこそ許される環境であれば途切れることなくずっと火のついたタバコをくわえ続けてるほどのニコチン中毒でした。たまたま悪阻 でタバコを受け付けなくなったタイミングであっさり止めることができて助かりましたが、それがなければ例え禁煙外来にお世話になったとて止められていたかどうか怪しいものです。
一説には薬物よりもタバコの方が依存度が高いとも言われていますしね。
でもタバコは断ったからといって幻覚とか見ない。今のところタバコを吸うこと自体は法に触れてもいない。
怖いですよやっぱり。
禁断症状が半端ない違法な“薬物”に手を出すなんて。
なんでわざわざヘロインとかコカインとかやっちゃうの?
「暇だから」?
「何となく」?
カッコいいと思ってんの?
バカなんじゃねーの?
とか思いますよね、【トレインスポッティング】のクソガキどもを観てるとね。
カッコいいんだけどね。
映画【トレインスポッティング】のあらすじザックリ
ヘロイン中毒者の視界なの?
大ブーム巻き起こしたんですよ当時。
繁華街には軒並み【トレインスポッティング】のポスターが貼られまくってたりして。
私はなぜか主演(当時はまだ駆け出し)のユアン・マクレガーの坊主頭に病的なギョロッとした目が気持ち悪くてこのポスター嫌いだったんですけど。
まあまあの中流家庭の一人息子レントン(ユアン・マクレガー)と、その友人たちの日常を描いた青春ドラマ。
2017年には続編【T2 トレインスポッティング】が公開されています。
主人公たちが薬物中毒であるだけに決して共感が得られるものではないはずなのに、この映画はどうしてこれほどヒットしたのでしょうか。
そこにはある種の「優越感」「安心感」のようなものがあるのではないかと考えます。
画面に映し出される連中はクズばかりです。
レントンとシック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)とスパッド(ユエン・ブレムナー)の3人は止める止めると言いつつちっとも薬物を止めることができない意志薄弱なヘロイン中毒患者だし、ベグビー(ロバート・カーライル)はヘロインこそやらないもののアル中で誰彼構わずケンカを売るし、トミー(ケヴィン・マクギット)は悪友に引きずられて行きつくところまで行ってしまうし。
スクリーンの“こっち側”からこんなクズどもの奇妙な生活を覗き見ている私達は、「アホやなあ~コイツら…」と半ば蔑むような気持ちになってくる。
レントンが暴君ベグビーに奴隷のように扱われようが、「こんな奴を“友達”とか言ってるお前が悪いんじゃん」とまるで他人事。
そのベグビーがビール瓶持って暴れたところで、関係ないから安心して観ていられる。
便器に落ちてしまった阿片の座薬を拾うためトイレに“潜る”レントンや、ラリってぶっ倒れたレントンを“吸収する”床など、ヘロイン中毒患者の視点と思われる夢か現実かも分からない不可思議な映像も脳裏に焼き付いて離れない。
でもそれもこれも私達には無関係。
私達より“下層”の特異な世界が広がっているからこそ、【トレインスポッティング】には観客を魅了する引力があったんでしょう。
レントンが“こっち側”へ迫ってくるラスト
そもそもレントン本人が冒頭から「観客」と「自分たち」を完全に別種の人間だと明言してる。
人生に何を望む?
出世・家族・大型テレビ・洗濯機・車・CDプレイヤー・健康・低コレステロール・保険・固定金利の住宅ローン・マイホーム・友達・レジャーウェア・ローンで買う高級なスーツとベスト・単なる暇つぶしの日曜大工・くだらないクイズ番組・ジャンクフード・腐った体をさらすだけのみじめな老後・出来損ないのガキにもうとまれる。
それが「豊かな人生」。
だが俺はご免だ。
出典:【トレインスポッティング】字幕
レントンは「あんたたち(観客)」と同じような「豊かな人生」を全否定していましたよね。
そのレントンは上映時間94分かけて何やら試行錯誤した結果、ラストでようやく“こっち側”に歩み寄ろうとしてきます。
俺もあんたたちみたいな「豊かな人生」送るんだ!
こうなってくると観客も「他人事」とは言ってられません。
眩しい未来に目を輝かせながらスクリーンを抜け出さんばかりに“こっち側”に向って歩いてくるレントンに、私達は手を差し伸べずにはいられないのです。
よっしゃレントン!
よくやった!
よく決心した!
こんな風に上から目線でクズの更生を見守る気分にさせられるから、【トレインスポッティング】には中毒性があるんじゃないですかね。
薬物中毒者が主人公であるだけに(別にうまくない)。
Underworldの「Born Slippy」と言う曲にのせてフェードアウトしていくエンディングの高揚感はその場にじっとしていられないくらいの危険レベル。
走り出してしまいそうになるんですよ。
ちょっと近所走ってきます。
映画【トレインスポッティング】の感想一言
若い頃って刺激の少ない「普通の人生」が退屈に思えたりするものですけど、実際は「普通」ってのが一番難しかったりするんですよねえ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。