1996年/アメリカ/監督:アンソニー・ミンゲラ/出演:レイフ・ファインズ、クリスティン・スコット・トーマス、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、ナヴィーン・アンドリュース、コリン・ファース/第69回アカデミー作品・監督・助演女優・編集・撮影・作曲・衣裳デザイン・録音・美術賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
あなたは「不倫」についてどんなイメージをお持ちでしょうか?
私はそれほど悪いイメージを抱いてはいません。
どちらかと言うと擁護派です。
「これぞ天職!」と思って就職したつもりでもその後違う仕事に魅力を感じてしまうこともあるでしょうし、「絶対この人!」と思って結婚してもその後にもっと魅力的な異性が現れることくらいあるでしょう、そりゃ。(仕事と不倫を一緒にすんなって言われそうですけど)
ただ不倫カップルが幸せになるにはお互いの気持ちが通じ合ってからの周囲への対応が肝要だと思っています。
本作のラズロ・アルマシー(レイフ・ファインズ)とキャサリン・クリフトン(クリスティン・スコット・トーマス)のようにほぼバレてるのにコソコソと逢瀬を重ねパートナーを自殺に追い込むような恋愛は、誰も幸せになれません。
いくら砂漠の太陽のように熱く情熱的に愛し合っていたとて、かつて愛した人の不幸の上に幸せは成り立たないのです。
激しく、そして短く儚い不倫愛を描いた映画、【イングリッシュ・ペイシェント】です。
映画【イングリッシュ・ペイシェント】のあらすじザックリ
「白衣の天使」がサマになってるジュリエット・ビノシュ
第二次世界大戦末期、医療部隊に属する看護婦のハナ(ジュリエット・ビノシュ)は戦地に赴いた恋人の死を知り、さらにそのすぐ後に親友が乗ったジープが地雷を踏んで大破するという不幸に見舞われます。
飛行機の爆風で顔と全身を焼かれた名無しのゴンベ
哀しみに押しつぶされそうになりながらもハナは、全身が焼けただれ元の顔かたちも判別不可能、おまけに炎に包まれた後遺症か自分の名前すら分からない記憶喪失の重病人を長時間ジープに乗せて道なき道を進むのは困難と判断し、付近に見つけた廃修道院に自分と「名無しのゴンベ」を置いて行って欲しいと部隊に願い出ます。
放置され埃をかぶっていたベッドを使えるように綺麗に整え、そこにそっとゴンベを横たえてくれるハナ。
ゴンベが「どうしてこんなに優しくしてくれるんだ」と訊ねると、ハナはにっこり微笑みながらこう答えます。
ジュリエット・ビノシュの透明感というか妖精感というか…素敵ですよね。
【ショコラ】で演じた「ホンマは魔法使いなんちゃうんか」と思わせる女性ヴィアンヌ然り、すべてを暖かく包み込むような不思議な雰囲気がハナというキャラクターに実にピッタリあてはまります。
自分も傷付いた女性であるのに母親のような安心感を醸し出していて、全身の痛みに喘ぐゴンベの心の平穏に一役買ってることが伝わってきます。
ゴンベの記憶が少しずつ蘇る…あー伯爵様でしたか
先へ進んだ医療部隊のハナの友人に様子を見てくるよう頼まれたと言って、デヴィッド・カラバッジョ(ウィレム・デフォー)と名乗る男が訊ねてきます。
実はカラバッジョはカナダの諜報部隊員で、重傷を負う前のゴンベが取った行動によって両手の親指を切り落とされる拷問を受けたことを恨み、ゴンベを殺すために追ってきたのです。
しかしやっと探し当ててみればゴンベは顔も記憶も無くしていて、本当に自分が追う男であるのか確信を得ようと色々と質問をしてきます。
奇しくもその問答によって少しずつゴンベの記憶は甦っていくのです。
狂おしく愛し合っちゃう
ゴンベの正体は砂漠で考古学調査をしていたラズロ・アルマシー伯爵。
その調査に夫婦で加わったキャサリン・クリフトン(クリスティン・スコット・トーマス)にひと目で心奪われ、キャサリンもまた少し個性的ではあるものの知的で不思議な魅力を持つゴンベ(もー最後までゴンベで行きます)に次第に惹かれ、2人は激しく愛し合うようになります。
2人が愛し合うシーンは、他の一般的な映画のベッドシーンと比較しても決して長くはないものの、バストショットとか惜しみなく出してきちゃうし汗とか動きとか凄いしで、なんだかもーエロエロ。
ベッドシーンが不自然な映画って多いですよね?
明らかに行為後なのに女性がバッチリシャツ着てるとか…。
【イングリッシュ・ペイシェント】でキャサリンが行為後ちゃんと素っ裸でベッドに横たわってる姿はリアリティがあってよろしいと思います。賛成。(ついでに後半のハナのベッドシーンでも同様)
コリン・ファースの捨て犬感
愛する妻に裏切られ傷心するキャサリンの夫ジェフリー・クリフトン(コリン・ファース)の悲壮感たるやないです。
結婚記念日に「出張が入ったから今日は帰らないよ」と嘘をついてプレゼントを持って突然家に帰り驚かそうと思っていたのに、そうとは知らない妻は自分が留守と分かるや愛人の家に行き朝まで戻ってこない…。
朝帰りするキャサリンの姿を見つめるジェフリーの顔に浮かんだ落胆の色を見ると、いくら不倫擁護派の私でもこんなに誰かを傷付ける不倫なんて絶対やったらあかんよなあーと素直に思います。
「涙が溢れる」?…いや、「吹き出る」
ジェフリーとゴンベの板挟みになり「もう耐えられない」と一方的に別れを告げたキャサリンを逆恨みすることもあったゴンベ。
しかしフラれてヤケクソになるような器のちっちゃいゴンベに対してキャサリンはサラっとこう言います。
それを聞いた瞬間涙が溢れ出る…いや吹き出すレイフ・ファインズの演技にやられます。
顔を焼かれた今のゴンベの目からはもう涙は出ていませんが、「僕が彼女を愛してしまったから、彼女は死んだ」とすべてを思い出しカラバッジョに懺悔するゴンベの胸中は今のその見た目以上に痛ましいものでしょう。
自分だけがリスクを背負えるならまだしも…。
愛した人を不幸にするほどつらいことなんてないですよね…。
映画【イングリッシュ・ペイシェント】の感想一言
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。