1959年/アメリカ/監督:ハワード・ホークス/出演:ジョン・ウェイン、ディーン・マーティン、アンジー・ディキンソン、ウォルター・ブレナン、リッキー・ネルソン、クロード・エイキンス、ジョン・ラッセル
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

1952年の西部劇【真昼の決闘】へのアンチテーゼと言われる映画ですけども。
1952年/アメリカ/監督:フレッド・ジンネマン/出演:ゲイリー・クーパー、グレース・ケリー、トーマス・ミッチェル、ケティ・フラド、ロイド・ブリッジス/第25回アカデミー主演男優・ドラマコメディ音楽・歌曲・編集賞受賞注※この[…]
本日の映画の監督ハワード・ホークスと主演のジョン・ウェインは、フレッド・ジンネマン監督の【真昼の決闘】でゲイリー・クーパーが演じた「かつて自分が捕らえた悪党に狙われ町の人々に助けを求める保安官」を観て「なんちゅう軟弱な保安官や!」と怒り狂ったらしいです。
そして「本物のプロの保安官の仕事見せたらあ!」とばかりに製作されたのが本日の映画なワケですね。
なるほど町の保安官が悪党を捕えて恨みを買うのも、少人数で悪党どもを相手にしなければならないシチュエーションも同じ。
ただ【真昼の決闘】でクープ(※ゲイリー・クーパーの愛称)が演じた保安官ケーンが町の人々に助けを求めたのに対して、本日の映画の保安官チャンス(ジョン・ウェイン)は民間人から「一緒に戦わせてくれ」と言われてもこれをすべて断ります。
「俺にかかわんな。気持ちだけもらっとく」って言って。

確かにハワード・ホークスとジョン・ウェインが描く保安官は男らしくてプロフェッショナルで死ぬほどかっこいいんですけどね。【真昼の決闘】の記事にたっぷり書きましたけど、悪党の報復にビビる保安官の気持ちだって分かりますよ。どっちの保安官が良いとか悪いとか無いんで、私は本日の映画を【真昼の決闘】へのアンチテーゼとは捉えていません。
音楽で言うたらアンサーソングみたいな感じじゃないの?
【真昼の決闘】の“アンサームービー”(言うたった)、【リオ・ブラボー】です!
映画【リオ・ブラボー】のあらすじザックリ
すっこんでろいド素人ども!これがプロの仕事や!
物語の舞台はテキサスの小さな町リオ・ブラボー。保安官チャンス(ジョン・ウェイン)は殺人事件の犯人ジョー(クロード・エイキンス)を逮捕しますが、こいつが実はこの辺り一帯を牛耳る大地主バーデッド(ジョン・ラッセル)の弟だったんです。
弟のジョーが捕まったことを知ったバーデッドは早速、連邦保安官が町に来られないように駅馬車を襲い、手下に命じて町を見張り、チャンスを脅しにかかります。

町を封鎖され外部との連絡が遮断される中、チャンスは数少ない仲間たちと共に、ジョーの身柄引き渡しを迫るバーデッド一味に立ち向かうのです。
味方はアル中と老いぼれと青二才!でも俺はプロや!
冒頭で「チャンスは助けを拒む」と書きましたが、それは飽くまで「民間人の助けを拒む」ってこと。
チャンスにはちゃんとプロフェッショナルな仲間がいます。
かつては早撃ちのガンマンだったけど今やアルコール依存症で狙いがまったく定まらない元副保安官デュード(ディーン・マーティン)、脚が不自由で口だけ達者な爺さんスタンピー(ウォルター・ブレナン)、銃の腕は確かだけどシラケ世代風の青二才コロラド(リッキー・ネルソン)。
チャンスは彼らのことは“民間人”とは捉えていないので、遠慮なくこき使って共に戦います。

この「精鋭」とは言い難い仲間たちとの人間味あふれるやりとりが【リオ・ブラボー】の魅力のひとつ。とりわけデュードのアル中からの復活劇は感動的で、物語に深みを与えているのはここんとこで間違いありません。
ハワード・ホークス的「イイ女」
そして「イイ女」を創る達人であったと言われるハワード・ホークス監督の「ハワード・ホークス的女性像」を体現する女優のひとり、アンジー・ディキンソンが、プロフェッショナルな保安官チャンスと対等に渡り合う女賭博師“フェザーズ”を演じています。

好きなんですよ私、ハワード・ホークスが撮る「イイ女」。
【ヒズ・ガール・フライデー】のロザリンド・ラッセル然り、【脱出(1944)】のローレン・バコール然り。
1940年/アメリカ/監督:ハワード・ホークス/出演:ケーリー・グラント、ロザリンド・ラッセル、ラルフ・ベラミー、アルマ・クルーガー、ジーン・ロックハート、クレランス・コルブ、アブナー・ビーバーマン注※このサイトは映画のネタ[…]
1944年/アメリカ/監督:ハワード・ホークス/出演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、ウォルター・ブレナン、シェルドン・レナード、ドロレス・モラン、ダン・シーモア注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせ[…]
【リオ・ブラボー】のアンジー・ディキンソンもまた、大男のチャンスに臆することなくハキハキと私見を述べ、時には(男性のように)大股開いて強い酒片手にくだを巻く。

「ハワード・ホークス的女性像」の女優たちって、ただ単に「男っぽい」のとも、現代で言う「ヤン姉」とも違うんですよね。とにかくカッコいいんですよ。こんな女になりたいもんです。
チャンスとフェザーズの恋路は、デュードの「アル中克服劇場」に匹敵する見どころのひとつです。
最終決戦もプロ対プロじゃ!
もちろんクライマックスのバーデッド一味との銃撃戦だって十分見応えがあります。
チャンス、デュード、スタンピー(最後にやっと保安官事務所から出て来る)、コロラドの4人が町はずれの倉庫に立てこもるバーデッド一味を狙い撃ちにするシーンは爽快。かつての自分を取り戻したデュードの早撃ちもいかんなく発揮されます。

ですがそれ以上に、チャンスの恋路やチャンスとスタンピーの絶妙な掛け合い、デュードの復活劇、デュードとコロラドの歌唱シーンなど(ディーン・マーティンとリッキー・ネルソンは歌手でもあります)、人物描写を中心に据えた人間ドラマが楽しい、愉快な映画です。

映画【リオ・ブラボー】の感想一言

そういう意味でも全体に悲壮感が漂う【真昼の決闘】とは好みが分かれるんじゃないでしょうか。
しつこいですが私としてはどちらの西部劇もおすすめしたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。