1960年/アメリカ/監督:ビリー・ワイルダー/出演:ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ、レイ・ウォルストン、ジャック・クルーシェン、ホープ・ホリデイ、ジョーン・ショウリー/第33回アカデミー作品・監督・脚本・美術・編集賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
男って金と権力(地位)に目がないよねえ。
そして金と権力が手に入ると次に欲しくなるのは決まってオンナ。
しかし愛人ができたとしても妻があっては他人の目が気になって彼女と堂々と街を歩けない。
そんな時奴らはどうするんだと思います?
「金と権力を持つ管理職のおっさん」と「権力が欲しい太鼓持ちの平社員」の利害が一致したことから生まれた秘密のルールにまつわるお話、【アパートの鍵貸します】です。
映画【アパートの鍵貸します】のあらすじザックリ
ジャック・レモン「どうぞ僕の部屋を使ってください」
3万人を超える従業員を抱える保険会社の平社員バド(ジャック・レモン)は、4人の課長に代わる代わる自分のアパートを貸しています。
目的は課長達とその不倫相手との逢瀬。
課長達は揃いも揃って、約束の時間を超過しても部屋から出て行かなかったり、真夜中に突然電話をかけてきて「ええ女ひっかけたから今すぐ部屋を開けろ!」と無茶な要求をしてきたり、やりたい放題。それでももともと小心者で調子のいいバドは、事あるごとに出世の話をちらつかされるしで要求を受け入れることしかできません。
ラブホテルのなかったこの時代に独身で一人暮らしのバドのアパートは、不倫を愉しむオッサンたちに人気のデートスポットだったのです。
邦題【アパートの鍵貸します】について
洋画につけられるおかしな邦題について、私は当サイト「天衣無縫に映画をつづる」でたびたび吠えたり吠えなかったりしています。
ところがこの【アパートの鍵貸します】については珍しく、「邦題ブラボー!」って思ってる。
この映画はバドのアパートの“鍵”が課長達とバドの間を行ったり来たりしてるのがおもろいのであって、「アパート」が物語の核になっているにしても、原題の【The Apartment】よりも邦題の【アパートの 鍵 貸します】の方が洒落てるし端的に内容を表していて断然しっくりきますよね。
古い洋画の邦題って、聞きなれてるせいか良いものが多いよね。
憧れのシャーリー・マクレーン
家族もなく自分の部屋すら安らげる場所ではないバドの唯一の楽しみは、同じ会社に勤めるエレベーターガール、フラン・キューブリック(シャーリー・マクレーン)と話すこと(「話す」だけ)。
1階から19階の職場まで、エレベーターの箱の中でおしゃべりを楽しんではそれで満足しています。
キュートなフランを狙っている男性社員はバドだけではありませんでしたが、彼女は浮いた噂もなく健全で、それもバドを虜にする魅力の一つでした。
“鍵”を所望するお客様がもう一人
ある日バドは27階の部長室に呼び出されます。
よっしゃきた!
昇進や!
フランの操るエレベーターを飛び降り超特急で部長室に馳せ参じると、どうやら呼び出された理由は昇進の通達ではなくて、話はおかしな雲行きに…。
部長(フレッド・マクマレイ)は言います。
君と4人の課長達の間で奇妙な「鍵」が行ったり来たりしているらしいが、
ありゃなんだね?
出たよ「鍵」!
社内の風紀を乱していることを怒られると勘違いして、しどろもどろと言い訳を始めるバド。
しかし部長がバドを呼び出した理由は意外なものでした。
その鍵俺にも貸してくれへん?
お前もかい!!
いやちょっと待て待て、冷静に整理しよう。
今までの「顧客」は課長 。
今度の「顧客」は部長 …!
「スピード出世」が手をこまねいて俺を待っとる!
バドは二つ返事で部屋を貸すことを約束します。
そしてこの部長の不倫相手こそがバドの憧れのフランだったことに気付いた時には、すでに事態は収拾不可能になってしまっていたのでした。
このあとに有名な「バドがテニスラケットでパスタを茹でる」場面が出てくるんですけど、余りにも有名すぎるので当サイトでは割愛。これってジャック・レモンのアドリブなんじゃないの?って昔は思ってましたけど、ビリー・ワイルダー監督のアイデアなんですって。
ラケットと言いフランの割れた手鏡と言い、小道具を効果的に使うという点においても天才ですよねビリー・ワイルダーは。
よその地から出直して「人間」になろうよ
地味だけど含蓄があって好きなのは、バドの部屋の隣に住むドレイファス医師(ジャック・クルーシェン)の言葉。
毎日昼夜を問わず家を出入りして女をとっかえひっかえしているのが全てバド1人の悪行だと思っているドレイファス医師は、静かにバドを諭すんです。
「人でなしは廃業して“人間”になりたまえ」って。
こんなこと面と向かって言われたら、分かっていても改めて「うわあ~!俺やっぱり“人でなし”やったかあ~!」ってなりますよ。
そりゃあ公然と(コソコソしてるけども)不倫を愉しみ部下の迷惑も顧みない部課長達が一番悪いんだけど、降格を恐れて上司に言われるがまま「連れ込みラブホテル」を提供していたバドだって同罪だよね。
そんなドレイファス医師の言葉もあって、バドは部長に二度と部屋は貸さないと宣言した上でせっかく昇進した会社を退職。数々の逢瀬の場となったアパートを引き払って新生活を始めようとする訳ですよ。
密かに結構ファインプレーなんやでこの黒縁メガネのオッサン。
前半はどっちつかずで意志の弱い社畜のバドを観ながらケラケラ笑っていられるんだけど、後半になるにつれて余りにも健気でツイてなさすぎるバドの悲哀がシャレになれないレベルに達してきて、ついには涙がこぼれてしまいます。
数年に1度は観直したいヘビロテ映画で間違いない。
映画【アパートの鍵貸します】の感想一言
アホの上司にへつらわずとも、数字に強くて人柄も良くて、課長達のデートの予定の調整をする手際の良さなんかを見ても(これホントにすごい!)絶対仕事ができない人ではないんだから、自然体の自分で勝負してもすぐに出世できるよ、バド。
ファイっ !
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。