1968年/アメリカ/監督:ジョージ・A・ロメロ/出演:デュアン・ジョーンズ、ジュディス・オーディア、カール・ハードマン、マリリン・イーストマン、キース・ウェイン、ジュディス・リドリー、カイラ・ショーン、ビル・ハインツマン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
私が最初に観たゾンビ映画ですか?
【バイオハザード】ちゃいますかね、ベタに。
あれはね、まあね、ミーハーと言いますか、怖いのが全然ダメな私でも余裕ぶっこいて観られますよ。言うても原作はゲームですから。「やっつけろオラー!」みたいなね。「かかってこいやー」言うて。「ぶっころしたらー」言うて。もうええって?あ、そう。
最近は変なゾンビもいるでしょ?めっちゃ走るの速い奴とか。急所ない奴とか。人格ある奴とか。ああいうのも割と平気で観られます。
私が最も恐れるのはスタンダードなゾンビ。
「うおー」とか「あうー」とか呻 いてのそのそ歩く、あれ。
あれがいっぱい出てくるよ。
ゾンビ映画の歴史を作った名画、【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】です。
映画【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】のあらすじザックリ
ゾンビ映画の礎【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】
“元祖ゾンビ映画”と称されることも多い映画なんですけど、本当の元祖は1932年公開の【恐怖城】(英題:【White Zombie】)。
“○○城”って銘打たれた映画のパッケージにベラ・ルゴシを映り込ませたら“ドラキュラ城”としか読めない不思議。
1931年/アメリカ/監督:トッド・ブラウニング/出演:ベラ・ルゴシ、ヘレン・チャンドラー、デヴィッド・マナーズ、ドワイト・フライ、エドワード・ヴァン・スローン注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと[…]
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」シリーズ
類似作は無茶苦茶ありますけど直系親族は以下の二作。
- 【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記】(リメイク版)
- 【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 最終版】(30周年アニバーサリー版)
近年までワッショイワッショイと製作され続けてるその他もろもろのゾンビ映画に関してはワケ分かんないんでここでは触れないでおきます。
ゾンビ映画の第一人者ジョージ・A・ロメロ監督
監督はジョージ・A・ロメロです。
え?上の画像の人?この人は違うよ、ジョージ・A・ロメロじゃなくてシーザー・ロメロですやん。TVドラマ版「バットマン」でジョーカー演じた人。
なんでシーザー・ロメロの画像貼ったんやって?
好きだから。
1989年/アメリカ/監督:ティム・バートン/出演:マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー、ロバート・ウール、ジャック・パランス、マイケル・ガフ/第62回アカデミー美術賞受賞注※このサイトは映画のネタバ[…]
さてこのジョージ・A・ロメロ監督(くれぐれも言っておきますけど、上の画像の人は違いますからね)、小学生の頃からすでに8ミリで映画を作ってたという映画オタクで、撮影のために屋根の上から人形を落として逮捕されたこともあるという強者 。
そんな彼の初監督作が【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】。
今でこそ伝説的なゾンビ映画として語られるようになったものの、公開当時【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】は興行的にふるわず、1978年の【ゾンビ(1978)】の世界的大ヒットを迎えるまで実に約10年、注目を浴びることはありませんでした。この間ジョージ・A・ロメロもさぞ辛酸を舐めたことでしょう。
しかし【ゾンビ(1978)】の大ヒットによりジョージ・A・ロメロの名は世界中に轟き、【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】の評価も見直され、その後も一途にゾンビ映画を撮り続けた彼は“ゾンビ映画の第一人者”と呼ばれるまでになったのです。
今でも熱狂的ファンを抱える、まあ言うなれば“ゾンビのおっちゃん”。
そんな人が作ったゾンビ映画です。
“ゾンビ”と“リビングデッド”の違いって?
ところでさっきからゾンビゾンビって書いてる私に対してこんな風に思った人はいませんか?
そういえばゾンビとリビングデッドって、何が違うん?
こう思った人、はい手あげる。
下ろしてよし。
特に疑問に思わなかった人はこの項は飛ばして次行っちゃって。
“ゾンビ ”ってのはブードゥー教にある存在で、施術によって蘇った人間とか超自然的な怪物をさすんですって。
冒頭で述べた【恐怖城】の“ホワイト・ゾンビ”が正にこれ。正統派ゾンビ。
この正統派ゾンビに【魔人ドラキュラ】が大好きだったジョージ・A・ロメロが「咬まれた者もゾンビ化する」という吸血鬼の要素を加えてアレンジしたのが“リビングデッド (生ける屍)”。
なんと現在では“ゾンビ”と同義に捉えられるほど有名になった“リビングデッド”という言葉(生物?)に市民権を与えたのは誰あろうジョージ・A・ロメロその人だったというわけですね。
リビングデッドの生態・弱点を定義した伝説的映画
映画本編のお話をちょっとだけします(ちょっとだけかい)。
ある夕暮れ時。兄のジョニー(ラッセル・ストライナー)と父親の墓参りにやってきたバーバラ(ジュディス・オーディア)は、墓の向こう側からのそのそと歩いてきたスーツ姿の男に突如襲われます。
すんごい力で抑えつけられ悲鳴をあげるバーバラを助けようとしたジョニーは男ともみ合った末、地面に頭を打ち付けて昇天。隙を見て逃げ出したバーバラは、のっぱらにポツンと建つ民家へ逃げ込みます。
この民家こそ【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】のメインステージ。
物語はほぼ全編この民家、もしくはこの民家の周辺で繰り広げられます。
ゾンビに追い詰められ籠城する人々
バーバラが逃げ込んでからしばらくすると、すっかり暮れた夜の闇の中、黒人の若者がバーバラと同じように何かに追われるようにこの民家へ飛び込んできます。
若者の名はベン(デュアン・ジョーンズ)。この物語の主人公です。
ベンは車に燃料を入れるためガソリンスタンドへ立ち寄ろうとしたところ、何人ものゾンビに追いかけられひっくり返されるトラックを目撃。右も左も分からないままとにかく車を走らせてこの民家へ辿り着いたと言います。
兄ジョニーの生死も分からずパニック状態のバーバラと違い、ベンはこんな状況にあっても至極冷静。
とにかく使える木材を探すんや。
家中の窓とドアを内側からふさいで奴らが入られへんようにする。
こうして民家の周囲をリビングデッドに取り囲まれ身動きの取れない2人の恐怖の一夜が幕を開けます。
「もしかしたらすでにこの世に生きているのはこの2人だけなのかも知れない」くらいの絶望感を味わっているところへ、民家の地下室にいた先客たちが地上階へ上がってきて少しだけ絶望を砕いてくれます。
湖へ泳ぎに行こうとしていたトム(キース・ウェイン)とジュディ(ジュディス・リドリー)、それに怪我をして意識を失った娘カレン(カイラ・ショーン)を連れたハリー(カール・ハードマン)とヘレン(マリリン・イーストマン)のクーパー夫妻。
彼らもベンやバーバラと同じく正体不明のゾンビに遭遇し、この民家の地下室に隠れていたのでした。
籠城を決め込むほかに道はなかった彼らが外の様子を知れる唯一の手段は、民家に置かれていたラジオから流れるニュース音声のみ。ベンがテレビを見つけた中盤からは、これに映像も加わります。
主にこのニュースで語られる、以下のようなゾンビの特徴を定義付けたのも【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】。
- 退治するには頭を撃つか頭蓋骨を破壊すること
- 動かなくなったゾンビはすぐに焼くこと
- ゾンビに噛まれた人もゾンビ化する
現代では「ゾンビに噛まれたらその人もゾンビになる」って当たり前のように思いますけど、よく考えたらそんなの変ですよね。
吸血鬼じゃん。
【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】で初めてゾンビを認識した当時の観客はさぞかし驚いたことでしょう。
「噛まれた人もゾンビ化する」て。
吸血鬼じゃん。
だよね。
リビングデッドよりも怖いもの
冒頭にも書いたとおり、怖がりな私はあーうー呻 きながらのそのそ歩くゾンビが怖いんですけどね?【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】を観ていると、ゾンビより何より怖いのは結局生きた人間だよねって思わざるを得ませんわ。
作中、リビングデッド討伐のために警察や軍隊でもって警備隊が組織されるんですけど、その人たちがね、実にあっけらかんとしてるんです。ゾンビに怯えて身動きの取れないベン達との温度差がすごい。
警備隊を指揮してる警部なんかテレビに向かって「俺19人も殺したで」って自慢げに語ってる。
「5~6人のゾンビに囲まれても大丈夫なのでしょうか?」というキャスターの質問に対しては、「銃で頭ぶち抜いたったらええねん。銃がないんやったら松明 で殴って焼いたらええわ。簡単やで」と、まるで友達とサバゲーにでも来てるくらいのノリで答えちゃう。
しっかり狙ってしとめろよー
いやこれ怖くない?
ゾンビって言っても見た目は人間なんだしさ。生きた人間を襲って人肉喰らうけど元は人間なんだしさ。なんの躊躇もなくバッサバッサ“狩る”ってのも怖いでしょ?
どことなく空 恐ろしいこの軽いノリが、ラストの悲劇を生むわけですよ。
映画【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)】の感想一言
ホラー映画に「ゾンビ映画」という新たなジャンルを生み出した偉大な功績は言わずもがな、60年代のハリウッドで黒人俳優を主人公に据 えたこと然 り、観客の予想を覆 す衝撃のラスト然 り、多勢と無勢の力関係然 り、終始考えさせられる内容で、「ゾンビって怖いよね」では済まない名画です。
「ゾンビ映画月間」でも決め込んで1ヶ月くらい新旧ゾンビ映画にどっぷり浸かるのもいいかも。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。