1976年/アメリカ/監督:アーサー・ペン/出演:マーロン・ブランド、ジャック・ニコルソン、ランディ・クエイド、キャスリーン・ロイド、ハリー・ディーン・スタントン、フレデリック・フォレスト、ジョン・マクリアム
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
私が熱烈に想いを寄せる怪優ジャック・ニコルソン。
彼は若い頃から、親友のブルース・ダーン(ローラ・ダーンのおとん)と、自身のアイドルだったマーロン・ブランドの2人をライバルと見做 してきたと言います。
ブルース・ダーンとはこの時点ですでに何度か競演したことがあるジャック・ニコルソンは、本日の映画【ミズーリ・ブレイク】でついに、もう1人のライバルとする憧れのマーロン・ブランドと最初で最後の競演を果たすことになったのです。
ハリウッド俳優の頂上に君臨するマーロン・ブランドと、【カッコーの巣の上で】でオスカーを獲得したばかりで飛ぶ鳥を落とす勢いだったジャック・ニコルソンの共演に加えて、監督には【俺たちに明日はない】のアーサー・ペンが迎えられ、大ヒットすると目 されてた映画なんですけどね。
1975年/アメリカ/原作:ケン・キージー/監督:ミロス・フォアマン/出演:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、クリストファー・ロイド、ダニー・デヴィート、ウィル・サンプソン、ウィリアム・レッドフィールド、ブラッド・ドゥー[…]
1967年/アメリカ/監督:アーサー・ペン/出演:ウォーレン・ベイティ、フェイ・ダナウェイ、ジーン・ハックマン、マイケル・J・ポラード、エステル・パーソンズ、デンヴァー・パイル、ジーン・ワイルダー/第40回アカデミー助演女優・撮影賞[…]
すんごい微妙な評価を受けて映画史の闇に葬られちゃってるんですよね。
映画【ミズーリ・ブレイク】のあらすじザックリ
マーロン・ブランドとジャック・ニコルソン共演作
「好きな俳優は誰?」と聞かれると、ダントツの1位にジャック・ニコルソン、続く2位にマーロン・ブランドを挙げる私からしてみれば、好きな俳優ツートップの2人が共演しているだなんてこれほど面白い映画もないと言いたいところなんですが、正直そういう訳にもいきません。
なぜって、私自身にも【ミズーリ・ブレイク】が面白いのか面白くないのかよく分からないんですもん。
不思議な映画なんですホントに。
ジャック・ニコルソンは馬泥棒や列車強盗に精を出すチンケな無法者6人組のリーダー格トム・ローガン役。
マーロン・ブランドは馬泥棒を一掃するため大牧場主ブラックストン(ジョン・マクリアム)に雇われた一匹狼の“整理屋(=殺し屋)”リー・クレイトン役。
トム率いる馬泥棒一味と彼らを付け狙うリーの攻防を、ブラックストンの一人娘ジェーン(キャスリーン・ロイド)とトムの淡い恋も交えつつ、ほんのりコミカルに描いた西部劇です。
馬泥棒一味が「大悪党」じゃなくて“ホントは良い奴”を寄せ集めた「とんまな小悪党」ってところも愉快。列車強盗を終えて華麗に立ち去ろうと思ったら列車が停車したのが渓谷で、手際の悪さに被害者である郵便係から心配されてみたりね。
それでなくても私は主演の2人が好きで好きで仕方がないので、鑑賞中はとにかく楽しくて幸せで至福の時を過ごすことができるのですが、問題は観終わったあとですね。
こんな感じで、観ている間はただならぬオーラを放つ2人の名優に心を奪われっぱなしで、大満足のままDVDプレイヤーの電源を切り、しばらくしてからふと思うんです。
【ミズーリ・ブレイク】の3つの問題点
はい、分かっています。
【ミズーリ・ブレイク】に限らず、どんな映画でも「主演俳優が○○じゃなかったら…」なんて考えるのはナンセンスですよ。例え同じ脚本であったとしても監督や俳優が変わってしまえばそれはもう別の作品になってしまう訳で、「同じ映画」として比較することなんてできないでしょう。
そうじゃなくて、【ミズーリ・ブレイク】の魅力って、ブランドとジャックの(特にブランド)演技力とスター性が大部分を占めていると思うから、鑑賞後の感想として「やっぱりブランドのセリフ回しや表情って段違い!」とか「ジャックから溢れるどっちつかずの小物感が最高!」とか、彼ら2人に関することしか出て来ないんです。
だから例えば「映画そのものとしてはどうだったの?」って聞かれてしまうと、ちょっと返答に困ってしまう訳ですよ。
ブランドとジャックの魅力を除いて面白いところ…?
はて?
ヒロインが美しくない
逆に「面白くない(残念な)」箇所であればスラスラ出てくるんですけどね。
言っていい?
言うよ勝手に。
まずはトムと愛し合うことになる大牧場主の一人娘ジェーンが美しくない。
酷いこと言うなとか言わないでください。これはホントに困るんですよ。【真昼の決闘】のグレース・ケリーとは言わないけれど、やっぱり西部劇のヒロインは美しくないとダメでしょ。
1952年/アメリカ/監督:フレッド・ジンネマン/出演:ゲイリー・クーパー、グレース・ケリー、トーマス・ミッチェル、ケティ・フラド、ロイド・ブリッジス/第25回アカデミー主演男優・ドラマコメディ音楽・歌曲・編集賞受賞注※この[…]
ジャックはヒロインにジェーン・フォンダを推してたけど叶わなかったみたいですね。
それにしてももうちょっとイケてる女優はいなかったんかいな。ブランドがギャラ食い過ぎて折り合いが付かなかったのかな。
対決の結末が残務処理
続いて残念なのはトムとリーの抗争の結末。
「“馬泥棒一味” VS 整理屋リー」という側面では、まず1人が殺され、気が付けば次の1人が、続いてまた1人…と、じわりじわりと文字通り“整理”されて行く過程に胸踊らされただけに、首領格のトムとリーの最終決戦の結末には拍子抜けます。
一応ここが【ミズーリ・ブレイク】のクライマックスなのかも知れないので大っぴらにネタバレするのは避けておきます。
- それでもこの2人の決戦の結末が知りたい人は、自己責任でここを開いてご覧ください。
- お互いネチネチと意味ありげに牽制し続けてきたトムとリーの戦いは、トムが無防備に野営しているリーの寝首をかくという禁じ手をもってあっさり終わりを迎えるんです。
信じられます?
西部劇の主人公が、因縁の相手の寝てる時に喉かっ切って決着つけるんですよ?
結局そんな卑怯な手を使うんやったらリーの入浴中に押し入った時殺 っといたら良かったやん!※この襲撃もかなり卑怯。
撮影中バッタを追いかけてたマーロン・ブランド
そして何と言っても【ミズーリ・ブレイク】を中途半端な西部劇に仕上げてしまった最大の要因は、主演のマーロン・ブランドその人にあるような気がします。
ご覧になった方は分かると思うんですけど、【ミズーリ・ブレイク】はマーロン・ブランドの独壇場です。
さしものジャックも好き勝手に演 ってるブランドが手に負えない感じがアリアリと見て取れます。
ある時はトムとジェーンが野原でイチャついているのを密かに覗き見ている父親のブラックストンを双眼鏡で観察して爆笑。
ある時は罠(?)にかかったトムの一味のトッド(ランディ・クエイド)と2人で野営中、ふと見つけた虫を、
隣で寝ているトッドの口の中へポイ。
こんな人面白すぎるでしょ?
これ何?アドリブ?
ちなみに双眼鏡で雇い主の私生活を覗いて爆笑するのも標的の口にバッタを入れるのも、前後のストーリーには一切関わりがございません。いや双眼鏡で覗く場面は要るかも、でも別に爆笑する必要はないんですって。
恐らくこれほど強烈なキャラクターが加わる予定ではなかったはずなんですよ【ミズーリ・ブレイク】には。実際原作のキャラクターとは全然別人格になってしまっているみたいですし。
この“リー・クレイトン”と云うマーロン・ブランドが創り出したオリジナルキャラクター によって、【ミズーリ・ブレイク】は謎の新感覚西部劇に変貌してしまったんだと思うんですけど、どうでしょう。
ブランドときたら撮影中もかなりゴーイングマイウェイだったと見えて、少しでも体が空こうものなら馬を駆り現地の珍しいバッタを追いかけ回していたんですって。THE・自由。
映画【ミズーリ・ブレイク】の感想一言
無法者仲間を演じたジャックの親友ハリー・ディーン・スタントンや、デニス・クエイドの兄ランディ・クエイドも並々ならぬ存在感を放っているのに、ブランドの前ではどうしても霞んでしまう。
あのジャック・ニコルソンでさえも。
不毛だって分かってるんだけど、やっぱり観るたび「マーロン・ブランドが出演していなかったらどんな映画になってたのかなあ?」って考えちゃうんですよねえ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。