1946年/アメリカ/監督:テイ・ガーネット/出演:ジョン・ガーフィールド、ラナ・ターナー、セシル・ケラウェイ、ヒューム・クローニン、レオン・エイムズ、オードリー・トッター、アラン・リード、ジェフ・ヨーク
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ジェームズ・M・ケインのサスペンス小説「郵便配達は二度ベルを鳴らす」が、ハリウッドで初めて映像化された作品。
描かれるのは夫が経営する食堂兼ガソリンスタンドで働く妻コーラと、その食堂に流れ着いた根無し草の青年フランクとの不倫愛。そして邪魔な夫を亡き者にするため2人で謀 った計画殺人。
少しキツめの美人顔に豊満ボディのラナ・ターナーが夫を裏切り愛欲に溺れる人妻コーラってのは納得だけど、洗いたての白いシャツがよく似合う清潔感あふれるジョン・ガーフィールドが放浪癖のある流れ者フランクってのはしっくりこない。
なんでだろう、私が初めてジョン・ガーフィールドを観たのが【紳士協定】だったからかな(主人公を諭す良識あるユダヤ人の役)。
乱暴な立ち振る舞いをしても“良い人っぽさ”が拭えないんですよね。
1947年/アメリカ/監督:エリア・カザン/出演:グレゴリー・ペック、ドロシー・マクガイア、ジョン・ガーフィールド、アン・リヴィア/第20回アカデミー作品・監督・助演女優賞受賞注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気[…]
その点ハリウッドでの二度目の映像化である1981年版のフランクを演じたジャック・ニコルソンや、イタリアで製作された1943年版のジーノ(小説のフランクに当たる人物)を演じたマッシモ・ジロッティなんかは見た目からして小汚い上に暴力的な色気がプンプンしてましたけども。
1943年/イタリア/監督:ルキノ・ヴィスコンティ/出演:マッシモ・ジロッティ、クララ・カラマイ、ファン・デ・ランダ、ディーア・クリスティアーニ、エリオ・マルクッツォ、ヴィットリオ・ドゥーゼ注※このサイトは映画のネタバレしよ[…]
1981年/アメリカ/監督:ボブ・ラフェルソン/出演:ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング、ジョン・コリコス、マイケル・ラーナー、ジョン・P・ライアン、アンジェリカ・ヒューストン、ウィリアム・トレイラー、クリストファー・ロイド[…]
とりあえず無精ひげはマストやでジョン。あなたちょっと清潔すぎるわ。
映画【郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946)】のあらすじザックリ
ヘイズ・コードのせい?“雰囲気エロ映画”
元来「郵便配達は二度ベルを鳴らす」という物語は、夫に隠れて若い男の肉体を欲しがる妻と、人妻に本気でイカれてしまった頑健な流れ者の、エロエロ情事が売りのひとつであるはずなんですよ。
ところが【郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946)】には直接的なエロ描写がございません。
まあラナ・ターナーの肉体がすでにエロいっちゃあエロいんですけど、当時の水着からして下の画像みたいな感じですから、今と比べると全然刺激的ではありませんわね。

でもこれは仕方ないのかなと。
1946年当時のアメリカ映画界はヘイズ・コードでがっちがちだったはずですから。
参考 ヘイズ・コード(映画製作倫理規定、プロダクション・コード)=1934年から1968年まで導入されていたアメリカ合衆国の映画における検閲制度。「キスは3秒以内」など厳しい制約があった。
逆に本当にキスシーンは3秒以内なのか検証しながら観たりしたら面白いかも。

ニックが可哀想すぎて泣ける
1946年版はエロの魔力が弱めなのでコーラとフランクの計画殺人の方に触れるんですけど、これはこれで同名映画3作の中で一番むごい。
なぜなら2人が殺害しようとするコーラの夫ニック(セシル・ケラウェイ)は、割と良い人なんですよ。1946年版はね。
コーラよりかなり年上だし太ってるけど、地に足つかない風来坊のフランクを自分の店で雇ってあげたりね?寝たきりの姉の介護のために同居しようとしたりね?(介護自体はコーラにさせようとしてるんだけど)
そんなニックをあなた、風呂でご機嫌に鼻歌うたってる時に頭カチ割って殺そうとするなんて止めておくんなさいな。
そんでコーラ。君に告ぐ。

仮にこの殺害がうまくいったとしても、フランクは止めとけって。
一緒になっても幸せなのはほんの半年、長くて1年ぐらいなのは目に見えてる。こういう放浪癖のある責任感のない男と一緒になるのはホンマに止めた方がいい。あとで泣くのはあんたやで。
しっかり妻のために多額の保険金をかけてくれてるニックにしときなはれや。
タイトル「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の意味は?
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」というタイトルのこの映画には実は、郵便配達員のお兄さんは一人たりとも出てきません。
このタイトルの意味するところは、死刑の執行を待つフランクのセリフから推察するしかないのです。

これはあの感じと同じや…。
大事な郵便を待って、戸口をうろついて聞き耳たてて、でも心配せんでもベルは二回鳴るんや。
コーラにも、俺にも二回鳴ったやろ?
うう~んこのセリフだけ抜いてもよく分かりませんよね。
要するに「大事なことには二度目がある」って言いたいんでしょう。

【郵便配達は二度ベルを鳴らす】は「二度」起こる事件が鍵になっています。
コーラとフランクがニックを殺そうとするのも二度なら、フランクが法廷に立つのも二度。コーラが店のレジスターの中に手紙を置いて家を出ようとするのも二度。
そしてこの「二度」には、次のような相反する2つの意味があるんじゃないかと思うんですけど、どうでしょう。
ここで急に「神」が出てくるのは、フランクが死刑執行前で神父と会話してるから。
死の直前に神の存在と因果応報を悟るだなんて、最後の最後で取ってつけたように教訓じみたことをぶっ込んでくるんで泡食います。
映画【郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946)】の感想一言
そういえばフランクが地方検事のサケット氏(レオン・エイムズ)と会うのも二度、コーラとフランクが有能弁護士キーツ(ヒューム・クローニン)の助手ケネディ(アラン・リード)と会うのも二度ですねえ。
「二度」の事象は、真剣に数えながら観てみればもっとあるのかも。
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