2010年/アメリカ/監督:ダーレン・アロノフスキー/出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー/第83回アカデミー主演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
この映画を観て疑問に思うのは、「主人公ニナ(ナタリー・ポートマン)は本当にバレエが好きだったのか」ってこと。
娘のニナに行き過ぎた愛情を注ぐ元バレリーナの母親に言われるがまま、他の選択肢もないままに、ただ母親の喜ぶ顔が見たい一心で、仕方なくやってきただけなのではないでしょうか。
だって弱すぎて、余りに不向き。
いつもいつもつらそう。
砂になって崩れ落ちるか光になって消え失せてしまいそうな儚さを持つ主人公ニナを、ナタリー・ポートマンがガッリガリに痩せて(本当にガッリガリ)見事に演じたサイコスリラー、【ブラック・スワン】です。
映画【ブラック・スワン】のあらすじザックリ
スリラーとエロとサイコロジーの融合
一流バレエ団に所属するニナ・セイヤーズ(ナタリー・ポートマン)が、「白鳥の湖」の主役に抜擢されプレッシャーに押しつぶされていく様を丁寧に描いた良作。
ニナが同時に演じなければならない「白鳥」と「黒鳥」の二役とは、言うてみれば由緒正しい王族のお姫様とカラダを使って男を漁る肉食系ビッチ。美しく真面目で才能溢れるニナにとって「白鳥」の演技は素でいけるけど、「黒鳥」の情欲的な妖しさを表現することは想像以上に難しいものでした。
エロがちょっと長すぎやしませんか?
色気に欠けるニナに、振付師のトマ・ルロワ(ヴァンサン・カッセル)は無茶な注文つけてきます。
もっと自分を解き放て!
今日は家に帰って自分で「触る」んだ、いいか?
おお、
なんかやっすいAVみたいな匂いがしてきたけどそこはあれやな、私が下品やからそう感じるだけか?もっと芸術目線で観なあかん?
うん、ニナがトマに言われた通り素直に自慰行為にふける姿は美しいよ?
うんうん、薬でぶっ飛んでライバルのリリー(ミラ・クニス)とセックスするシーンも官能的よ?
いやしかし芸術目線にしたって、ちょっとエロ描写長すぎ。
【ブラック・スワン】公開当時、「ああ~、あのレズのエロ映画な」って言うてたやついっぱいおったもん。まあ芸術なんて紙一重ではあるんだろうけど。かの有名な「ダビデ像」だって「ヴィーナスの誕生」だって、「下ネタ」として受け取るやつは一定数いる訳で。
それにしてもここら辺のエロ描写はもうちょいあっさりと短くても差し支えなかったような気はします。ニナの葛藤を体現するためであったとしてもよ。
「バレエしなくてもいいんだよ」
元バレリーナで現在はステージ毒ママと化しているオカン(バーバラ・ハーシー)は、ニナが反抗的な態度を取ると露骨に機嫌が悪くなったり、ニナを身籠ったことで自分がバレエを辞めざるを得なかったことを恩着せがましく口にしたりします。
「私のせいにしないでよ」と言いたくても言えないニナ。
一生懸命練習もするし、バレエのことばかり考えてるし、主役に抜擢された時はホントに嬉しそうに涙を流すんですけど、私にはどうしてもニナが、好きで(自分の意志で)バレエを続けているとは思えません。
今となっては遅すぎるでしょうが、幼少期に「習い事何がしたい?将来何になりたい?」と選ばせてあげていても、ニナはバレリーナを選んだのかな?
でも幼ければ幼いほど母親の喜ぶ顔って嬉しいものだから(しかもニナは私生児)、オカンの期待に応えるためにもやっぱりバレリーナを選んでいたのかも。
「このオカンの娘」として産まれた時点で、ニナがバレリーナになることは確定してたのかも知れませんね。
ステージに黒鳥が舞い降りてくるというホラー
病むほどにやつれるほどに、悩みに悩んで、ついに黒鳥の演技も自分のものにしたニナ。
公演初日の黒鳥のステージは完璧。
くるくると華麗に舞う黒鳥の背後に響き渡る不気味な羽音には、背筋がぞわっとすること間違いなし。
「黒鳥」に憑依されたかのような圧巻の演技に割れんばかりのスタンディングオベーションは鳴りやみません。
トマもリリーも、その他の共演者たちも、幕が降りた後ニナの元へ駆け寄ってきます。
のん気に。
ニナの異変にいち早く気付いていたのは結局、過保護で毒親認定のオカンだけ。主役が決まってからどんどん様子がおかしくなっていくニナを見て、「あなたは病気なのよ!」と的を射た指摘をしています。
さらには公演初日に家を出るニナに向って
と断言。
この時点でオカンにはすでに、ニナは「白鳥の湖」の主役の器ではないこと、そしてすでに溺愛する娘はもう“壊れて”しまっていることが分かっていたようです。
さっきトマやリリーが「のん気に駆け寄ってきた」って書きましたけど、ニナの渾身のステージを涙ながらに客席から観ているオカンだけは、このニナの末路を理解してたんですね。
こんな人 主役にしたらあかんでしょ
オカンに完璧な演技を見せることができ、「黒鳥」を演じることのプレッシャーからも解放されたニナは、恍惚の表情で舞台セットから飛び降りる…しかし彼女の体は錯乱した自らの凶刃に貫かれていた…って美しいラストではありますけども、てかこれってそもそもトマの人選ミス。
まるで繊細で無垢な「白鳥」そのもののニナは、主役を張るには余りにも真面目過ぎ、弱すぎます。普通に考えたなら、技術や才能だけでなくプレッシャーに耐えうる人材を選ばなかった劇団側のミス。
でもトマもそれは承知だったはず。
最初はちゃんと「ニナには黒鳥は演じられない」として、別の子を主役に推す予定だったのに、色仕掛けで主役を獲ろうとしたニナとキスして正常な判断力を失ったんですよね。
あれ?
ニナ、意外と最初から「黒鳥」の素質あるやん。
映画【ブラック・スワン】の感想一言
どうやらこのニナは、統合失調症である可能性が高いようですね。
怖いですねえ~。
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