1999年/アメリカ/監督:サム・メンデス/出演:ケヴィン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、ウェス・ベントリー、ミーナ・スヴァーリ/第72回アカデミー作品・監督・主演男優・脚本・撮影賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
バカでかい家に住み、思春期の子供がいて、収入を得られる定職を持ち、一見すると幸せ満開にしか見えない核家族。
舞台背景があれとちょっと似てますよね、あれ、【普通の人々】。
1980年/アメリカ/監督:ロバート・レッドフォード/出演:ドナルド・サザーランド、メアリー・タイラー・ムーア、ティモシー・ハットン、ジャド・ハーシュ、エリザベス・マクガヴァン/第53回アカデミー作品・監督・助演男優・脚色賞受賞[…]
【普通の人々】は1980年の映画なんですけど…時代が変わっても、表面化しにくい家庭内での問題の本質ってあんまり変わんないもんなんですね。
アメリカ発祥の薔薇“アメリカン・ビューティー”や、その“アメリカン・ビューティー”をイメージさせる毒々しいほどの真紅を要所要所に散りばめ、登場人物それぞれの視点から様々な「アメリカの美」が描かれる映画、【アメリカン・ビューティー】です。
映画【アメリカン・ビューティー】のあらすじザックリ
映画【アメリカン・ビューティー】の主人公ケヴィン・スペイシー
42歳なんだって。バーナム家の当主レスター・バーナム(ケヴィン・スペイシー)さん。
一日の内で最も幸福な時間は朝のシャワーを浴びながら手コキしてる時。長年勤めた広告代理店のリストラ候補ナンバーワン。冒頭のモノローグでもうすぐ自分は死んでしまうことを明かしています。
さらっとネタバレすんなって?
いえいえ、【アメリカン・ビューティー】に於いて主人公のレスターが最終的に死ぬこと自体は大した意味を持ちませんから大丈夫。その過程にドラマがある訳で。
見栄っ張りの妻、反抗期バリバリの娘
大きな庭で美しくも毒々しい真っ赤な“アメリカン・ビューティー”を栽培し、隣家のゲイカップルにニコニコと挨拶をする妻キャロライン(アネット・ベニング)。
彼女のお陰で庭はもとより家の中だって綺麗に整理整頓され美しく保たれています。
しかし冷め切っていたバーナム夫婦が数年ぶりにソファでええ雰囲気になった時でさえ、
ちょっと待って!
このソファええやつやから汚れたらあかんねん!
とデリカシーの無い発言をして盛り上がった気分を一気に萎えさせるキャロラインのこーゆーところにレスターはうんざり。
キャロラインは【普通の人々】の主人公の母親ベス(メアリー・タイラー・ムーア)とも少しキャラが被ってます。
見栄えとか世間体とか、男からしたらしょーもないことを気にするこんな女性って多いですよね。かく言う私もたぶんこれ系です。
しかも「自分は何事もきちんとできている」と思っている。自己評価が異常に高い。
反抗期バリバリの一人娘ジェーン(ソーラ・バーチ)に、「イカれた両親!」って言われた時、「えっ?!(レスターだけじゃなくて)私も?!」って本気でびっくりしている場面は笑えます。
大体ジェーンの親友アンジェラ(ミーナ・スヴァーリ)からして、
ジェーン。
あんたの家って、お父さんよりむしろ、お母さんの方が問題ちゃう?
と直感的に口にするほどなのに、本人は自分がよくできた妻であり母であると信じて疑いもしていない異常さ。
ある意味このキャロラインはキーマンで、もし彼女がしかるべき女性であったならレスターは或いは死なずに済んでいたのかも知れません。
やっぱり男って選ぶ女で人生変わりますよね。
頑張ってください。
愛しのアンジェラ?…変態じみた無茶な設定が笑える
まるで世捨て人のようになってたレスターは、娘であるジェーンの親友アンジェラにひと目で恋に落ち、突如精力的になり人生を謳歌し始めます。
はっは(乾いた笑い)。
この設定、公開当時は「娘の友達に恋するとか、無茶やな~!」って笑って終わってましたけど、実際に子を持つ母となった現在では、ちょっと笑えません。
やめてマジで。
男って多少ロリな部分持ってますけどさ。いやホント気持ち悪い。やめろおっさん。42歳で16~7歳の幼気で可憐な少女を変な目で見んな。
ここ笑うとこなんですよね?
レスターが変態なんですよね?
【アメリカン・ビューティー】を観た人が全員「こんなんありえへんやろ~!」って爆笑し、シャレとして成立してますように。
お隣さんが引っ越してきた…ってへんこやん!
レスターがアンジェラに恋してはっちゃけ出すのと同じ頃、隣家にバーナム家と同じく思春期の子供を持つフィッツ夫婦が引っ越してきます。
息子のリッキー(ウェス・ベントリー)はことあるごとにビデオカメラを回しては何やら撮影しているサイコ野郎。
元軍人のフィッツ大佐(クリス・クーパー)はLGBTに理解を示さない堅物。
フィッツ夫人はどうやら軽い精神異常の気配が…?
うわ~隣にも崩壊寸前の変な一家きた。
ジェーンとリッキーを見て己を省みる
【アメリカン・ビューティー】の登場人物の中で、最初に観た時とその後の印象が最も変わったのがリッキー。
最初のリッキーの印象は、作中のアンジェラと同じでした。
何このサイコ、気持ち悪…。
ジェーン殺されるんちゃうか…。
まあ大抵の人はこんな感じでしょう。
しかしジェーンは口では嫌悪感を示すものの、リッキーに盗撮されることもつきまとわれることもまんざらでもない様子。どうしてもっと拒絶しないのか不思議でしたが、ジェーンは最初からリッキーの心の孤独や美しさを感じることができたようです。
そしてそれはジェーンに対するリッキーも同じ。
この二人の純粋さと無垢さがすごく羨ましいと同時に、彼らを見てるとええ年こいても上辺だけでしか人を見られない自分が恥ずかしくなってきます。
なんやリッキー、ええ男やったんやね。
唯一「幸せそうだね」で間違いなさそうなマイノリティカップル
【アメリカン・ビューティー】の中で唯一何の疑いもなく「ああ~…お幸せそうで何より~」と思えるのがバーナム家の(フィッツ家とは逆側の)隣家に暮らすゲイのカップル。
この映画が表面化されていない家庭内の問題をえぐった作品であることを鑑みても、彼らに隠された一面があるとは考えにくいです。
近所に知らない人が引っ越してきても恐れることも恥じることもなく
僕たちパートナーなんで~す!
一緒に暮らしてるんで~す!
よ・ろ・し・くっ!!
と堂々と笑って挨拶できる彼らの【アメリカン・ビューティー】における存在意義は多様過ぎて理解に苦しみますけど、虚像も実像もなく、ありのままの姿をさらけ出して生きている彼らだけが本当に幸せそうに描かれていることだけは確かです。
映画【アメリカン・ビューティー】の感想一言
見た目サイコな奴が純粋で、
見た目普通の奴がへんこで、
見た目派手な女子がバージンで、
すっかり騙されてましたよ私は。
人間の先入観って嫌になりますねえ…?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。