1988年/アメリカ/監督:ジョナサン・カプラン/出演:ジョディ・フォスター、ケリー・マクギリス、バーニー・コールソン、レオ・ロッシ、アン・ハーン、カーメン・アルジェンツィアノ/第61回アカデミー主演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
初めて観た時衝撃を受けました。
大勢の客でにぎわう酒場でピンボール台に押し付けられてレイプされるジョディ・フォスターの体当たりの演技はもちろんのこと、この誰にでも起こりうる性犯罪の現実についてですよ。
衝撃というか、怒りに震えましたね。
「酒を飲んでマリファナやって挑発的な格好をしていたからレイプなんかされるんや」??
なんやと?!
ほんなら酒飲んでマリファナやって挑発的な格好してる女性は全員レイプされてもええんかい。
ほんで下戸で地味な女性やったらレイプされへんのかい。
ってね。
魅力的な女性を見ると欲望を抑えられない低能のアホどもをいてこます映画、【告発の行方】です。
映画【告発の行方】のあらすじザックリ
とある酒場でレイプ事件発生
道路沿いの酒場から飛び出してきた乱れた服装の女性。彼女は通りすがりのトラックに助けを求め、病院に送ってもらいました。
彼女の名前はサラ・トバイアス(ジョディ・フォスター)。
酒場で3人の男にレイプされたと言います。
すぐさま地方検事補のキャサリン・マーフィー(ケリー・マクギリス)が保安官と共に捜査を開始。
サラの証言をもとに、その夜の内にまだ酒場にいた加害者2人が、翌日には3人目の加害者でまだ大学生のボブ(スティーブ・アンティン)が逮捕されます。
…ほっ。
あっけなく捕まってくれた。
法の裁きを受けるがいい。
いやいや、実はここからなんですよねこのお話は。
冒頭にも書いたとおり、サラはあの夜、恋人と喧嘩をして酒をがぶ飲みマリファナを吸ってた上に、ほとんど裸みたいな肌が露わになる服装をしていました。
もともと容姿は美しいし、ノリは良いし、部屋着には「猛虎」って書いてあるし(関係ない)、まあ言うたら「派手な子」ですわ。
だからなんやねんって感じですけど、加害者3人は口を揃えて「レイプなんかじゃなくて合意の上だった」と言うし、目撃者は「あれはただのセックス・ショーだ」と言うし、サラはサラで事件の前にボブを見かけて「(ケンカしてる彼氏へのあてつけに)あの子とセックスしてやろうかしら」なんて言ってるし。
実際問題陪審員の心証はすこぶる良くないわけですよ。
レイプ犯ではなく「はやし立てた連中」の罪を暴く
これでは勝てないと目したキャサリンは弁護側との取引に応じますが、それを聞いて落ち込んだサラを見て再び奮起。
今度は加害者の3人ではなく、レイプ現場で「やっちまえ!」だの「つっこめ!」だのはやし立てていたアホどもを“犯罪教唆”の罪で告発します。
参考 犯罪教唆=犯罪を実行する決意を有しない他人をそそのかして犯罪を実行させる罪
でもサラ側の証人はサラ自身とサラの友人で酒場のウェイトレスをしているサリー(アン・ハーン)の2人だけ。
慣れないスーツに身を包んだ小柄なサラが、法廷で涙ながらに「あの夜」について語る姿には同情しますが、まだこの時点ではキャサリンにも視聴者にも真実は分かりません。
もしかしたらサラが嘘をついている可能性だって残ってる。
だって第三者の証人がいないんだもん(サリーはピンボール台の周囲がただならぬ雰囲気なのを見て逃げ出したので余り当てにならない)。これは致命的ですよね。
「あの夜」の描写が包み隠さず超長い
でもついに救世主とも呼べる証人が現れます。
ボブの友人の大学生ケン・ジョイス(バーニー・コールソン)です。
現場での一部始終を見ていた彼が証言台に立って初めて、「あの夜」の回想が映し出されます。
「あの夜」、魅力的な女性サラは、確かに挑発的な服を着て、酒を飲みマリファナを吸い、腰をくねらせながらダンスを披露していました。
周囲にいた男性陣は、さぞかし「あの女とヤリてえ~…」と思ったことでしょうよ。
でも普通の客も大勢見ている前で、ピンボール台に押さえつけられて、3人もの男に入れ代わり立ち代わり犯されていい理由になるわけもない。
この回想の下りは映像も発言もまったくオブラートに包まれず、恐らく時間軸も実際のそれに近くしてあって、ジョディ・フォスターの体当たりの演技うんぬん以前に、サラの立場でいえば「地獄の時間」である数分を完璧に再現しています。
今回レビュー記事を書くにあたってDVDを再視聴した私ですが、この回想シーンは早送りしました(禁じ手)。
もう何回も観てるし。
できれば二度と観たくないよ。
ケンさん。
あなたはサラがレイプされたと思いますか?
ケンの証言のお陰で、「あの夜」ピンボール台の周りではやし立ててたアホどもは犯罪教唆の罪に問われることになり、この判決によって加害者3人の罪も「強姦罪」として再び裁ける可能性が出てくるそうです。
しかし彼らを裁けたとしても当の本人に罪の意識が芽生えるかどうかは別問題。
どうして再犯率の高い性犯罪の刑罰に“ちょん切る刑”ってないんですかね?
映画【告発の行方】の感想一言
奇しくも【告発の行方】の主演女優は2人共、2010年代に入ってからレズビアンであることをカミングアウト、それぞれ女性と結婚しています。
ケリー・マクギリスは実際にレイプ被害に遭ったこともあるし、奇妙なつながりが感じられる映画です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。