1993年/アメリカ/監督:トニー・ビル/出演:クリスチャン・スレーター、マリサ・トメイ、ロージー・ペレス、カイル・セコー、ウィリー・ガーソン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

あら?
私はいつも制作年やキャストを書く時にWikipediaを参照しているのですが、おかしいな、「忘れられない人」でWikipediaがヒットしない。
ページがないんです。
なんで?マイナーだから?
余り周知されていないとしたら残念…良い映画ですよ?
【忘れられない人】です。
映画【忘れられない人】のあらすじザックリ
変な邦題と原題【Untamed Heart】の意味
最初に断っておきますが、この映画は邦題が変です。
そもそも映画配給会社が付ける「邦題」についてはいつの時代も賛否があるもので、そんな中でも「あかん邦題」と聞いて私が真っ先に思い出すのは2011年公開の【最強のふたり】。
フランス映画なので原題のままでは正確に発音すらできない危険性をはらんでいるとは言え一体どうしてこうなった。
だってこのタイトルだけ見ると 最強の暗殺者か拳法家かボクサーか(何でもいい)、「その道」の手練れの二人が協力して目的を達成するスポーツドラマかアクション映画 をイメージしませんか?
どっこい【最強のふたり】は 体が不自由な富豪と貧しい若者との交流を描いたヒューマンドラマ です。

もうちょっとええタイトルあったやろ…。
実際私は公開当時、この変な邦題のお陰で見向きもしませんでした。
【忘れられない人】の原題【Untamed Heart】を直訳すると、「手の加えられていない自然のままの心」。
アダム(クリスチャン・スレーター)の無垢で純粋な心と、彼が幼い頃シスターに教えてもらってからずっと信じているおとぎ話に共通するタイトルで、内容にもテーマにもマッチしていて申し分ない。
初見の時、私は原題を知りませんでした。
「この映画は【忘れられない人】という映画だ」と認識したまま観終わった時、なんだかしっくりこなくてモヤモヤしたものです。

邦題がおかしいタイプのやつやな…。
すぐに原題を調べ、結果、この映画の良さを改めて理解できたのを覚えています。
タイトルって本当に大事なのに!
発音も特に難しいものではないのに なぜ!!
カタカナ表記で「アンテインド・ハート」でもええんちゃうんか!
参考 Untamed=飼いならされていない、抑制されていない、自由な、自然のままの、荒れている。
ありのままでキュートなキャロライン
主人公のキャロライン(マリサ・トメイ)は親友のシンディー(ロージー・ペレス)と一緒にカフェで働く、少々派手めの女の子。

濃いメイクに露出の高い服を着てタバコをプカプカふかしては、わざと蓮っ葉なことばを口にする。実の父親に捨てられてから「捨てられ癖」がついてるらしく、ロクでもない男にひっかかっては捨てられる日々を送っています。
夜明け前まで働いて、真っ暗な夜道をひとりで歩いていた時のこと。キャロラインはゴロツキにレイプされそうになります。
間一髪彼女を救ったのは同じカフェで働くちょっと変わった青年アダム(クリスチャン・スレーター)。

そんな事件があってからというもの、心を入れ替えたのかメイクをする元気もなくなってしまったのか、キャロラインはガッツリメイクをぱったり止めます。喫煙シーンも出てきません。
純粋なアダムと触れ合うことでキャロライン自身の虚像も崩れ落ち、本来のキャロラインが姿を現す。愛することを学び成長していく元ギャルって眩しい。
逆によくもまあ今まであれほどギャルギャルしていたもんですよ。後半はアダムのことが好きになりすぎて過剰にクネクネし始めますが、それもまたありのままで素敵やん?
クリスチャン・スレーターが心臓病を患う無垢な青年に
さっきアダムのことを「ちょっと変わった青年」と書きましたが訂正します。
アダムは「かなり変わった青年」です。
アダムの変な名言
●「(飼ってる犬の)名前は?」→「さあ…名乗らないんだ」(名乗るか)

●(舞台は真冬)→「アイスクリーム食べる?」(食うか)
●「お星様願いを叶えてください」→「あれ火星だよ」(ええねんそんなん)

うう~ん、どうやらそうでもないっぽい。
ただ心臓に重大な疾患を持つ、人付き合いが極端に下手な普通の26歳の男性ってことみたいですね(オドオドしてる割にはクリスチャン・スレーターの筋肉が凄すぎでちょっと入り込めないとこはあるんだけども)。
実はアダムが襲われているキャロラインを見つけたのは偶然ではなく、密かにキャロラインに想いを寄せていたアダムは、いつも夜道をひとりで帰るキャロランのあとを尾けていたのでした。
アダムは毎日彼女のあとをつけ、自宅に入るまで見守り、地下室から侵入して寝顔を見、クリスマスには部屋に無断でツリーを飾り…。

…て おお~い。
今のご時勢だったら間違いなくストーカー規制法でアウト。いやいや、当時でもアウトでしょうよ、「家宅侵入」!
一歩間違えば立派なストーカーの出来上がりなんですが、そこは深く考えずに鑑賞しましょう。古い映画って結構こーゆーの通常運転だったりするやん。
クリスチャン・スレーターといえば【トゥルー・ロマンス】のクラレンス役が有名ですよね。複数の前科を持つ現実のクリスチャン・スレーターはぶっ飛んだクラレンスに近いイメージ。
1993年/アメリカ/監督:トニー・スコット/出演:クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット、デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ブラッド・ピット、ゲイリー・オールドマン、サミュエル・L・ジャクソン、ヴァル・キル[…]
およそ純真無垢とは程遠いバイオレンスの芳香漂うクラレンスと、優しく真っ直ぐで捨て犬みたいな青年アダムを演じ分けるクリスチャン・スレーターの演技も見どころです(まあ筋肉はありすぎるんですが…しつこい?)。

アダムがハート(心臓)にこだわる理由
アダムの心臓の疾患は結構深刻。心臓移植を勧めるキャロラインに、アダムは絶対に嫌だと言って譲りません。
なぜならアダムは、「ハート」がなくなればもうキャロラインを愛し続けられないと思い込んでいるから。
愛するのは「心」と「魂」であって、「ハート」は「ハート」でも「心臓」じゃあないから大丈夫、と笑うキャロラインに彼は反論します。

でも君がいないと、
心臓が痛む。

ただの「心臓」ではないと。
アダムにとって「心臓」は、キャロラインを愛することをできた「心」そのもので、決して別物ではないと。
移植を拒んだ結果どんな運命が待っていようと、アダムは自分の「Untamed Heart」を他の誰かと取り替えることなどしません。
そして純粋すぎる彼の選択を尊重できるようにまで成長した“元ギャル”キャロラインの姿にも心を打たれる良作です。
映画【忘れられない人】の感想一言
確かにキャロラインにとってアダムは【忘れられない人】であるんだけどさ…。
やっぱり邦題おかしいよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。