2005年/フランス、イギリス、ドイツ/監督:クリスチャン・カリオン/出演:ダイアン・クルーガー、ベンノ・フユルマン、ギヨーム・カネ、ダニエル・ブリュール、ゲイリー・ルイス
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タイトルにある「アリア」って何かご存知ですか?
「何言ってんだコイツバカじゃねーの?」って思う人もいるのでしょうが、私と同じくオペラなどに造詣が深くない人のために書いておきます。
「アリア」ってのは叙情的、旋律的な特徴の強い「独唱曲」のことなんだってさ。
あーご存じでした?それはそれは失礼しました。
私ガチでダイアン・クルーガー扮するソプラノ歌手の名前だと思ってたよ。
実話を基にしたフランス・イギリス・ドイツ合作の戦争映画、【戦場のアリア】です。
映画【戦場のアリア】のあらすじザックリ
第一次世界大戦中の最前線で実際に起こった奇跡の物語
フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍が連日砲声をとどろかせているフランス北部のとある村。
深く長く掘られたこちら側の塹壕と敵側の塹壕の間には死体が転がったまま放置されています。
クリスマスを目前にしても一進一退の攻防に変化はなく、兵士たちの士気も下がり気味で、敵味方の区別なくこの最前線にいる全員が疲弊しきっていました。
そんな折、ドイツではデンマーク人ソプラノ歌手のアナ・ソレンセン(ダイアン・クルーガー)が、戦地へ赴いたテノール歌手で夫のニコラウス・シュプリンク(ベンノ・フルユマン)にひと目会いたい一心で、自ら戦地に足を踏み入れクリスマス返上で戦う兵士たちのために歌うことを提案。
そしてクリスマス・イヴの夜、ドイツ軍の塹壕には国から手配されたクリスマスツリーがいくつも並べられ、最前線にニコラウスとアナの歌声が響くのです。
ドイツ軍の歌声を聞いたスコットランド人神父はバグパイプを奏で、それを聞いたニコラウスはツリーを手に塹壕から出てきて、敵味方なく「そこにいるみんな」のために独唱。
その後、誰一人の例外もなく全員が願っていたことが現実となります。
「クリスマスぐらいは平和に過ごしたい」
両軍は正式に「一時休戦」の約束を交わしました。
小ネタを詰め込みすぎてどんどん嘘くさくなっていく
おどおどしながら塹壕から這い出してきて、敵軍に自国の酒やお菓子を差し出す兵士たちの姿にはちょっぴり感動しますけど、これだけでも信じられない奇跡なのに、次から次へと矢継ぎ早にどっかんどっかん「奇跡」をぶっこんでくるんでどんどん嘘くさくなってきます。
1匹の猫が両軍の間を行き来していてどちらにも可愛がってもらってるとか(これはたぶんネタや思いますけど)、フランス軍中尉が戦闘中に無くした財布をドイツ軍中尉が拾って持ってるとか、仲良くなったドイツ兵の手引きでここから目と鼻の先にある自分の家に連れて行ってもらうフランス人とか、
いや無いでしょ?
一夜限りの約束で休戦した両軍でしたが、翌朝も嘘くさい「奇跡」の魔法は解けず。
再び開戦したはずなのにドイツ軍中尉ときたら、チョロチョロと連合軍の塹壕へやってきて信じられないことを口にします。
…あの…、10分後に攻撃を開始させていただきますんで…、
うちの塹壕 に避難してもらえませんか?
おい腑抜けてんのかお前は。
上官や司教の言葉で完全に夢から醒める
ん~…まあ…「奇跡」…。
「奇跡」ねえ~…。
これもしかして、あかん映画ちゃうか…?
なんとなく納得いかないストーリーによぎり始める一抹の不安。
この「奇跡」は兵士たちが家族に書いたこんな内容の手紙によって、全軍の上層部にバレてしまいます。
これについても疑問なんですけど、兵士たちも手紙には検閲があることくらい承知してますよね?書いちゃダメでしょ。前線の兵士は検閲があることなんて知らなかったのかな。
当然それぞれが制裁を受けることになる。
救護兵として従軍していた神父は、戦地で敵味方問わずミサを開いていました。それを知った司教は神父に対する怒りを隠しません。
お前頭おかしいんか?
クリスマス・イヴにドイツ軍に説教するやなんて…。
あいつらには女子供もみんな容赦なく殺されてんねやぞ!
はい、ごもっとも。
ドイツ軍中尉と親友みたいに仲良くなってしまったフランス軍中尉には、父親である将軍が物申す。
ええ、ホントに。
塹壕に隠れながらただガムシャラに敵陣に向って発砲してたら、自分が撃ち殺している相手が「人間」であることなんて見えません。
でもこうして近付き、触れ合い、感動を共有すれば、今までは「敵」としか認識してなかったものが急に自分と同じ「人間」であることに気付くんでしょうにね。
しかしこの「奇跡」を容認してしまったら「えっと……、俺ら何のために戦ってんねや?」ってなってしまう訳で、死んでいった兵士も浮かばれない。殺し合いを正当化できない。
てかこれができるんならそもそも最前線ではなく例えば全軍の首脳会談の場ででもコンサート開いたらどうなんよ?
いやあ~お前ら話分かるやんけ~!
戦争なんか止めじゃ止め~!
ってなってくれてたかも知れない?
んなワケないわな。
あかんわこれ。
色んな意味で、幻想だけを2時間描いた感動押し付けのあかん映画。
映画【戦場のアリア】の感想一言
戦場のニコラウスに会うため手段を選ばないアナの愛は感動的ではあるものの、とどのつまりは自分たち2人のことしか考えていなくてなんだかなあ…って感じ。
他の兵士だってみんな祖国に妻や恋人や子供を残して国のために戦っているのに、「私たち(だけ)は絶対に離れたくないんです!」って、そんなもんがまかり通ったら誰だって愛しい人と一緒に戦って死にたいでしょうよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。