2007年/イギリス・アメリカ/監督:ティム・バートン/出演:ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アラン・リックマン、ティモシー・スポール、ジェイン・ワイズナー、サシャ・バロン・コーエン、ジェイミー・キャンベル・バウアー、エド・サンダース/第80回アカデミー美術賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
理髪店にやってきた客の喉をカミソリで掻き切り、仕掛け椅子をひっくり返して地下に落とした死体をミンチに加工し、人肉をふんだんに使った贅沢なミートパイを階下のミートパイ店で売っていたとされる悪魔のような理髪師スウィーニー・トッドさんのお話です。
ミュージカル仕様になっているので、ダンスこそないものの登場人物たちは突然歌い出したりハモったりリズムを刻んだりしますよ。
しかし「ホラー映画」の本来の役割(好きな人は怖けりゃ怖いほどいいんでしょ?)からすると、ミュージカルとは相性が悪いかもね。
だって全然怖くないんだもん。
映画【スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師】のあらすじザックリ
実話かどうか定かではない
イカれた理髪師スウィーニー・トッドの物語は、舞台用に作られたものだと思ってました。
19世紀の小説に出てくる人物が元祖なんですって。
未だにまことしやかに「“スウィーニー・トッド”は実話である」という説が囁かれるのは、19世紀に同じような手口で連続殺人を犯した理髪師がいた記録が残っていたり、複数の書物に同人物の記載が残っていたりするからだそうです。
どちらにしても「人肉パイ」が後付けであることだけは確実なんじゃない?って私は思ってます。
不気味なミュージカル・ホラー
不気味でぞわっとするけど美しい映像に全神経を持って行かれるオープニングがまず素晴らしい。
不景気で特権階級と市民との格差がますます広がり、負のパワーがどえらいことになってるロンドンの街に降り注ぐ雨は、血の様に見えて甘美で危険な飴の様でもあるし(雨と飴!)。
15年の刑期を終えた理髪師のベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)は“スウィーニー・トッド”と名を変え、ロンドン・フリート街の自分の店に戻ってきました。
理髪店の1階部分はラベット夫人(ヘレナ・ボナム=カーター)が一人で切り盛りするミートパイ店。
ミートパイ店に入るとおもむろにラベット夫人は歌い出します。
私は作中でこのラベット夫人の歌が一番好きです。
だってね、この人自分の店のパイのことを「ロンドンいちまずい」って6回も言うんですよ。
それも「美味しくない」とか「どう褒めてもまずい」とかバリエーション豊かに。生地を伸ばす棒でゴキブリしばきながら。リズミカルに。「踊りはない」って書きましたけどこのシーンはまるで踊ってるようで楽しいことこの上ない。
ラベット夫人の妄想のシーンは若干やり過ぎ感あるけど許容範囲。
さて、かつてこの街で、妻のルーシー(ローラ・ミシェル・ケリー)と娘のジョアナ(ジェイン・ワイズナー)と3人で仲良く暮らしていたトッドは、ルーシーを見初めたキモ男のターピン判事(アラン・リックマン)の策略により、無実の罪を着せられ流罪にされていたのでした。
トッドはラベット夫人から、15年前夫を失い途方に暮れたルーシーはターピン判事に弄 ばれ毒を飲み、まだ赤ちゃんだったジョアナはターピン判事に引き取られ、今も軟禁状態の囚われの身となっていることを聞かされます。
無茶な展開もミュージカルだからアリ
最初はターピン判事だけに復讐する目的で街に戻ったトッドでしたが、ロンドンそのものや腐った社会全体に対する憤怒の感情はおさまらず、ラベット夫人と共によそ者や身寄りのない人を殺してミートパイにしてお店に並べちゃうことを思いつきます。わお~。
一方でジョアナを囲ってる変態のターピン判事は、ルーシーだけでは飽き足らず、まだ15~17歳であろうジョアナとの結婚まで企んでいます。キモッ!
そこへきて、偶然ターピン判事の屋敷の前の通りから窓辺で歌うジョアナを見掛けて恋に落ちた船乗りのアンソニー(ジェイミー・キャンベル・バウアー)は、大胆にもジョアナとの駆け落ちを決意します。ひえ〜。
出てくる人出てくる人みんな、思考が極端な危険人物ばっかりなんですけどミュージカルだから全然アリ。
それどころかこの奇怪な人々が織り成す奇怪な物語になぜか納得してしまう。
登場人物が街中で歌い出したり踊り出したりするミュージカル映画って、ハナっから奇怪ですもんね。
だから少々「よく考えたら笑ってしまう描写」が含まれていたところでなんのその。
例えばこの場面。
船で知り合ったトッドを慕うアンソニーは、ジョアナとの駆け落ちを決心したことを伝えるため理髪店にやってきます。
トッドさん!
僕は今夜ターピン判事のところからジョアナをさらって駆け落ちします!
手を貸してください!
そう言って今晩の計画を練って帰っていくアンソニー。
しばらくすると、ターピン判事がヒゲを剃るために理髪店にやってきます。
飽くまで平静を装い、美しい女性と結婚する予定だから小綺麗にしたいと言うターピン判事に同調してみせるトッド。
いやあ~。綺麗な女性はいいですよねえ~、はっはっはあ~。
あと数ミリでカミソリの刃が喉に届くというその瞬間ですよ。
(ドアがちゃ!)
トッドさん!
僕は今夜ターピン判事のところからジョアナをさらって駆け落ちするんで…!
さっき聞いたわ!!
何を言いに帰ってきたんじゃキサマ!
「はっ!」って言うてる場合か!
台無しじゃドアホ!
とかね。
この時のアンソニーがどうして同じことを言うために戻ってきたのかホント分かんない。
しかしこの映画では、こんな「よく考えたら笑ってしまう描写」もなんのその、なんですよ。
映画【スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師】の感想一言
数ある共演作の中でも【スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師】の時のジョニー・デップとヘレナ・ボナム=カーターのコンビネーションが一番見応えがありますよね。
ラストに蛇足が見られる映画って多いですけど、ジョアナとアンソニーの恋路のその後が描かれることなく、トッドとラベット夫人が殺された時点で幕が下りるのも天晴 です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。