1975年/アメリカ/監督:スタンリー・キューブリック/出演:ライアン・オニール、マリサ・ベレンスン、ゲイ・ハミルトン、レオナルド・ロッシーター。アーサー・オサリヴァン、ゴッドフリー・クイグリー、ハーディ・クリューガー、パトリック・マギー/第48回アカデミー衣裳デザイン・編曲歌曲・美術・撮影賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
どうしてもダメな映画のひとつです。
何がダメってもう、眠くて眠くて。
「眠い」って言っても【恋に落ちたシェイクスピア】みたいに「退屈過ぎて眠い」のとは違います。
映像が「美し過ぎて眠い」んです。妙なる調べが「心地良過ぎて眠い」んです。要は美術館やクラシックコンサートと一緒。
上質な眠りをお望みであれば主人公レドモンド・バリー(ライアン・オニール)の転落劇に冷や冷やさせられる後半よりも、彼が“バリー・リンドン”へと登り詰めるまでが悠然と描かれる前半がおすすめ、【バリー・リンドン】です。
映画【バリー・リンドン】のあらすじザックリ
芸術系の賞をすべてかっさらった大作
第48回(1975年)のオスカーノミネート作。同年のアカデミー賞は最優秀作品賞を始めとする主要5部門(作品、監督、主演男優、主演女優、脚色賞)を【カッコーの巣の上で】が独占した年ですが、それ以外の、特に芸術系の賞を軒並みかっさらって行ったのが本日の映画【バリー・リンドン】です。
1975年/アメリカ/原作:ケン・キージー/監督:ミロス・フォアマン/出演:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、クリストファー・ロイド、ダニー・デヴィート、ウィル・サンプソン、ウィリアム・レッドフィールド、ブラッド・ドゥー[…]
第48回アカデミー賞(抜粋)
- 最優秀作品賞:【カッコーの巣の上で】
- 監督賞:【カッコーの巣の上で】(ミロス・フォアマン)
- 主演男優賞:【カッコーの巣の上で】(ジャック・ニコルソン)
- 主演女優賞:【カッコーの巣の上で】(ルイーズ・フレッチャー)
- 脚色賞:【カッコーの巣の上で】(ボー・ゴールドマン、ローレンス・ホーベン)
- 衣裳デザイン賞:【バリー・リンドン】(ミレーナ・カノネロ、ウルラ=ブリット・ショダールンド)
- 編曲・歌曲賞:【バリー・リンドン】(レナード・ローゼンマン)
- 美術賞:【バリー・リンドン】(ケン・アダム、ロイ・ウォーカー、ヴァーノン・ディクソン)
- 撮影賞:【バリー・リンドン】(ジョン・オルコット)
中でも【2001年宇宙の旅】以降多くのスタンリー・キューブリック作品に携わった映画撮影監督ジョン・オルコット氏の【バリー・リンドン】での功績は大きく、特殊レンズと高感度フィルムを使用してろうそくの灯だけで室内を撮影したことはよく知られています。
1968年/アメリカ/監督:スタンリー・キューブリック/出演:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター、ダグラス・レイン/第41回アカデミー特殊効果賞受賞注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが[…]
室内だけでなく自然光のみを用いて撮影された屋外の映像も桁外れに美しく、そこへ生地から再現した18世紀の煌びやかな衣装に身を包んだ俳優たちを動く絵画のごとく活き活きと描き出した日にゃああなた、私でなくても大半の観客は気が付けば眠気を催してしまうことでしょうよ。
「戦列歩兵」はアホす…いや怖すぎる
眠い眠いって言ってすみませんねえ。こんな風に刷り込んじゃうと本来なら眠くなかった人も次観た時には眠くなっちゃうかもね、罪な私。
いやでもね?映像や音楽が素晴らしいのに加えてマイケル・ホーダーンの落ち着いたナレーションでアイルランドの若者レドモンド・バリーの浮き沈みが淡々と語られる【バリー・リンドン】は、やっぱり眠くなる人続出だと思いますよ実際。
三人称も三人称、すんごい三人称の映画ですから。
「すんごい三人称」とはつまりどういうことかと言うと、バリーの身にどれほどの災難が降りかかろうとも「どことなく他人事である」ということ。これがバリーの一人称の物語であったら少しは違ってたかも知れませんけど、すんごい三人称ですから仕方ない。
そんな夢うつつ(おーい)の中でも私には忘れ得ない2つの描写があります。
一つ目はイギリス軍に入隊したバリーが戦場へ赴く場面。
この戦いでバリーは「戦列歩兵」に加わるのですが、これがホントにアホす…いや怖すぎて忘れられません。
「戦列歩兵」と言うのは銃剣を持った歩兵が陽気な音楽に合わせて横一列に並び進軍する戦法のこと。上の画像のように行進しながら敵陣へ突っ込んで行きます。
これ、ザックザックと足並み揃えて進む姿を横から見てる分にはカッコいいけど、敵軍から見るとこんな状態なんですよ?
何があろうと隊列を離れることは許されず、狙い撃ちにされてボテボテとぶっ倒れる仲間を踏みつけてなお進み続けなければならなかったんですってよ。
え、待って待って、こんな情景どっかで見たことありません?
こんなん屋台の射的の景品ですやん。
18世紀のヨーロッパにはすごい戦法があったもんです。むっちゃ笑う。
つけボクロバリバリのシュヴァリエ・ド・バリバリ
もう一つ印象深いのはあれです、17~18世紀のヨーロッパと言えばあれ、つけボクロ(そんなにもか)。
作中で一番につけボクロをバリバリつけてお出ましになるのはギャンブラーのシュヴァリエ・ド・バリバリ(パトリック・マギー)。
確かにつけボクロは当時流行してたと世界史の授業で習いましたよ。ヴェルサイユ宮殿のマリー・アントワネットとて色んな形のつけボクロ(=パッチ)をつけまくっていたと習いましたよ。
でもそれをこの映像美でもって完璧に再現されてしまいますとねえ。
笑うしかないんですよホント勘弁。
映画【バリー・リンドン】の感想一言
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。