【國民の創生】KKK

映画【國民の創生】あらすじと観た感想。「映画の父」D・W・グリフィスの問題作

1915年/アメリカ/監督:D・W・グリフィス/出演:リリアン・ギッシュ、エルマー・クリフトン、ラルフ・ルイス、ロバート・ハーロン、ヘンリー・B・ウォルソール、メエ・マーシュ

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【國民の創生】ラストシーン
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

前提として公然と人種差別が行われていた時代背景があり、黒人がリンチされるのもまるで当たり前のごとく描かれているとのことで、怖くてずっと観ることができなかった映画。

怖がりの私は怨霊もスプラッタも過激な暴力描写も受け付けません。

 

恐る恐る鑑賞してみましたが、拍子抜けするくらい全然怖くなくて、むしろ世界史(と映画史)の講義を受けているように大変楽しく拝見することができました。

それにド素人の私にはよく分かりませんけど、この時代では画期的な撮影技術が駆使されているそうですよ。ラストシーンでキリストらしき人物が合成されてる(上の画像)のを観た時はさすがにびっくりしました。

朱縫shuhou
こんな合成技術あったんや!

さすが【イントレランス】D・W・グリフィス監督。

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【イントレランス】リリアン・ギッシュ

 

南北戦争に翻弄される2つの家族と、現存する白人至上主義団体“KKK クー・クラックス・クランの誕生を描いた映画、【國民の創生】です。

 

 

 

映画【國民の創生】のあらすじザックリ

物語は北部ペンシルベニア州のストーンマン兄弟が、旧友のキャメロン兄弟に会いに南部サウスカロライナ州を訪ねることから始まる。フィル・ストーンマンはキャメロンの妹と恋に落ち、ベン・キャメロンはフィルの妹エルシーと愛し合う。やがて南北戦争が始まり、旧友たちは北軍と南軍に別れてしまう。

 

 

南北戦争とKKK誕生を描いた白人目線の問題作

アメリカ北部ペンシルベニア州のストーンマン家と、南部サウスカロライナ州キャメロン家の両家を軸に、エイブラハム・リンカーンの大統領就任が引き金となって勃発した南北戦争に翻弄される人々を描いています。

【國民の創生】ストンマン家とキャメロン家

ストーンマン家とキャメロン家にはそれぞれ年頃の子供たちがいて、フィルとトッズが旧友のベンのところに遊びに行くところから物語は始まります。

ストーンマン家

●長男フィル・ストーンマン(エルマー・クリフトン)→マーガレットと恋に落ちる
●次男トッズ・ストーンマン(ロバート・ハーロン)→戦死
●長女エルシー・ストーンマン(リリアン・ギッシュ)→ベンと恋に落ちる

【國民の創生】リリアン・ギッシュ
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

キャメロン家

●長男ベン・キャメロン(ヘンリー・B・ウォルソール)→エルシーと恋に落ちる
●長女マーガレット・キャメロン(ミリアム・クーパー)→フィルと恋に落ちる
●次女フローラ・キャメロン(メエ・マーシュ)→ブラコン気味にベンにべったり

【國民の創生】かわいいフローラ
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

●(次男と三男→戦死)

うまいこと友達の兄弟姉妹が恋愛関係になると言うベタな平和が描かれたのち、南北戦争が勃発。旧友たちは北軍兵と南軍兵として敵対することになります。

 

これ見よがしに出してくる主張「忠実に再現した」

ところで【國民の創生】では、歴史的事実が描かれる際、つぶさに「その時の状況を忠実に再現した」などとわざわざ字幕で表明してきます。

【國民の創生】字幕
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

これによって、きちんと史実を調べて多方面に聞き込みをして裏を取った上で制作した自分の作品にグリフィスが少なからぬ自信を持っていることが透けてみえます。

朱縫shuhou

絶対自信家やと思うわこの人。

常に字幕の下に「DG」って自分のイニシャル入っちゃってるし。

身近にこんなにドヤ感出してくる奴いたらちょっと退きますけどね。分かった分かったすごいすごい、みたいな。

グリフィスは北軍びいきだったとされていますし、そもそも「俺、白人!黒人、ゴミ!」って思想でも持ってなけりゃこんな映画思いつかないよね。

 

実際どれだけ歴史を忠実に再現したのかは分かりませんけど、とにかくエイブラハム・リンカーン(ジョゼフ・ヘナベリー)は影武者を疑うほど似ています。

【國民の創生】エイブラハム・リンカーン
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

 

ベンのインスピレーションによってKKKは生まれた

南北戦争でふたつに分かれてしまいそうになったアメリカが北軍の勝利によってその危機を免れたのち、南部では新たな問題が浮上。

これまで奴隷だった黒人たちが、自由になったことによりはっちゃけ始めたのです。

白人に対して過剰に横暴な態度を取る黒人たち。選挙権までもらって、議会の議席の数も白人を上回り、ついには黒人と白人の結婚を許可する法案まで通ってしまいます。

 

物語後半の黒人のはっちゃけぶりの描き方ときたら、よくもまあグリフィスが人権団体から闇討ちされなかったもんやと胸をなでおろすレベルで酷い。

自由になった途端に態度が豹変する黒人、畜生のように議会の机に足を投げ出す黒人、結婚が許可されたとたんに美しい白人女性に求婚する黒人…。

黒人がいかに教養の欠片もなく身の程知らずで卑しい人種であるか、これでもかこれでもかと強調してくるんです。

【國民の創生】
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

何も知らずにこの映画だけ観たら「そっか黒人って悪いんだ」って絶対思いますよ。

そういえば映画の冒頭から「米国分裂の危機は黒人に由来する」って何もかも黒人のせいにしちゃってるしね。

 

そんな黒人から南部(アメリカ)を守るために組織された集団が“KKK クー・クラックス・クラン”である、と、本作では語られています。

黒人の横暴に頭を抱えていたベンが、白人の子供達が白い布を被って黒人の子供達を怖がらせているのを見てひらめいたのが、KKKの象徴的なあの白装束。

【國民の創生】黒人へのリンチを行うKKK
©The Birth of a Nation/國民の創生より引用

白人も黒人もなく無邪気に遊んでいる子供達を見て「俺も白装束で黒人を脅したる!」なんて殺伐としたこと考えてるお前の思考回路が怖いわ。

 

こうしてベンが組織したKKKは調子に乗ってる黒人どもを黙らせることに成功し、KKKの活躍のお陰でアメリカは元通り白人のものとなりました、ハッピーだね!

と、本気で思ってる人たちが作った映画です。

 

現に「黒人奴隷は個人(白人)の“所有物”」と法的に認められていた時代があったのですから、 あながちグリフィスだけが頭おかしいとも言い切れない訳ですけど(黒人は人間じゃないと思ってる人が普通だったはず)、そう考えると余計に、アメリカの人種差別の歴史が垣間見えて戦慄を覚えます。

 

 

映画【國民の創生】の感想一言

朱縫shuhou

一番恐れていたリンチの場面は怖くなかったけど、考えようによっては【國民の創生 The Birth of a Nation】というタイトルそのものがすでに怖い。

 

直訳「国家の誕生」って、まるでこの映画の内容がアメリカ国民の総意であるかのようじゃありませんか。

参考 原作小説はKKKの団員を意味する「クランズマン」というタイトルです。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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