【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ

映画【無防備都市】あらすじと観た感想。「呪われろ!」ゲシュタポ許すまじ

1945年/イタリア/監督:ロベルト・ロッセリーニ/出演:アルド・ファブリーツィ、アンナ・マニャーニ、マルチェロ・パリエーロ、フランチェスコ・グランジャッケ、マリア・ミーキ、ハリー・ファウスト、ジョアンナ・ガレッティ、ヴィト・アニチアリコ

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

虐げられる弱者を描いた映画なんて無数にあります。

うつるんであんまり観たくない系ではありますけどね。でもそれが人として忘れてはならない大事な何かを描いている映画であるなら観ることを避けちゃいけないと思うんですよ。

そういう映画で弱者がコテンパンにやられているのを観て重苦しい気持ちになったとしても、ラストがハッピーエンドであるなら鑑賞後にはスッキリ爽快気分を味わえるものでしょう。鑑賞後の爽快感を味わいたくて観ると言っても過言じゃないかも知れないほどによ。

問題は虐げられる弱者が弱者のままラストを迎える映画

このたぐいの映画の鑑賞中に蓄積された怒りや哀しみは鑑賞後も解消されることなく、そのままその映画のイメージとして永遠に観た人の脳裏に焼き付いて離れません。

 

ロベルト・ロッセリーニ監督の代表作【無防備都市】もそんな負の感情を湧き上がらせる映画のうちの一本。

鑑賞後には私を含む世界中の誰もが「ゲシュタポ許すまじ」と拳を握りしめていることでしょう。

 

 

 

映画【無防備都市】のあらすじザックリ

第二次世界大戦末期、イタリアは連合軍に降伏、今まで同盟国だったドイツ軍が制圧中のローマ。レジスタンスの指導者で共産党員で国民解放委員会の幹部のマンフレディはゲシュタポの追跡を逃れ、資金調達のためローマに来る。しかし警戒が厳しく、結局神父ドン・ピエトロに資金の配送を依頼、同志の印刷工フランチェスコにかくまってもらう。

 

 

ドイツ軍が占領するローマで何が起こったか

舞台は第二次世界大戦終結目前の1944年。ナチス占領下のイタリア、ローマ。

冒頭からものものしいナチスの軍服姿の連中がどやどやとアパートの一室へ押し寄せる様子が映し出されます。

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用
ゲシュタポ
マンフレディ!マンフレディはどこや!

銃を手に家人の女性(家政婦と大家)に詰め寄るナチス・ドイツの秘密警察ゲシュタポ。それが人にものを訊ねる態度か。

あ、電話かかってきた。

ゲシュタポ

俺が出る!(ガチャ)

あーもしもし?キミ誰や?(…プツッ)

(ツー…ツー…)

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用
ゲシュタポ
今の電話誰や!
朱縫shuhou

知るかそんなもん!

ひとんちの電話勝手に出んな!

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

地下活動を行うレジスタンスのリーダーであるジョルジョ・マンフレディ(マルチェロ・パリエーロ)は、この頃すでにアパートのテラスから屋根を伝って逃走。同胞の印刷工フランチェスコ(フランチェスコ・グランジャッケ)の家に身を隠すことに成功します。

 

射殺も拷問も神父の処刑も実話?ゲシュタポ許すまじ

フランチェスコ宅でマンフレディを出迎えたのは、フランチェスコの婚約者で未亡人のピナ(アンナ・マニャーニ)。

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

妊娠中でありながらナチス占領下の困窮した生活の中で逞しく生きる一児の母。ゲシュタポに狙われるマンフレディを匿うことも厭わない強さを持つ“庶民の象徴”

 

ここでマンフレディはもう一人の重要人物であるドン・ピエトロ神父(アルド・ファブリーツィ)と出会います。

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

普段は子供達とサッカーして遊ぶただの気さくなオッサンなんですけどね。レジスタンスへの協力を惜しまない本物の聖職者です。

 

戦争中、ロベルト・ロッセリーニ監督が思いついたのが「レジスタンスに加担して処刑された神父の記録映画」の構想。ドン・ピエトロはこの神父がモデルになっていますから当然、映画のラストで処刑されます。

それどころかフランチェスコはゲシュタポに捕まるし、フランチェスコを追ったピナは射殺されるし(しかも殺された日はフランチェスコとピナの結婚式当日)、マンフレディも捕まった末に壮絶な拷問によって命を落とす。

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

これらのエピソードはすべて実話が基になっていると言います。

とりわけピナの息子マルチェッロ(ヴィト・アニチアリコ)が射殺されたピナの亡骸にすがる場面は衝撃的。映画史に残るこのシーンはほんの一瞬ではあるけれど、無力な庶民が時代の渦に飲み込まれる悲劇を象徴的に描いています。

 

ドン・ピエトロ神父「よい死を迎えることは難しくない。よく生きることは難しい」

ドン・ピエトロ神父がどうして処刑されるのか、私にはよく分かりません。

だってなんも悪いことしてへんやん。

死んでしまうまでマンフレディを拷問したナチスの連中に向かって「呪われよ!虫けらにも劣る者よ!呪われよ!」って言うたから?

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

そら言うわいな。

寄ってたかってひとりの人間を死ぬまでボコボコにしといて、ちょっと虫ケラって言われただけで処刑するって?

おかしいやろそんなもん。

 

ドン・ピエトロ神父の言葉を借りるなら、お前らなんかには絶対「よく生きること」「よい死を迎えること」もでけへんね。せいぜい虫ケラ以下の命を大事にな。そして呪われろ。

 

 

ロベルト・ロッセリーニによるネオレアリズモの先駆的映画

【無防備都市】はイタリアのネオリアリズモの幕開けを告げた重要な作品です。戦争がまだ終わっていない1945年に公開されたことからもこの映画の持つ歴史的意義と緊張感の大きさがうかがえます。

参考 ネオレアリズモ=第二次世界大戦後のイタリアで興った映画における現実描写とその作品群の呼称。民衆を表現の主体に、レジスタンス活動・労働争議や貧困をテーマとし、現実社会を客観的かつドキュメンタリー風に描き出した。

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

予算も機材も乏しい中でゲリラ的に撮影されたことが良い方に作用しているため、ドキュメンタリーに近い感覚で戦時下の緊張とリアリティが生々しく伝わってくる。悲劇の連続の中にあっても市井の人々がそれぞれの立場で抵抗し人間らしく生き抜こうとする姿からは、「希望を捨ててなるものか」という人間の底力が見て取れます。

 

【無防備都市】に感銘を受けたイングリッド・バーグマンの醜聞

ところで、【無防備都市】を観て感激した大女優イングリッド・バーグマンがロベルト・ロッセリーニ監督に手紙を書いて不倫関係(のちに結婚)に至ったのは有名なお話ですが、何もこの時に書いたのはラブレターだったわけじゃありません。実際には「あなたの映画に私が必要であれば喜んで出演します。イタリア語は“愛してます”しか話せないけれど」って書いてあったんですって。

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用

まあいずれにせよイングリッド・バーグマンはその言葉通りロベルト・ロッセリーニ監督のイタリア映画に何本か出演し不倫に走ってるわけですから、この手紙が“二人を繋ぐきっかけを作ったラブレター”であることは間違いないんでしょうけども。

 

ちなみにロベルト・ロッセリーニとイングリッド・バーグマンの娘は【ブルーベルベット】で知られる女優のイザベラ・ロッセリーニです。

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ブルーベルベットを歌うドロシー

 

 

映画【無防備都市】の感想一言

【無防備都市】ロベルト・ロッセリーニ
©Roma città aperta/無防備都市より引用
朱縫shuhou

戦争という極限状態の中にあって人間は、何を信じてどう行動するのでしょうか。

私にはマンフレディやピナ、ドン・ピエトロ神父のようにはとても生きられそうもありません。

抵抗できたとしてもせいぜいナチスの処刑隊のようにドン・ピエトロ神父から狙いを外すことくらいですよ。

だって報復も粛清も怖いもん。

 

「よく生きること」は本当に難しい。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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