1971年/アメリカ/監督:モンテ・ヘルマン/出演:ジェームズ・テイラー、デニス・ウィルソン、ウォーレン・オーツ、ローリー・バード、ハリー・ディーン・スタントン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
自らチューニングした車で静止状態から1/4マイル(約402.3m)を加速しタイムを競うドラッグレース。
かつて日本でも“ゼロヨン(0-400mを競うから)”という名で知られていましたが、最近はすっかり単語を耳にすることもなくなりました。サーキットではなく公道を走る競技(?)ですから、国土の狭い日本では「そういう場所」にわざわざ行かない限りはあまりお目にかからないかも知れませんね。ひと昔前は深夜の埠頭にマシンの爆音が響き渡ったりしてたもんです。
「頭文字D」とかね。「湾岸MIDNIGHT」とかね。懐かしいな。
ドラッグレースに憑りつかれた2人の若者を、シンガーソングライターのジェームズ・テイラーとビーチボーイズのデニス・ウィルソンが演じたモンテ・ヘルマン監督の代表作、【断絶】です。
映画【断絶】のあらすじザックリ
「レースだけで日銭を稼ぐ」って可能なの?
薄い水色(か、汚過ぎて灰色にも見える)の55年式シボレーシェビーに乗ってる2人の若者。
主人公の2人についてここは分かり易く、大好きな漫画「F」に例えて説明しましょう。
黒髪で背の高い方(ジェームズ・テイラー)が“赤城軍馬 ”で、茶髪で目が細い方(デニス・ウィルソン)が“大石タモツ”です。
全然分からんわ!
え?!
そうなの?!
“赤城軍馬”言うたら天才ドライバーで、“大石タモツ”言うたら天才メカニックでしょうが!
知らん?
めっちゃ面白いですよ「F」。なんやったら【断絶】よりおすすめです(おーい)。
ええまあその“ドライバー”と“メカニック”の2人がですね、行く先々でカモを見つけては決闘(レース)を申し込み、日銭を稼ぎながら方々行脚する映画なんですよ。
【イージー・ライダー】からの流れを汲んだロードムービーの傑作とされるんですけど、車でレースする映画だからって「ワイルド・スピードシリーズ」みたいなジャンル映画を頭に描いて視聴すると裏切られた感が半端ないことになるんで気を付けてください。
1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン、アントニオ・メンドーサ、カレン・ブラック注※このサイトは映画[…]
必要だったのか不要だったのかよく分からない女の子
ドライバーとメカニックの2人は、ほとんど会話もないまま、終始しかめっ面でシェビーを走らせています。
一体何が楽しいんやって?
うふふ、彼らの頭の中にあるのは「走ること」(または「速く走るようにチューニングすること」)だけ。車を走らせてるだけで楽しいんです。
なんの色気も無い2人の旅路に、大きな荷物を抱えたヒッチハイカーの少女(ローリー・バード)がいきなり割り込んで来ます。
メカニックと寝て、ドライバーに好意を抱かれるこの少女。
「メカニックと寝る」と言ってもベッドシーンがあるわけじゃないし、「ドライバーが好意を抱く」と言っても愛の告白があるわけじゃないし、ともすればこの少女の存在価値を見失いそうになってしまうんですけど、鑑賞後によくよく考えてみるとやっぱり彼女がいないことには【断絶】は成立しないことに気付かされます。
後半ドライバーの機嫌がどんどん悪くなっていくのはこの少女への恋心をこじらせているからなのか、はたまた単にレースが佳境に入ってきたからなのか、とか、想像を掻き立てられることと言えばこの少女にかかわる部分だけなんですよね。
ドライバーとメカニックは2人ですでに完結していますから。そこにはドラマは生まれません。
良いよこの娘。
一度だけドライバーが彼女の名前を出すけど恐らくほとんどの視聴者が忘れちゃうしね。
その微妙な存在感よ。
正解は確か“ヒギンズ”ちゃん?だったはず。
とっくに道に迷ってるおっさんウォーレン・オーツ
シェビーで疾走している3人に因縁をつけてくる真っ黄色のポンティアック・GTOに乗ったオッサン(ウォーレン・オーツ)は、脇役のはずなのに個性出し過ぎて無駄に輝いてる。いや脇役でもないんやけども。
自慢のポンティアックに誰かを乗せたくて仕方ないと見えて、でも絶対友達いないから、ヒッチハイカーを片っ端から乗せてやってはA級の虚言を吐きまくります。乗せる人ごとに言ってることが違うところがこのオッサンの良いところ。
調子こいてうっかり乗せてしまうゲイの男は密かにハリー・ディーン・スタントン。敢えて画像は載せない。
言うてもオッサンだって歳も歳ですから、一応自分が変な奴であることに自覚はあるようで、「早く居場所をみつけなきゃ、俺は永遠に道に迷う」と焦る気持ちを口にしています。
すでに道に迷いまくっていることにも気づかずに。
映画【断絶】の感想一言
町から町へ移動していく2人。
この時代のアメリカにはどこの町へ行っても何かしら車好きが集まるスポットが必ずあって、そこでボンネットを開ければ知らない人達がマシンのエンジンを見るためにわらわらと群れてきます。
ボロボロの中古車を持てる技術で最速のマシンへと改良するメカニック。
車の性能を最大限に活かす「加速」に命を懸けるドライバー。
そんな彼らの「若さ」を象徴するように、フィルムが一瞬で燃え尽きるラストがセンセーショナル。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。