1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン、アントニオ・メンドーサ、カレン・ブラック
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何を隠そう私、初めてこの映画を観たうら若き美女だった頃、途中で観るのを止めたことがあります。
あれは確か…そう、ヒッチハイクしてるヒッピーのオッサンを拾ったあたりで…
ってめっちゃ序盤。
…………だってバイクで走ってるだけでつまらなさそうって思ったんだもん。DVD観るの止めて遊びに出かけたわ。
いやあ~でもやっぱり若い頃はアメリカン・ニューシネマってよく分かんなかったよ?さすがにドンピシャの世代でもありませんし。
なんだったんでしょうねあのムーヴメントは。
参考 アメリカン・ニューシネマ=1960年代後半から1970年代頃までにハリウッドで製作された、主に主人公の壮絶な死によって幕を閉じる反体制的な若者を中心とした作品群
多方面に影響を与え、アメリカで一時代を築いたアメリカン・ニューシネマの代表作のひとつ、【イージー・ライダー】です。
映画【イージー・ライダー】のあらすじザックリ
時計を投げ捨て旅に出るキャプテン・アメリカとビリー
コカインの密輸で大金を手にしたワイアット(通称“キャプテン・アメリカ”)(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)が、謝肉祭めがけてカリフォルニア州からバージニア州まで大陸横断するロード・ムービー。
キャプテン・アメリカが時計を投げ捨てるオープニングから、ハーレーのガソリンタンクに大金を隠すというトリッキーな発想、行く先々での時代を象徴する人々との出会い、そして広大なアメリカを疾走する2人が衝撃の最期を迎えるまで、とにかく徹頭徹尾何から何までカッコいい。
ビリーはカウボーイハットにサングラスに長髪、首にはインディアンのネックレス。
キャプテン・アメリカは星条旗が大きく刺しゅうされたレザーの上下に身を包み、星条旗柄のヘルメットをかぶって星条旗デザインのチョッパーハーレーにまたがります。
監督のデニス・ホッパーは、【イージー・ライダー】を現代風西部劇にしたかったそうです。そんな事情で主人公の二人の“ワイアット”と“ビリー”という名前は、ワイアット・アープとビリー・ザ・キッドから取られています。
私的には「バディもの」における【明日に向って撃て!】に次ぐ名作。
1969年/アメリカ/監督:ジョージ・ロイ・ヒル/出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス、ストローザー・マーティン、ジェフ・コーリー、ジョージ・ファース/第42回アカデミー脚本・撮影・作曲・主題歌賞受賞[…]
…【イージー・ライダー】は途中で一度お笑いトリオになったりしますけども。
デニス・ホッパーとピーター・フォンダのラリラリ珍道中
【イージー・ライダー】では、キャプテン・アメリカもビリーも彼らが出会うヒッピーも、みんなが普通にマリファナ吸ってます。
映画の中での演出かと思いきや、実際の撮影現場でもみんなしてラリラリだったみたいですね。DVDの特典映像で色んな人が白状してます。
ラリラリは置いといても、少ない予算で走行中のバイクを巧みに撮らなければならないし、その上監督がデニス・ホッパー(当時32歳)とあって、撮影にはかなり苦労したそうです。
ちなみに一番最初に撮影されたのは実はクライマックスの謝肉祭のシーン。編集技術があるんだし珍しいことでもないんでしょうけど、なんとなくビックリしますよね。
ピーター・フォンダによると、【イージー・ライダー】のテーマは「僕らは自由じゃない」だと言います。
時計を捨ててハーレーで大地を疾走しヒッチハイクしてきたヒッピーをコミューンに送り届けるくらいまでは、なんとなく「アメリカ!フリーダム!」って感じがするんですけどね。
「自由の国アメリカ」がホントは自由じゃないだなんて、信じられます?
世界史の授業では全然そんな風に習いませんでしたよね?
「アメリカ南部」ってとこらへんが怖い
フリーダムな雰囲気も束の間、ビリーとキャプテン・アメリカがバージニア州に近づくにつれ、不穏な空気が漂ってきます。
浅学な私なんかは「アメリカ南部」と聞くと「黒人差別」って連想してしまいますけど、何も「黒人」に限ったことではないんですね。
当時のアメリカ南部は排他的で、「よそ者」や「異端者」に対する敵意バリバリ。増してや長髪に色眼鏡で単車にまたがる若者なんてもってのほか。
モーテルには泊まらせてもらえないし、レストランではウエイトレスは注文すら聞きにこないし他の客は大きな声で悪口言ってくるし。耳を疑いますよ本当に、「長髪やからぶち込む(逮捕する)か?」とか「郡境で片づけ(殺す)ようぜ」とか、普通に聞こえるように言ってきますから。
ぷぷっ!なんやあの格好…。
アイツら石器時代の人間か?
こんなこと言われた日にゃあ、現代っ子だったら間髪入れずに
お前らこそ原始人じゃ!
ってツッコんでしまうことでしょう。
しかしここでツッコんでも笑いなんて微塵も起こらないことは明白。
だって彼らの誹謗中傷は冗談じゃなくて全部ガチ。
まさかホントに殺しに来るなんて、嘘でしょ?
映画の中の話であって欲しいけど、事実この頃(1960年代後半)のアメリカ南部の一部のレストランでは、人種によって座席が決まっていたりしてたんですって。
長髪に色眼鏡の“異端者”に普通に接してくれたのは、カトリックの農家の人達と、ヒッピーの若者たちと、自分なりの哲学を持つアル中の弁護士だけ。
アメリカ国民でなくても「おいどうした自由の国よ」って疑問を投げかけてみたくなる。
思想家ジョージ・ハンセンを演じたジャック・ニコルソン
ビリーとキャプテン・アメリカの理解者のひとりであるジョージ・ハンセン(ジャック・ニコルソン)との出会いは留置場の中。
通りすがりのパレードに混じってはしゃいでいた2人は、「無許可のパレードに参加していた」容疑で逮捕されます。2人と同じ部屋でぐっすり眠っていたのが酒の飲み過ぎで暴れて収監されてたらしいアル中のジョージでした。
地元の有力者の息子っぽいジョージに頼んで釈放してもらった2人は、以前から謝肉祭に興味を持っていたジョージも一緒に連れて行ってあげることにします。
はいオモシロトリオ結成。
ハンセン氏「ニ゛ッニ゛ッニ゛ッ!…インディアン!」
アル中のジョージが酔っ払って暴れた翌朝、釈放されてすぐに酒を飲んだ時の有名な至福のリアクションはこちら。
最高。もっとやって。
もう好き。大好き。昨日風呂入ってないよね?髪臭そう。でも好き。(※私はジャック・ニコルソンの熱烈ファンです)
ちなみにこの「ニ゛ッニ゛ッニ゛ッ」は、あるスタッフの癖から着想を得たジャック・ニコルソンのオリジナルらしいです。
ジョージ・ハンセンの名言
【イージー・ライダー】が内包する思想的なものは、すべてこのジョージの発言の中にあると言います。
アメリカはええ国やった。
一体どないしてしもたんや。
奴らは君らが象徴する「自由」を怖がっとるんや。
自由を説く事と自由である事は別や。カネで動く奴は自由なられへん。
個人の自由についてはいくらでもしゃべるけど、自由な奴を見るんは怖いんや。
アメリカ人は自由を証明する為やったら殺人も平気やねん。
なぜ殺されたの?旅するのも自由なら撃つのも自由
「自由な若者を見て排他的な人々が恐れを抱く」。なるほど。
てか大体「自由」ってなんなんですかね?
そもそもビリーとキャプテン・アメリカが「どんな格好をしようと何に乗ろうとどこへ行こうと自由」って言うのであれば、「よそ者を差別するのも自由」なのかも知れない。人道的にどうとか道徳的にどうとかはちょっと置いといてですよ?
極端な話「長髪でいちびってる若者が目障りだから撃ち殺すのも自由」なのかも知れない。
そう考えるとレストランにいた客も、2人を撃った農民も、結構自由に生きてますやんね?
何にも縛られてないやん。
「人類皆平等」とか「人を殺してはいけない」とか、キリスト教の教えにも法律にも倫理観にも一切縛られていない。何にも恐れてない。
なんやったらジョージいわく「自由を象徴していた」はずのビリーとキャプテン・アメリカの方が、不自由な生き方を余儀なくされてる。
じゃあ何も「自由を象徴している」ビリーとキャプテン・アメリカを恐れる必要はないじゃない。
恐れる余り攻撃(撲殺や銃殺)しなくてもいいじゃない。
あんたたちのような「ある意味自由な奴」の方がよっぽど怖いわ。
なんなんですかねこの、メビウスの輪のようにぐるぐると、「自由だと思ってた方が実は自由でなかったり後進的だと思ってた方が実は自由だったり」と永遠に巡るイデオロギーは。
全然分かりません。
ただ「自由!自由!」と掲げるだけで、結局誰一人自由でなかったことしか分かりません。
映画【イージー・ライダー】の感想一言
【イージー・ライダー】出演時、遅咲きのジャック・ニコルソンは俳優を辞めて撮影所を作ろうとしていたそうです。
しかしこの映画で注目を集めた彼は、その後【ファイブ・イージー・ピーセス】、【チャイナタウン】と立て続けにのちに自身の代表作となる作品に出演し、【カッコーの巣の上で】でついにアカデミー主演男優賞を獲得するまでに登り詰めます。
つくづく俳優でいてくれて良かった。
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