1974年/アメリカ/監督:ジョン・ギラーミン/出演:ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレイクリー、リチャード・チェンバレン、O・J・シンプソン、ジェニファー・ジョーンズ/第47回アカデミー撮影・編集・歌曲賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
私は高所恐怖症です。
大阪の天保山という所に高さ112.5mを誇る「大観覧車」がありまして、中でも4基しかない側面も床面もすべて透明の「シースルーキャビン」が人気なんです。
うら若き美女だった頃、「怖~い!」とか言って彼氏にくっつこうと言う下心のもとにカップルでこれに乗ったことがあります。
いえ、自分の高所恐怖症をナメていた訳ではありません。愛が恐怖心を凌駕すると思っていたんです。
ところがいざ乗ってみると恐怖の余りめまいと吐き気を催し、どちらか一方の座席に寄るとキャビンが傾くので向かい合わせに座ったまま、下を向いても横を向いてもスケスケなので仕方なく目を閉じ、会話もせず微動だにせず視線も合わせず無言の一周15分を過ごしたことがあります。
以上、映画本編にまったく関係のない十数年前の高所の思い出でした。
超高層ビルの火災を描いたパニック・アクション、【タワーリング・インフェルノ】です。
映画【タワーリング・インフェルノ】のあらすじザックリ
ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンのW主演、あるいはハリウッドのスタジオシステムの崩壊について
【タワーリング・インフェルノ】はハリウッド映画史において大きな意味を持つ作品です。
理由は、ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンの2大スターが共演したことにあります。
「オーシャンズシリーズ」のジョージ・クルーニーとブラッド・ピットなど、今でこそ大物俳優の共演は珍しくありませんが、当時は“ビッグ5”と呼ばれた映画会社が製作から配給まですべての権利を握っていて、その力は監督や俳優にも及び、一人で客を呼べる大物スターをわざわざ共演させることはありませんでした(出演料が倍かかるから)。
こういったハリウッドの“スタジオシステム”が崩壊したのが1960年代。
その後1970年代に入り、20世紀FOXとワーナー・ブラザースの共同制作/提供の企画として挙がったのが本作【タワーリング・インフェルノ】。そしてついに20世紀FOXのポール・ニューマンとワーナー・ブラザースのスティーブ・マックイーンの共演が実現するにいたったのです。
ちょっと斜めのクレジット
ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンの共演がどれほどの大事件だったのか分かっていただけたでしょうか。
じゃあ次に頭をかすめたのはもしかしたらこんな疑問なんじゃないですか?
そうそう、そこ気になりますよね?
お見せしましょう、私が最初に観た時に吹き出してしまった【タワーリング・インフェルノ】のポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンのクレジットがこちら。
ん斜め。
通常の序列としては「左」か「上」にある者が上位。
ところが「左」にスティーブ・マックイーンが来て、「上」にポール・ニューマンが来ている。
つまりすんごい露骨にはぐらかしてるワケですね。
ちなみに斜めに表記されてるのは最初のこの2人だけ。
以降はちゃんと綺麗に並んでる。
他のキャストが整然と並んでいるのを見てもう一度吹き出した私。
導入部でいきなり二度も笑わせてくれるなんて、ホント素晴らしい映画ですよ。
並み居るスターが目白押し
ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンだけでなく、ウィリアム・ホールデンやフェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、ジェニファー・ジョーンズなど、当時“オールスターキャスト”と言われた布陣も売りでした。
妻殺害容疑(一応無罪)をかけられた「O・J・シンプソン事件」で有名な元アメリカンフットボールの花形選手O・J・シンプソンも出てます。しかも「危機管理能力に長けた警備主任」と言うめっちゃいい役どころもらってる。良かったやん。
138階建て超高層ビルの火災
2019年現在、世界で一番高いビルは「ブルジュ・ハリファ」と言うドバイにある超高層ビルだそうです。
206階建てのビルの高さは実に828m!
空に向かってほぼ1km!
しかも108階までの一部は居住区になっている!
こんなビル、金くれたって絶対住みたくないわ!
消防隊隊長マイケル・オハラハン(スティーブ・マックイーン)がビルの設計者であるダグ・ロバーツ(ポール・ニューマン)に対して、「あんたらはすぐに高い建物を作りたがる」とやや蔑 んだ調子で吐き捨てる場面がありますけども。
ホントそうですよ。
なんでそんなに高い建物作る必要があるんじゃドアホ。
せいぜい東京タワーくらいでええやん。
しかもそんなとこ住まんでもええやん。
せめて観光くらいでええやん。
【タワーリング・インフェルノ】に出てくる超高層ビル「グラス・タワー」は「ブルジュ・ハリファ」には及びませんが、それでもサンフランシスコの街を悠然と見下ろすのには十分な138階建て。
建築士のダグが設計し、ジェームズ・ダンカン(ウィリアム・ホールデン)社長の施工会社が建てたグラス・タワーの、今夜はいよいよ竣工式。そこで事件は起こります。
焦げたコード1本だけで顔色が変わる設計者
発電機の異常を調べたダグは自分の設計通りの部品が使われていないことに気付きます。コストの削減にばかり注力するダンカンがケチってショボい部品に替えた結果でした。
この時点ではまだ、数時間後のグラス・タワーの末路を想像して青くなってるのは設計者のダグと警備責任者のハリー(O・J・シンプソン)だけ。
ダグはオーナーであるダンカンに事態が深刻であることを伝えますが、「俺のビルは大丈夫やろ」と取り合ってもらえません。お約束。パニック映画の偉いさんってのは、どうしてこうも技術者や専門知識を持つ人の言うことを聞いてくれないんですかね。
胆 が小さくて小事 にも慌てふためくボスってのもイヤだけど、慢心すんのも大概にしなさいよ。
エレベーター、階段、ヘリコプター、カゴ…万策尽きる
手抜き工事(?)のせいでついに、81階の物置から発火。
スプリンクラーも正常に作動せず、燃え盛る炎はみるみる広がり上へ上へと勢いを増します。
その頃、最上階の135階では300人の関係者や招待客がのん気に竣工パーティを楽しんでいました。
消防隊が到着し、オハラハンの説得でようやくダンカンが事態を受け入れ、パーティの参加者はエレベーターで脱出をはかります。
無理やろエレベーター!
案の定エレベーターは誤作動を起こして81~83階付近の火災がもっとも酷い階で緊急停止してしまい、再び最上階に戻ってきた時には中から火だるまになった男性が転がり出てきます。
エレベーターなんかあかんって言うたやん!
災害時は階段階段!
135階って言うても下りやからなんとかなるって!
非常階段で降りようとするもなぜか扉が開かず断念(あとでダグが発見しますが、扉の反対側でセメントが倒れて固まってしまっているのが原因)。
ほんならヘリ!
屋上からヘリで救出しかないやんもう!
風が強くて無理です。
隣の高層ビルの屋上からロープを渡すんで、“カゴ”で脱出してください。
ああ~もう!
分かった!
じゃあそれでいいから!
早く!
早くその“カゴ”とか言うやつ準備して!
嘘ちっちゃ!!
ほんで一人ずつって!
そこへ消防副署長からの衝撃発言。
最上階に火の手が回るまであと18分ほどだ。
“カゴ”で全員救出するにはあと三時間はかかる。
でしょうねえ!
あのカゴではねえ!
最後の手段は380万リットルの水
遅れて到着した消防副署長(ダブニー・コールマン)らは、最終手段「最上階(パーティ会場の135階よりまだ上)の貯水タンクを爆破する」方法を提案します。
提案というか、もうこれしかない。
貯水タンクには380万リットルの水があると言います。焼け死ぬか、135階が爆破と水流に耐えられることに賭けるか。
てか380万リットルってどれくらい?
えっと、小中学校の25mプールに120cmほど水を張った状態で約36万リットルなんですって。
だからまあ、小中学校のプール約11杯分ですわ。
この水に頼るしかないと。
タイトル【タワーリング・インフェルノ】とは「そびえたつ地獄(のような場所)」を意味します。
灼熱地獄のあとに爆風地獄、続いて濁流地獄ですか。私にとっては高所であることがすでに地獄だし。
これ1本でまさに色んな地獄めぐりができちゃう手に汗握る映画なんですね。
どうしようもなくカッコいいマックイーン
私はスティーブ・マックイーンよりもポール・ニューマンの方が断然好きです。もうメロメロ。
しかし【タワーリング・インフェルノ】におけるキャラクターのカッコよさとしては消防隊長マイケル・オハラハンを演じたスティーブ・マックイーンに軍配があがります。
だってもうめちゃくちゃカッコいいんですよホンットに。
当たり前ですけど、大惨事のさなかなので救助活動中のオハラハンは全然笑いません。終始眉間に皺を寄せて焦げ焦げになりながら人命を救う手段をあれこれ考えています。
そのオハラハンがついに笑うラストがね。胸を撃ち抜かれたかのように衝撃なんですよ。
これだけの大惨事になってしまったので、恐らく設計責任者であるダグは施工責任者のダンカン社長と共に何らかの刑事罰を食らうと思われます。でもオハラハンがダグに向かって微笑んでくれたこの瞬間、法的には許されなくても心理的に許されたような気分になるんです。
まさかスティーブ・マックイーンの笑顔に天使を見るとは思いませんでしたね。
もちろん救助活動中のオハラハンも最高だし。
【タワーリング・インフェルノ】を観ている時だけは、ポール・ニューマンよりもスティーブ・マックイーン推しになる私です。
映画【タワーリング・インフェルノ】の感想一言
オハラハンが最後に、今回の火災での犠牲者は200人だと言っています。この200人の中にはもちろん救助にあたって命を落とした消防士も含まれていて、映画の冒頭には「全世界の消防士にこの映画を捧げる」というメッセージが映し出されます。
何人も同僚を失ってきたであろうオハラハンが、災害が起きた時の救助が困難である高いビルを建てるアホどもに皮肉を言うのも納得ですよね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。