1995年/アメリカ/監督:マイケル・マン/出演:アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ヴァル・キルマー、ジョン・ヴォイト、トム・サイズモア、ダイアン・ヴェノーラ、ダニー・トレホ、ナタリー・ポートマン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
35~36歳くらいの時でしたかね。
結婚歴のない独身の同級生の男友達に、「どうして結婚しないの?」と問うたことがあります。
今まで何人も恋人もいたし、定職もあるし、見た目もカッコいい部類に入る男性です。浮気癖もギャンブル癖も借金も特にありません。何か決定的な問題があって結婚できない訳でもなさそうなのに、三十代も半ばを過ぎてもまだまだ結婚する気配はなし。
昔から知ってる友達ですが、いい加減不思議になってきたので聞いてみたんです。
すると彼はこう答えました。
彼曰く、女性が結婚すれば生活は安定するし子供はできるしマウンティング上位に食い込むし良いことだらけだけど、男性が結婚したところで今まで自由に使えていた給料はお小遣い制にされ、趣味の時間は妻に邪魔され、休日は子供に拘束され、ひとつも良いことがないと言うのです。
その時私はなぜか本日の映画のロバート・デ・ニーロを思い出したんですよね。
こいつ…
いつでも30秒で高飛びできるわ。
【ヒート】です。
映画【ヒート】のあらすじザックリ
ニールの名言とヴィンセントの家庭崩壊
冒頭のお話は一体何が言いたかったのかといいますと、月並みですけど【ターミネーター】にしろ【ランボー】にしろ、やっぱり「自分以外に守るものがない奴」って最強なんじゃないかってことです。
1984年/アメリカ/監督:ジェームズ・キャメロン/出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、マイケル・ビーン、リンダ・ハミルトン、ポール・ウィンフィールド、ランス・ヘンリクセン注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気[…]
1982年/アメリカ/監督:テッド・コッチェフ/出演:シルベスター・スタローン、リチャード・クレンナ、ブライアン・デネヒー、ビル・マッキニー、パトリック・スタック、ジャック・スターレット注※このサイトは映画のネタバレしようが[…]
北斗神拳伝承者ケンシロウだってピンチに陥るのは大概バットやリンを守らなければならない時でしょう?
「守るものがある奴の方が強い」ってのは幻想で、守る対象は場合によっては「弱点」にもなってしまいますから、そういったしがらみを一切持たない奴がこの世で一番強いのかも知れない、とか、思いません?
冒頭の男友達にしても、人生楽しそうですよ。自分の好きなことして、自由で、きままでね。家庭に縛られていないからいつまでも若々しいしね。
「強い」ってのが今の世の中に当てはめると一体どういうことなのかよく分かんないですけど、でも人生って楽しんだもん勝ちだもんね。
守るものも縛られるものもない彼は勝ち組なのかも知れません。
「仕事」に生きる男たちの戦い
そろそろ映画の話しします。
【ヒート】は「仕事」に憑りつかれたプロフェッショナルな2人の男の物語です。
1人は強盗団のリーダー的存在ニール・マッコーリー(ロバート・デ・ニーロ)。
この人の名言がね、もうたまらんカッコいいんですよ。これが私が、冒頭の男友達なら遂行できるなあ~と妙に感心してしまったプロフェッショナルな美学です。
例えばとある強奪作戦実行中、チョンボをしでかして身元が割れてしまったとしても、家族も恋人も宝物のひとつも持たず30秒で高飛びされた日にゃあ、警察だってお手上げですよ。
だからニールは最強。
元締めのネイト(ジョン・ヴォイト)だけは詳細不明だけど、ニールの仲間のクリス(ヴァル・キルマー)にもマイケル(トム・サイズモア)にもトレヨ(ダニー・トレホ)にも、家族や恋人がいます。
でもニールは常に孤独。
かろうじて「仲間」は居る。でも仲間は例外。「守る対象」じゃないから。
仲間達の家族が集まっての食事会で、ニールが自分の隣の空席を見て少しだけ寂しそうにするシーンもあります。
でもニールには自分に課した鉄の掟があります。
これだけは何があっても破ってはならない。
自分の隣の空席は絶対に埋めてはならない。
実際クリスとトレヨの運命は家族を人質に取られたことで大きく歪んでしまいます。
そんなニールを追うのはバツ2の敏腕警部補ヴィンセント・ハナ(アル・パチーノ)。
バツ2でしかも3つ目の現家庭も崩壊寸前ってとこがミソ。
仕事に生きるプロフェッショナルという点ではニールと同種の人間だけど、ヴィンセントはいつでも高飛びする覚悟を持たなければならない身分ではないから、家庭を持ってはいけないって訳じゃない。
でもニールにしてみれば「30秒フラットで高飛びしようなんて奴を捕まえようとする奴が結婚するのが間違ってる」。
まさしくその通りで、仮にヴィンセントが昨今日本でも盛んに叫ばれてる育休でも取ろうもんなら、その間にニールはあらよっと海外へ高飛びして、結果的に犯罪者に悠々自適の生活を許すことになってしまいます。
犯罪者をのさばらせるのが嫌なら義理の娘ローレン(ナタリー・ポートマン)が自殺未遂をはかろうとも、とりあえず「ほったらかして」現場に急行しなければならないのです。
映画は離婚寸前だったヴィンセントと妻ジャスティン(ダイアン・ヴェノーラ)がローレンの自殺未遂を機に元さやに落ち着いたかのように描かれて終わりますが、その後この2人はやっぱり破局するでしょう。
常に悪への憎しみを心の中に蓄積して緊張感を保っているヴィンセントは仕事にしか生きられない。
特段珍しいことでもない。
根本ではこんな感じの男性って結構いますよ。
むしろ少なからず男性にはこうあって欲しい。
最近の若者はそうでもないのかしら?
仕事に生きる不器用な男をカッコいいと思うのはもう時代遅れの感覚なんですかね。
12分間の白昼の銃撃戦
そして【ヒート】といえば白昼の大都会での銃撃戦。
これを最後に足を洗うと決め、どうしても銀行襲撃の大きなヤマを踏みたいニール。襲撃手段は意表をついて「白昼堂々正面から押し入る」というもの。
重たそうな現金を背負って、マイケルが車に乗り、ニールが車に乗り、「うまくいった」とクリスが微笑みかけた瞬間、銃撃戦は幕を開けます。
白昼の都会の銃撃戦なのに意外と一般人の血が流れていない描写が好き。
警官はニール達の乱射によってアホみたいに死んでるけど。
これって現実だったら多分、通行人に被害が出るからとか言っていったん泳がせたりするよね?
いやあ~映画っていいわね。無茶苦茶で。
映画【ヒート】の感想一言
白昼の銃撃戦が有名な映画ですが、私は女性目線で「別れも告げられず恋人に立ち去られたイーディ(エイミー・ブレネマン)」の表情も忘れられません。
震えるほど怖くてそれでも信じて待って、やっとニールが戻って安心した刹那、彼は去って行く。
どんな状況やねん。
これからどないしたらええねん。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。