1970年/アメリカ/監督:ボブ・ラフェルソン/出演:ジャック・ニコルソン、カレン・ブラック、ビリー・グリーン・ブッシュ、スーザン・アンスパック、ロイス・スミス、ラルフ・ウェイト、ウィリアム・チャーリー
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
あからさまに「ジャック・ニコルソン」であるのだけれど、この映画で彼が見せた演技はこれまで演じた他のどんなキャラクターよりも繊細で深みがあって忘れられない(晩年も含む)。
【イージー・ライダー】のアル中の弁護士ジョージ・ハンセン役で一躍有名になったジャック・ニコルソンがその1年後、今度は主演として挑んだロードムービー、【ファイブ・イージー・ピーセス】です。
1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン、アントニオ・メンドーサ、カレン・ブラック注※このサイトは映画[…]
映画【ファイブ・イージー・ピーセス】のあらすじザックリ
音楽の名家から石油発掘現場へドロップアウト
石油発掘現場で油と泥と汗まみれになって働く青年ロバート・“ボビー”・デュピー(ジャック・ニコルソン)。
本来であればこんな所にいる人種じゃないらしい。
実は音楽の名門に生まれた上流階級なんだけど特に隠しているわけでもなく、同僚のエルトン(ビリー・グリーン・ブッシュ)や恋人のレイ(カレン・ブラック)もボビーの氏素性 は理解しています。
音楽の才能に恵まれなかったのか、ケガをして楽器を弾けなくなったのか、どうしてそんな彼がこんな生活をしているのかは描かれません。
ただボビーは目的も情熱もなくここにいて、同僚とカードをしたり町の女の子と浮気したりして過ごしています。
ある日エルトンからレイが妊娠していると聞かされたボビーは、ふと思い立って姉のティタ(ロイス・スミス)を訪ねます。ボビーはティタから病状が良くない父親に会うように強く迫られ、仕事を辞め、情緒不安定のレイを伴って3年ぶりに実家へ帰ることを決意するのでした。
人生ドロップアウトした青年の、ある数週間を切り取った映画です。
アラスカに行きたいパームとテリーもドロップアウト?
ボビーとレイは道中、車が横転して立ち往生している変な2人組の女を拾います。
長い髪を不潔にたらしたパーム(ヘレナ・カリアニオテス)と、快活そうだけど無口なテリー(トニー・バジル)。
彼女たちは“ゴミ溜めのようなアメリカ”を捨てて“キレイなアラスカ”へ行くんだそうです。
「アラスカってキレイなん?」ってボビーに聞かれたパームの返答に爆笑ですよ。
お前の身なりがまず汚いわ。
「アメリカは汚いねん」だの「ゴミだらけやねん」だのと後部座席から終始ブツクサ文句たれてるパーム。
静かに半笑いでそれを聞いてる(聞いてないかも?)テリー。
この2人との出会いと別れは何の意味もないようでいてラストのボビーの行動に少しだけ影響を与えているような気もします。
ボビーの行きつく先はどこなのか
「ドロップアウトしたピアニスト」って言いますけど、ボビーは才能あるらしいんですよ。とりあえずピアノに関しては。
石油発掘現場で働いてた時には、トラックの荷台に乗ってたピアノをサクサクっと弾いちゃうしね。何年もブランクがあるだろうに。
兄カール(ラルフ・ウェイト)の教え子兼恋人のキャサリン(スーザン・アンスパック)が、ボビーの演奏を聴いて「感動した」って言ってるしね。現役(修行中?)ピアニストの太鼓判つき。
別にピアノが弾けなくなった訳じゃない。
才能がない訳でもなさそう。
でもじゃあどうして逃げてばかりなの?
3年ぶりの帰省を終え実家を出る前、ボビーはティタに勧められてほぼ意識のない父親と話をします。
ここでギューッと胸が苦しくなるんですけど、どうしてボビーは自分がいる場所が「悪く」なると思ってるのかよく分からない。
兄カールの恋人キャサリンと寝て、あまつさえプロポーズまでしてしまったことを悔いてるの?
そもそも音楽家にならなかった自分を恥じてるの?
私だったらそんな事気にしません。
気にしたってしゃあないし。
自分がいることが原因で状況が悪くなるだなんて考えもしないと思う(ちょっとは思え)。
どうしたのよ。
何があったのよ。
すごく繊細でしょ?
本当はすごく繊細なんですよボビーって。
繊細なボビーはラストでまたどこか新天地へ逃げ出してしまう。
何の解決にもならないのに…って思いながらトレーラーの助手席に座るボビーを見守るしかできない無情感溢れる映画です。
タイトル「ファイブ・イージー・ピーセス」とは?
タイトルの「ファイブ・イージー・ピーセス」の直訳は「5つの簡単なもの(曲)」。
作中で流れる次の5曲を指すんだとか。
- ショパン「幻想曲 作品49 ト短調」
- バッハ「半音階的幻想曲とフーガ」
- モーツァルト「協奏曲 K.271 変ホ短調」
- ショパン「前奏曲 第4番 Op.28-4 ホ短調」
- モーツァルト「幻想曲 K.397 ニ短調」
ボビーが「8歳の俺の方が上手く弾けた」と言っているのは4曲目のショパンの前奏曲です。
映画【ファイブ・イージー・ピーセス】の感想一言
何がしたいんだかよく分からない名家のボンボンボビー。
こういう男って、レイみたいに「ちょっと抜けてる部分もあるけど無邪気に尽くす女」と一緒になれば幸せになれるような気がするんですけどねえ…。
…そういえばレイのお腹の子供はどないするねん!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。