【第七の封印】マックス・フォン・シドー

映画【第七の封印】あらすじと感想。「死神とチェスをする十字軍騎士」の発想はない

【第七の封印】マックス・フォン・シドー

1957年/スウェーデン/監督:イングマール・ベルイマン/出演:マックス・フォン・シドー、グンナール・ビョルンストランド、ベント・エケロート、ニルス・ポッペ、ビビ・アンデショーン、グンネル・リンドブロム、ベティル・アンデルベルイ

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【第七の封印】アントニウスとヨンス
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

【野いちご】【処女の泉】で知られるイングマール・ベルイマン監督作品。

 

やけに神や信仰、悪魔や生死について描きたがるイングマール・ベルイマンですが、それもそのはず彼の父親はプロテスタント教会の高僧だったんだそうです。

ただの牧師とかじゃないですよ?

「高僧」。

RPGで言うたらハイプリーストですよハイプリースト。

なんかすごくね?

 

父に倣って自身も神学校に進んで学んで行くうち、宗教の厳しい規律や生活に疑問を感じて演劇の道に軌道修正した末路が名監督って、ええのか悪いのかよー分からんわ。

 

そんな事情で本日の映画はタイトルからして「ヨハネの黙示録」の引用ですね、【第七の封印】です。

 

 

 

映画【第七の封印】のあらすじザックリ

十字軍の遠征が終わってまだ間もない頃のスウェーデン。騎士のアントニウス・ブロックとその従者ヨンスは、10年にも渡る無益な遠征から帰国する。そこで彼らが見たのは、黒死病に蹂躙される祖国と、神に救いを求め惑乱する哀れな民衆の姿だった。故郷に辿りつくと同時にアントニウスは、彼の後を追ってきた死神の存在に気付く。

 

 

生きたいのか死にたいのか分からない騎士

10年間にも及ぶ十字軍遠征から祖国スウェーデンに戻ってきた騎士アントニウス・ブロック(マックス・フォン・シドー)。

ゴツゴツとした岩が転がる海辺で眠りから覚め、チェス盤に駒を並べています。傍らにはまだ爆睡中の従者ヨンス(グンナール・ビョルンストランド)。

 

ふと見るとすぐそばに黒いマントを纏った青白い顔の男が立っていました。

【第七の封印】「死」
©The Seventh Seal/第七の封印より引用
アントニウス
誰や?
マントの男
誰てお前…「死」やないか。
朱縫shuhou
ぎゃーっ!

いいですか、まずはこの世界観を把握してくださいよ。

この黒マントの男は頭のおかしいオッサンではなく「死」を具現化した姿なんです。

「死」はアントニウスを連れて行かんと右手を振り上げます。

朱縫shuhou
ほげーっ!
アントニウス

待ってくれ。

自分チェス好っきゃろ?俺を連れて行く前にひと勝負せえへんか?

俺が勝ったら見逃してくれ。

「死」が目の前に迫ってるのにゲームで取引しようとするこの発想。

ないわ~。

【第七の封印】アントニウスとヨンス
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

アントニウスはチェス盤を広げるとどこからともなく現れる「死」と従者ヨンスを伴って、再び10年ぶりの自分の屋敷を目指して歩き始めるのでした。

 

やたらと哲学的な従者ヨンス

命乞いにも似た(「命乞い」なんだろうけどアントニウスがあんまりアタフタしてないんでそんな印象を受けない)申し出をした割には、アントニウスって生きたいんだか死にたいんだかよく分かりません。

【第七の封印】「死」とマックス・フォン・シドー
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

生きている人間のもっとも基本的な欲望として「生きたい」「死にたくない」とは感じるのでしょうが、10年間も無益な戦いに身を置いてきてその欲望自体に疑問を抱いているようです。

神はどこにおわすのか、おわすなら争いが絶えず疫病の蔓延するこの世界の惨状を見て一体何を考えておられるのか。

神の存在を示して欲しい一心で、相手が「死」であろうが悪魔と通じた女であろうが、常に何者かに対して疑問を投げかけながらとつおいつ ・・・・・しています。

 

常時この世の終わりのような儚い表情を浮かべて迷いが見られるアントニウスに対して、陽気に歌う従者ヨンスは自分なりの信念をしっかり持って地に足ついた男。

十字軍の遠征でもスウェーデンに戻ってからもアントニウスと同じような惨状を目にしているはずなのに、この差は一体なんなんでしょうね。

厭世家と楽天家という持って生まれた性分の違いか、心力の違いか。

【第七の封印】従者ヨンス
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

神を探し求めるアントニウスとは対照的に、ヨンスは最後の最後まで「神みたいなもんおるかいな」と言う姿勢を崩しません(「死」を目前にした時でさえも「祈ったって無駄や」とか言ってる)。

同じ生きるならヨンスみたいに生きた方が楽だよね。

 

 

能天気な旅芸人家族

【第七の封印】で唯一希望に満ちた眩しい光を放っているのが旅芸人の家族。

お調子者で夢見がちな夫ヨフ(ニルス・ポッペ)、しっかり者の優しい妻ミア(ビビ・アンデショーン)、そして1歳の息子ミーカエル。

アホの座長(ベティル・アンデルデルイ)はちょっと別。

【第七の封印】旅芸人一座
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

この一家が出てくると画面が一気に春めいて、彼らのように日々感謝して自分が幸せであることを自覚して生きていれば不吉なことも「死」も遠ざかって行くのかも知れない、なんておめでたいことを考えてしまいます。

ヨフなんてマリア様と幼いキリストの幻とか見ちゃうから。

この事実を踏まえるとそういえばこの一家自体が神の使者と取れないこともないですね。

【第七の封印】
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

 

 

「死の舞踏」を踊りながら暗闇へ消える一行

ラストの解釈の仕方は千差万別。

こういった結末の解釈は映画を観た時のその人の心理状態にも大きく左右されます。

【第七の封印】
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

その証拠に以前観た時の私の感想と言えばとにかく「死の舞踏」が怖くて仕方ないというものだったのですが、今回の再視聴で印象に残ったのは「終わるのね」と言って安堵の表情を浮かべるヨンスの妻の姿でした。

朱縫shuhou
死にたい人から見ると、「死」ってどう見えてたんやろう…。

彼女からすれば「死」は神だったのかも?

神はどこだ神はどこだと問い続けてきたアントニウスも、旅芸人一家を「死」から遠ざけられたことで心理的には救われているはずで、そうすると彼を救った「死」もまた神に近い存在でもあるような。

【第七の封印】「死の舞踏」
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

そんな風に考えると「死の舞踏」もなんだか怖くなくなってきた。

ヨフが踊るみんなを嬉しそうに眺めてるしさ。なんかみんなで美味しいお菓子がいっぱいあるとこ行くんだきっと、うふふふふ…。

 

 

映画【第七の封印】の感想一言

朱縫shuhou

タイトルからして宗教色漂ってますけど、それほど重たい映画ではありません。

ヨンスとアントニウスの掛け合いや、妻を寝取った座長を追い回す鍛冶屋など、笑えるシーンもたくさんあります。

 

狂信者軍団と魔女の火あぶりは不気味ですけど。

【第七の封印】
©The Seventh Seal/第七の封印より引用

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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