1990年/アメリカ/監督:ティム・バートン/出演:ジョニー・デップ、ウィノナ・ライダー、ダイアン・ウィースト、アラン・アーキン、ヴィンセント・プライス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
いくらゴシックホラーやマッドサイエンティストが好きだからって、こんな発想普通の人には出てきませんよね。やっぱりティム・バートン監督はちょっとイカれてる。
ものすごい多方面に渡る才能を持つ人だし私も大好きですけど、実際会ったらかなり変や奴だと思う。
かなり変な奴の最高傑作のひとつ、【シザーハンズ】です。
映画【シザーハンズ】のあらすじザックリ
パステルカラーの町並みは実在する
舞台は鮮やかなパステルカラーの家々が建ち並ぶ郊外の小さな町。
町のはずれには(すぐ近くにあるのに)人々から忘れ去られたようにひっそりと、「幽霊屋敷」と呼ばれる高台の城がそびえています。
切り立った崖の上にそびえ立つ真っ黒な城と、その麓から続く愛くるしいパステルカラーの町並み。この景色から醸し出されるのは激アマのホットチョコレートに渋さが売りの山椒をふりかけるような違和感。
まったく融合していない。
でもこれぞティム・バートンの世界観。
この町並みは撮影用のセットではなく、フロリダ州ルッツのティンスミスサークルという住宅地です。こんなにカラフルな町が実在するなんて、アメリカってなんてメルヘンな国なんでしょう。
…と思ったら、このスウィートなパステルカラーだけは映画用に塗り替えているみたいですね。残念。地で行ってて欲しかった。
「25年前の映画「シザーハンズ」のロケ地を現在と比較した写真シリーズ」では、現在の町の姿を映画と同じアングルで画像付きで比較してくれています。現在は映画撮影当時よりかなり植樹が増えて殺風景さが薄まった印象。家や道路はそのままだけど、やっぱりパステルカラーじゃなかったら普通の町並みとあまり変わらないですね。
ティム・バートンが大好きなゴシックホラー度100%の「幽霊屋敷」の方は、ルッツの町のものではなくて映画セットね。当たり前だけども。
“シザーハンズ”エドワード誕生秘話
ハサミの手を持つ“シザーハンズ”エドワード(ジョニー・デップ)は、「幽霊屋敷」に住む発明家(ヴィンセント・プライス)によって造り出された人造人間。
発明家はエドワードにハート型クッキーの心臓を与え命を吹き込み、知識と笑顔を教えました。そしてクリスマスが近づくある日、エドワードに最後のパーツである“手”をプレゼントしてくれます。
ところが年老いた発明家は発作的なものを引き起こし、あっけなく死んでしまいます。
エドワードに“手”を付けてあげることもできないまま…。
て言うかなんでそもそも手をハサミにしたんや。
「ハサミ」って言っても事務バサミとかだけじゃないんですよ?
切れ味抜群の巨大な枝切りバサミみたいなやつも入ってるんですよ?
それも左右に数本ずつ。
もう何をするにもガッチャガチャ。
「手のパーツが無かったからとりあえず付けた」って事情があったとしてもハサミって!
もうちょっとなんか、箸とかスプーンとかあるでしょうに!
…て、思いませんでした?思ったでしょ?
いやいや違うんですよ、エドワードの手がハサミであるのにはちゃんと理由があるんです。
実はエドワードは、元々は「野菜切り刻みマッスィーン」。
その鋭い両手のハサミで、ぎっちょんぎっちょんと野菜(植物?)を切り刻んでいたロボットなんです。
そのロボットに発明家が命を吹き込んだので、ハサミの手の部分だけそのまま残ってしまってたんですね。
もし発明家のチョイスが足がクッキー型のロボットだったら“クッキーフィート”、腕が泡立て器のロボットだったら“ウィスクアームス”が出来上がっていたかも知れません。
“シザーハンズ”が群衆に紛れるとどうなるのか
発明家に先立たれひとり残されたエドワードが住む巨大な城に、ある日親切な女性ペグ・ボッグス(ダイアン・ウィースト)が訪ねてきます。
ペグは孤独なエドワードを不憫に思い、自分の家に招いて一緒に暮らすことを勧めてくれます。
ペグの家で家族写真を見ていたエドワードは、ペグの娘キム(ウィノナ・ライダー)にひと目惚れ。
最初はハサミの手を持つ得体の知れない同居人を気味悪がっていたキムも、少しずつ優しいエドワードに惹かれていきます。
お陰でエドワードはキムの彼氏のジム(アンソニー・マイケル・ホール)のしょーもない恨みを買って結構な八つ当たりを被りますが、この映画でもっとも厄介なのはジムじゃありません。
お前なんか全然小者じゃバーカバーカ。
希少価値と有閑マダムの恐怖
小物のジムなんか比べ物にならないほど手に負えないのは、“希少価値”に対する人間の好奇心と専業主婦が持て余してる時間です。
大した事件もない平和なこの田舎町では、見知らぬ若い男がやってきただけで大騒ぎ(関係ないけどペグが着てるリンゴ柄のワンピースかわいい)。
エドワードが“手がハサミ”の特異体質(「身体障害者」って言われたりもする)だと分かるや町の誰もがちやほやし始めます。TV番組の司会者に至ってはエドワードに向ってズバリ「ハサミの手が無くなったらこんなに騒がれませんよ?」と言ってのけますし。
みんながみんな露骨にエドワードのハサミだけが目当て。
ユニークな対象に群れる人間なんてまるで砂糖に群れる蟻。
さらに悪いことにはこの町の専業主婦は究極に暇を持て余してるんで、その蟻んこ度合いはスーパーマックス。
かと思えば、ひとたびエドワードの存在に疑問を感じようものなら手の平を返し、大挙して“異物”を追い払おうとします。中世の魔女狩りさながらに。
ラストで「エドワードは死んだ」とキムから聞いて初めて我に返る群衆。これほど追い立てておいて、死んだと聞いたら取って付けたように「…可哀想に」といった表情を浮かべる人々。
人って怖いよ。
ツメが甘いお巡りさん
ちょっと言及しておきたいのは、ジムにハメられて窃盗事件を起こした時からエドワードの事を気にかけてくれていたお巡りさん(ディック・アンソニー・ウィリアムズ)について。
お巡りさんは住人たちに言われるままエドワードを城まで追い立て、城の前で空に向けて銃を2回発砲した上で(エドワードを撃ったフリ)、
これで事件は終わりだ!みんな家に帰れ!
(エドワード…早く逃げろよ…)
なんてキザな気遣いを見せるんですが、これってカッコいいような気がしますけど実はかなり中途半端。
だってそのあと住人は誰一人家に帰ることなく城の中へ押し寄せますので。
その頃には自分はもう車でどっか行っちゃってるし、結局なんの解決にもなってない。
もうちょっとキムくらい巧みに追手を欺いたれよ。
映画【シザーハンズ】の感想一言
日本の特撮怪獣「ゴジラ」の熱烈ファンであることでも知られるティム・バートン監督。
ペグの家で最初にゴジラを剪定した時のエドワードは、満塁ホームランを打った選手のように自慢げな表情を浮かべています(この時バックにラジオからの野球の歓声が聞こえてくる)。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。