2005年/アメリカ/監督:アン・リー/出演:ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、アン・ハサウェイ、ミシェル・ウィリアムズ、ランディ・クエイド、リンダ・カーデリーニ、アンナ・ファリス、ケイト・マーラ/第78回アカデミー監督・脚色・作曲賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
LGBTなどジェンダーの多様性がどんどん認められるようになってきた昨今ですが、私の身近にはセクシャルマイノリティの友人知人はいません。
いやもしかしたらいるのかも知れないけどとりあえずカミングアウトされたことはありません。
性的嗜好なんて全然気にしないつもりですけど、実際女友達に本気で告白されたり男友達の恋人が男だったりしたらどんなリアクションしちゃうんだろうって考えることはありますよね。
LGBTがマジョリティ(多数派)になったらどうしよう、とかね。
「彼氏」を友達の「彼氏」に寝取られたり、「嫁はん」が「隣の奥さん」と不倫したり、てもうわけわかんねえな。
禁断の恋に落ちてしまった2人の男性を描いた切ないラブストーリー、【ブロークバック・マウンテン】です。
映画【ブロークバック・マウンテン】のあらすじザックリ
「初めての朝」の気持ちは同じなの?
無口で無愛想だけど笑うとかわいいイニス・デルマー(ヒース・レジャー)と、直情径行で負けん気の強いジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール)は、牧場主のアギーレ(ランディ・クエイド)に雇われ“ブロークバック・マウンテン”の奥地で羊の放牧の仕事に就きます。
たった1つの小型テントから羊を放牧している平野までは馬に乗って往復4時間。夜の間は羊たちが獣に襲われないよう絶えず見張り、朝になればテントに戻って少し休んで、暗くなる前にまた2時間かけて羊のもとへ。
過酷な労働を強いられるなか少しずつ打ち解けていった2人は、ある夜ついにまぐわってしまいます。
そうそう、2人は割とあっさり一線を越えちゃうんですよね。
勢いで、みたいな。
でもあとで詳しく書きますけど、ジャックの方は恐らくかなり早い段階からイニスをロックオンしているんです。だからまったく脈絡がないってわけでもない。
イニスはとにかく感情を表に出さないから読めないんだけど。
「初めての朝」の描写が好きです。
「意思確認する前に恋人未満の人と寝てしまった朝」ね。
これ、男でも女でも一緒でしょ?
なんとなくとても幸せな気分で目覚めるけど、意識がはっきりしてくるごとに「ちょっと待って、これで良かったん?」って心臓がバクバクしてきますやんか。白々しく今後の進展については何も期待してない素振りしてみたりとか。
そんで傷つくのが怖いから先手を打っていらんこと口走っちゃったりするでしょ?「夕べのことは気にせんといて」とかってね?
そんなセリフをイニスがまさしく口にした時、「男と女」と「男同士」と云う違いはあっても「初めての朝」の気持ちは一緒なんだなって安心したものです。
「この映画はゲイポルノじゃなくて“普通のラブストーリー”として観ていいんだ」ってね。
女の求める愛との違い
まあ「普通のラブストーリー」と言ったとてどうしても超えられない男女の隔たりはあるんですけど。
例えば「好き」という感情ひとつ取っても男女の恋愛と男同士(差し当たってイニスとジャックに関して)の恋愛では表現方法が全然違う。
女ってすぐ「私のこと好き?」って聞きよるでしょ?
大体の男はこれを聞くと不機嫌になります。
「言わな分からへんの?」って返してくれる男はまだ優しい方、ほとんどの男は無視します。これを聞かれた瞬間に百年の恋から冷める男もいます。
一方イニスとジャックは、作中一度も「俺のこと好きか?」なんて聞かないし、自分から「愛してる」とも口にしません。堪え切れなくなったジャックが一度だけ「お前(=イニス)が恋しい」と吐露するのみ。
それでも「好き?」「うん好きだよ!」「ありがと!私も大好き!」とか毎日言い合ってるうんこちゃんカップルよりよっぽど愛し合っていることが伝わってきます。
男同士だと「好きって言ってよ!」みたいな低レベルのケンカが少なそうで素直に羨ましい。
ジャックはイニスじゃなくても良かったの?
イニスはアルマ(ミシェル・ウィリアムズ)と、ジャックはラリーン(アン・ハサウェイ)と。
それぞれ別の女性と結婚し子をもうけ家族を持っても離れることができない2人。
同性愛者が排斥されていた1960年代にタブーを犯してまで想いを貫くなんて、よほど愛していなければできることでもないでしょう。
でもさあ、ふと思うんですけど、ジャックって果たしてイニスじゃないとダメだったのかな?
イニスは少年時代のトラウマもあるし、相手がジャックでなければ男性を愛することはなかったでしょうが、ジャックはどうやらもともとゲイ寄りなんですよね。ブロークバック・マウンテンで仕事を始めた当初からイニスを意識してるし。
いや、何やったらアギーレのトレーラーへ仕事をもらいに行った時点ですでにパートナーを物色してたのかも知れない。
それにジャックは「本命であるイニスに会えないから」って大義名分を振りかざしてメキシコの男娼やラリーンの旧友の旦那とヤっちゃってるでしょ?イニス以外の男とも寝られるんじゃん。
これは男同士だからどうとか男女間ではこうとか云う問題じゃあないんだけどさあ。
片やイニスはもともと浮気とかできるタイプじゃないし(ノンケだし)、「俺の人生はお前のせいでガタガタや!」って泣き崩れてしまうほどにジャック一筋なワケですよ。
ちょっとジャック。
自分の気持ちばっかり押し付けてないでさあ、手ぇ出したんなら手ぇ出したでもっと大事にしてやんなよ、切ないわ。
映画【ブロークバック・マウンテン】の感想一言
夫の浮気相手が男だったアルマも、夫の浮気に気付いてんのか気付いてないのかよく分からないラリーンも、大好きな恋人になかなか会えないジャックも、みんなホントに気の毒だけど、やっぱり罪悪感にさいなまれつつもジャックを愛することを止められない真面目で繊細なイニスが一番心痛いんですよね。
あの男らしいマスクにデカい身体でイニスの内面の繊細さを体現できる稀有な俳優ヒース・レジャー。何度観ても早すぎる死が惜しまれます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。