【或る殺人】のジェームズ・ステュアート

映画【或る殺人】あらすじと観た感想。法廷で「パンティ」連呼

【或る殺人】のジェームズ・ステュアート

1959年/アメリカ/監督:オットー・プレミンジャー/出演:ジェームズ・ステュアート、リー・レミック、ベン・ギャザラ、アーサー・オコンネル、ジョージ・C・スコット、キャスリン・グラント

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

トンズラしたマニオン夫妻
©Anatomy of a Murder/或る殺人より引用

近年で言えばジョディ・フォスター主演の【告発の行方】に似た感じの作品。

未だに女性がレイプや痴漢といった性犯罪に遭おうものならよく言われますけどね、「女の方にも露出の高い服着たり色目使ったり落ち度があったんやろ」ってね。

じゃあ体の線が出る服着て夜遅くに出歩いてる色気ムンムンの女性は襲い掛かられても仕方ないって言うんかい。

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【告発の行方】ジョディ・フォスター

そういった倫理的な問題に加えて、1959年の公開当時、この映画には他に大きな意味がありました。

ヘイズ・コードによりタブーとされていた言葉がこともあろうに法廷で連呼されるという先進的映画、【或る殺人】です。

参考 ヘイズ・コード(映画製作倫理規定、プロダクション・コード)=1934年から1968年まで導入されていたアメリカ合衆国の映画における検閲制度。「キスは3秒以内」など厳しい制約があった。

 

 

 

映画【或る殺人】のあらすじザックリ

ポール・ビーグラーは検事を辞め弁護士に転じたものの、依頼がほとんどなく、魚釣りをして日々を悶々と過ごしていた。そんな彼のもとにローラ・マニオンという女性から電話がかかってくる。ローラは自分をレイプしたバーニー・クウィルという男を射殺した夫の弁護を依頼してきたのだ。

 

 

妻を犯した相手を殺害した夫の弁護

検事を辞めて弁護士になってからというもの、もっぱら釣りやジャズに興じることが多くなっていたポール・ビーグラー(ジェームズ・ステュアート)。

彼の元に、妻をレイプした酒場の店主バーニー・クウィルの殺害容疑で逮捕されたマニオン中尉(ベン・ギャザラ)の弁護を依頼する電話がかかってきます。

ローラ・マニオンからの弁護依頼の電話を受けるポール
©Anatomy of a Murder/或る殺人より引用

依頼主はマニオン中尉の妻でレイプされた張本人ローラ(リー・レミック)。

弁護士仲間で親友でもあるパーネル(アーサー・オコンネル)の勧めもあって、ポールはこれを引き受けます。

 

「これじゃレイプされてもおかしくない」

しかし実際ローラという女性に会ってみると、ド素人の私でも裁判に勝つのは難しいような気がしてきます。

ローラはなんと言いますか…、

チャラチャラしているんです。

チャラチャラしているローラと夫のマニオン中尉
©Anatomy of a Murder/或る殺人より引用

胸やお尻の形が丸わかりの体にフィットする服を着て、男に送る艶っぽい視線、異様に近い距離感、親しみ溢れる笑顔。そして軽薄だと思われがちな輝くばかりのブロンドヘアー。

ダメだこれは。

ジョージ・C・スコット扮する名うてのダンサー検事に説得力のあるツッコミどころを与えているも同然。

ダンサー検事
こんなに挑発的な女性はレイプされても仕方ないんじゃね?

「レイプされても仕方がない」は極端だとしても、

ダンサー検事
和姦(合意の上)っしょ?

と言われてしまうのは目に見えている。

ダンサー検事を演じるジョージ・C・スコット
©Anatomy of a Murder/或る殺人より引用

ローラの風貌や言動が不利に働くことなど一目瞭然なので、ポールはともかく裁判が終わるまででも生活態度や服装を改めるようにローラを叱責します。

お陰でローラは地味なスーツと帽子に黒ぶち眼鏡という出で立ちで法廷に現れますが、焼け石に水。

ダンサー検事は酒場のバーテンらの証言からローラの日常的な挑発的な言動を引き出し、陪審員たちに同情の余地がないことを印象付けます。

クウィルの酒場を訪れるポール
©Anatomy of a Murder/或る殺人より引用

 

当時タブーとされていた「パンティ」連呼

裁判ではローラが狂言ではなく本当にクウィルに無理矢理レイプされたのかどうかが争点になってきます。

検察側の狙いは、「挑発的なローラと“合意の上”で行為に及んだクウィルを嫉妬深いマニオン中尉が殺した」とすること。

そこで重要になってくるのが現場に残された証拠品である訳ですが、ローラは事件当時スカートの下にパンティを履いていて、レイプされる際にクウィルに引き裂かれたと証言しています。しかし現場からは肝心な「引き裂かれたパンティ」が出てきていません。

検察側はこの事実に着目し、「普段からローラはマニオン中尉が就寝してから“準備万端(ノーパン)”で酒場に出かけては男を漁っていたのではないか」と迫ります。

ローラに迫るダンサー検事
©Anatomy of a Murder/或る殺人より引用

事件が事件であるだけに、ヘイズ・コードによって当時禁止されていた単語が全編にわたって遠慮なく使われている【或る殺人】ですが、重要な局面となるこの事件当夜に関する弁論は特に赤裸々で、パンティpanty精液spermと言った単語がバンバン発せられます。

あんまりパンティパンティと連呼するもので傍聴席から笑いが漏れ、裁判官が「パンティと聞いて笑わないように」と注意するほど。

ジェームズ・ステュアートはまだコミカルな雰囲気を持ってるんでいいんですけど、強面のジョージ・C・スコットが「パンティパンティ」言ってるのにはやっぱり失笑。

 

てかそもそも【或る殺人】は法廷での論争そのものではなく、この放送禁止用語を連呼すること だけ に大きな意味があるような気がします。(どんな映画や)

 

 

映画【或る殺人】の感想一言

朱縫shuhou

まあまあ長い映画であるにもかかわらず、結末事態はなんのひねりも驚きもありません。

見たまんま。

何やったら裁判後にマニオン夫妻がトンズラすることまで読めてしまう。

 

少々拍子抜け感はありますがしかし、当時【或る殺人】が映画界に与えた功績は計り知れないものだったんでしょうね。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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