【ラストエンペラー】紫禁城

映画【ラストエンペラー】あらすじと観た感想。史実との違いと原作など

1987年/イタリア、中華人民共和国、イギリス/監督:ベルナルド・ベルトルッチ/出演:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、英若誠、ヴィクター・ウォン、デニス・ダン、リチャード・ヴゥ/第60回アカデミー作品・監督・撮影・脚色・編集・録音・衣裳デザイン・美術・作曲賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

溥儀を演じたジョン・ローン
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

エンペラー=「皇帝」

ばばーん!

単語だけでなんかかっこいいですよね。

 

【ラストエンペラー】

ばばーん!

 

…ところがどっこい。

記事にするにあたって久しぶりに観てみた感想をまず率直に。

朱縫shuhou

あれ…?

こんなにおもろなかったっけ…?

今日はもう、イタリア・中国・イギリス合同製作のスペクタクル巨編に疑問を呈しますわいな。

 

 

映画【ラスト・エンペラー】のあらすじザックリ

1908年、北京。清朝の最高実力者・西太后は、溥儀を紫禁城へ呼び出し、溥儀を皇帝に指名して崩御する。1950年、満州国の崩壊により、中華人民共和国に送還された「戦犯」達がごった返すハルビン駅。1人の男が洗面所で自殺を試みる。この男こそ清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀あいしんかくらふぎその人であった。

 

 

原作と史実との違いについて

原作は清朝及び満州国最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の自伝「わが半生」。

他に【ラストエンペラー】にかかわる著書としては、溥儀の家庭教師として紫禁城に出入りしていたレジナルド・ジョンストンの「紫禁城の黄昏」があります。

実在の人物である愛新覚羅溥儀の生涯を描いた伝記映画ですが、史実との相違点についてはWikipediaの【ラストエンペラー】のページに詳細に記載されています。

この内容がまあ~、編集者に悪意があるのかと疑ってしまうくらい直球で正味爆笑ものでございまして、せっかくなので以下に引用いたします。

  • ソ連軍の捕虜となった溥儀が自殺未遂を起こした事実はない
  • 西太后が溥儀を召見したのは1908年10月20日で、崩御したのはそれから26日後の11月15日である(映画では召見中に崩御)
  • 西太后の崩御シーンはセットによる撮影で、実際に西太后が崩御したのは紫禁城ではなく、西苑(現在の中南海)に建てられた儀鸞殿(現・懐仁堂)内の福昌殿。龍が柱に巻き付いた内装なども美術チームの創作
  • 溥儀が紫禁城から城外へ出ようと屋根に上った際に頭を打ち、これをきっかけにメガネをかけるようになったのは史実ではない
  • 婉容が溥儀の年上に描かれているが、史実では2人とも1906年生まれの同い年
  • 婉容が川島芳子と同性愛関係にあったように描かれているが、このような事実はない
  • ジョンストンが帰国する際、溥儀が自ら天津港まで見送った事実はない。史実では、ジョンストンが天津の溥儀寓居「静園」を訪れ暇乞いをした。
  • 史実の嵯峨浩は溥儀の満州国皇帝即位関連行事に参列していない。即位式は1934年に挙行され、溥傑と浩の結婚は1937年。
  • 舞踏会シーンを撮影した満州国皇宮の同徳殿は1938年竣工で、溥儀の即位当時には存在しない
  • 甘粕正彦が溥儀の監視役となっているが、実際この役目は吉岡安直が行っていた
  • 甘粕正彦が川島芳子と恋愛関係にあったように描かれているが、このような事実はない
  • 甘粕正彦は切腹して自決する筋書きになっていたが、これに強い違和感を持った坂本が監督を説得し、拳銃自殺に変更された。史実上の甘粕は服毒自殺した。
  • 張景恵は麻薬取引に暗躍した実績を買われて満州国の国務院総理になったという設定だが、このような事実はない
  • 張景恵が戦犯刑務所内で長年の麻薬の吸引により廃人同然になったと描かれているが、このような事実はない
  • 溥儀より先に溥傑が戦犯刑務所より出所していたが、このことには触れられていない
  • 晩年の溥儀が中国人民政治協商会議全国委員を務めたことには一切触れられず、庭師として死んだことになっている

出典:Wikipedia

並べてみるとかなり脚色が濃いことがわかりますよね。

ドラマティックに作り上げようと思えばやむを得ないのでしょうが。

 

 

清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の伝記

第60回アカデミー賞において、作品・監督・撮影・脚色・編集・録音・衣裳デザイン・美術・作曲賞と、なんと9部門において受賞してるはずなんですが、個人的に納得できるのは衣裳デザイン賞と作曲賞の2部門だけ。

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3歳で本当の母親から引き離された溥儀ふぎジョン・ローン)が連れてこられた紫禁城の情景は圧巻だし、城内で生活する人々の衣装も豪華で細部にまでこだわられていて素晴らしい。

なんとも言えないアンニュイなテーマ曲も胸にジーンとくるのです…が。

3歳の時の溥儀
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

9部門じゅしょう…?

正気か?

 

 

荘厳な紫禁城の映像と妖怪じみた西太后とプチ溥儀は良い

3歳のプチ溥儀が紫禁城に連れて来られてすぐ西太后(リサ・ルー)と会話するシーンは、これからの物語のスケール感を表しているようで密かに心臓バクバク。

西太后なんて魔女みたい…いやもう魔女。悪の化身。なんやったら地球外生命体。

変なお香をたかれてる西太后
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

画面を通して観てたってめっちゃ怖くて おそれ多いのに、その御前を「家に帰りた~い!」とか言いながらペタペタと走り回る無垢で無邪気なプチ溥儀。

朱縫shuhou

こんなに小さい頃に皇帝にされて、自由を奪われてしまうのかあ…。

この辺りはまだまだ感情移入することができたんですけどね。

 

 

溥儀を始め、キャラクターづけがよく分からない

その後溥儀は、時代に取り残された権力者へと成長していく訳ですが、歴史的事実を表現することに重きを置き過ぎたためか、成長過程での彼の複雑な心情がまったく伝わってきません

 

少年期くらいまではまだ、「外に行きたいんやなー」とか「好奇心旺盛よねー」とか、色々読み取ることができます。

ジョンストンと勉強をする溥儀
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

しかし青年期移行、溥儀という人物が己の地位に慢心した無能な権力者であるのか、権力など無用で自由を求めるアウトローなのか、深い慈愛の心を持った人格者なのか、何がしたいのかどんな人物であるのかさっぱり分かりません。

 

満州に行ったのは日本側に無理やり連れて行かれたからだと証言したかと思えば、再び皇帝に返り咲いてやるぜ~と野心をたぎらせてみたり、地位を追われ自殺未遂をしたかと思えば、収容所で召使だった男に偉そうに靴を履かせてみたり、キャラが安定しないんです。

お陰で鑑賞後に思い出すのが紫禁城の荘厳な景色だけという最悪の事態におちいってしまいます。

 

坂本龍一扮する甘粕氏もちょっと何言ってるか分からない

溥儀も然り、坂本龍一扮する甘粕あまかす氏然りですよ。

坂本龍一扮する甘粕さん
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

無口で物静かな男性なのかと思ってたら突然、「アジアは日本のもんじゃおらーっ!」といきり立ち、軍国主義をぶちかましてきたりする。

実際の甘粕正彦さんは全然こんな人物ではなかったみたいですね。

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これに関してはしかし、脚色過多というよりは坂本龍一の演技力が問題なのかも知れませんけど。

大体【戦場のメリークリスマス】でもそうでしたが、坂本龍一って滑舌悪くてボソボソしゃべるんで何言ってるか全然分からない。【ラスト・エンペラー】ではまだセリフが少なくて良かった方。

 

その甘粕氏と意味深に手を絡め合うパイロット風の胡散臭い女の存在も意味不明

パイロット風の女
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

なんやこいつは。

川島芳子(マギー・ハン)です。

 

溥儀の生涯の友となる【アラビアのロレンス】のロレンス役で有名なピーター・オトゥール扮する家庭教師のジョンストン先生にしても、どうしてこれほど溥儀に慕われているのかが消化不足

紫禁城の外の世界の雑誌を与え、自転車に乗せてあげ、溥儀の孤独な少年時代の唯一の友であることは間違いないのですが、それにしたって生涯の友となる説得力に欠ける…。

【ラストエンペラー】ピーター・オトゥール
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用
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かつて自分が収容されていた戦犯収容所の所長がデモ隊に拘束されているのを見た溥儀が、「この人はいい先生なんだ!」と庇う場面も、なんだか唐突に尊敬しちゃった感じ。

身を挺して守ろうとするに至った過程が薄いんですよね。

「所長とそんなに親密になる出来事って、何かあったっけ?」と視聴者が置いて行かれます。

 

それでも年老いた溥儀が一般公開されている紫禁城を訪れるラストはじーんときましたけども。

紫禁城を訪れた溥儀
©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用

 

 

映画【ラスト・エンペラー】の感想一言

朱縫shuhou

冒頭にも書いた通り、再視聴してみて最初に観た時との印象がガラリと変わってしまっていたのには自分でもビックリしました。

 

試しに何年か置いて2回以上観てみてください。

私が言ってる意味が分かっていただけると思います。

 

「なんとなく壮大なスケール感」に騙されてはいけない映画です。

 

>> 翌年(第61回)のアカデミー最優秀作品賞はこれ!

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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