2009年/ドイツ、オーストリア、フランス/監督:シェリー・ホーマン/出演:リヤ・ケベデ、サリー・ホーキンス、クレイグ・パーキンソン、ミーラ・サイアル
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
衝撃すぎてある意味2度と観たくない映画です。
でもこういう映画こそ色んな人が観るといいなあと思います。
原作はソマリア出身のスーパーモデル、ワリス・ディリーの自伝「砂漠の女ディリー」。
国際社会でのサクセスストーリーの影に潜む今も残る無意味な慣習を、「映画」という娯楽に投影してくれた人達の努力に感謝します。ぜひご覧下さい。
【デザート・フラワー】です。
映画【デザート・フラワー】のあらすじザックリ
ソマリアの大自然を生きる遊牧民の女性ワリス・ディリー
【デザート・フラワー】の主人公、アフリカの大地で家畜を追い住居を転々とする遊牧民のワリス・ディリー(リヤ・ケベデ)は実在の人物。
多少の脚色・変更はありますが物語の大筋は事実。
彼女は平和な国日本に生まれ育った私には想像だにできない壮絶な半生を送ります。
父も母も健在、兄弟たちにも慕われ、家畜たちの世話をし、過酷な環境の中でも健やかに暮らしていたワリスは、13歳のある日、60代の爺さんと結婚させられることになってしまいます。
しかも4番目の妻として。
…はい?
愛する母も兄弟たちも残し、1人広大な砂漠を越える決心をするワリス。13歳の少女が、手ぶらでですよ?
奇跡的に母方の祖母の元にたどり着いたワリスは、親戚宅を転々とした後、ロンドンのソマリア大使館でメイドとして働けることになります。しかしソマリア大使が帰国する際、一緒に連れ戻されそうになり再び逃亡。
住むところも職もないロンドンでホームレスとなり、ゴミ箱から食べ物を漁って食いつなぎます。
ある日ワリスは、ふらりと入ったブティックで、のちに自分のことを「妹」とまで言ってくれる女性マリリン(サリー・ホーキンス)と運命的な出会いを果たします。
マリリンのツテで仕事にもありつけたワリスを待っていたのは、さらに運命的な出会い。
ファーストフード店で懸命に働いていたワリスは、お店に客として訪れていた超有名キャメラマンのテリー・ドナルドソン(ティモシー・スポール)の目に止まり、モデルの道を歩み始めるのです。
モデルとしてのキャリアがスタートしてからは、持ち前の美貌とスタイルで、瞬く間にスターへの階段を駆け上がっていくワリス。
ソマリアから大事に持ってきたパスポートがゴミ同然で使えなかったり、ビザを取るために偽装結婚したりと騒動は尽きませんが、すべてマリリンや事務所の協力を得て乗り越えます。
そしてついに彼女はニューヨークのショーに立ち、スーパーモデルの仲間入り。
スターとなったワリスは雑誌の表紙を飾り、TVでドキュメント番組が組まれるほど有名になっていきます。
雑誌の表紙を飾ったワリスの自慢をするマリリンがかわいい。
ワリスの「人生を変えた1日」
そんな中、ある雑誌社から「わたしの人生を変えた1日」という内容でワリスに取材依頼がきます。
記者に「あなたの人生を変えた日はファーストフード店でカメラマンにスカウトされた日よね?」と聞かれ、静かに口を開くワリス。
女子割礼(女性器切除)について
ワリスの人生を変えた日。
ここからワリスのソマリアでの幼少期の回想に入ります。
ワリスは3歳(実際は5歳)の時に、今もアフリカの数か国を中心に残る慣習「女性器切除」を受けさせられていました。
女性器切除(female genital mutilation、以下FGM)とは、アフリカや中東、アジアの一部の国々で行われている、女性の性器の一部を切除してしまう慣習です。きわめて強い社会的な規範に支えられ、家族はその害を知っていても自分の娘にFGMを受けさせていることが少なくありません。
出典:unicef「女性器切除(FGM)」
【デザート・フラワー】が本当に人々に伝えたいことは、アフリカの砂漠を越えた遊牧民の少女がスーパーモデルになったシンデレラストーリーではなく、この無意味な慣習によって女性が一体何を無くしその後の人生にどんな影響を与えるかなんです。
この無意味な悪しき慣習を止めさせるべく、勇気を持って声を上げた1人のソマリア人女性の半生を、彼女に共感した人々が「映画」という娯楽を通して世界に発信したメッセージなんです。
遠い昔のことではなくて。
アフリカの一部の国では今も1日に約5500人の少女が「女性器切除」を受けるそうです。
病院で麻酔を投与されての場合はまだいい方で、ほとんどは麻酔も切除後のケアもなく、出血多量や感染症で亡くなる少女があとを絶たない。
「痛い!やめて!」と泣き叫ぶ3歳の幼女を押さえつけて性器を切り取る手術(手術などと呼べる代物ではないですが)を施さなければならないだなんて、演技だと分かっていても震えるくらい恐ろしいです。
映画【デザート・フラワー】の感想
割礼 についてはユニセフのFGMのページに詳しく書かれています。
「日本人に産まれてよかった」なんて手放しで喜ぶことはできません。こんな幸せな国に産まれたことに感謝しつつ、せっかくだから少し学んでみましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。
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