1979年/アメリカ/監督:ロバート・ベントン/出演:ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー、ジェーン・アレクサンダー、ハワード・ダフ、ジョージ・コー、ジョベス・ウィリアムズ/第52回アカデミー作品・監督・脚色・主演男優・助演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

昔、この映画のタイトルは【クレイマー、クレイマー】なんだと思っていました。
いや【クレイマー、クレイマー】で合ってるんですけど、邦題じゃなくて原題。
原題も同じ、【kramer,kramer】だと思ってたんです。動物でも呼ぶ掛け声かなんかかいなみたいな。
ところが映画のクレジットを見てびっくりですよ。
【Kramer vs. Kramer】となっているじゃありませんか!
なんや原題めっちゃかっこええやん!
【Mr. & Mrs. Smith】なんて足元にも及ばないセンスの良さ(※個人の感想)!
邦題も【Kramer vs. Kramer】でええやん!
…て一瞬頭をよぎりましたが一転、日本人が慣れない英語でタイトルを口にすることを想像すると、【くれいまーばーさすくれいまー】と、途端に野暮ったくなるので、やっぱり邦題は「vs.」を省略してすっきりまとめて正解だったと思います。
映画【クレイマー、クレイマー】のあらすじザックリ
タイトルの意味「クレイマーさん対クレイマーさん」
物語はジョアンナ・クレイマー(メリル・ストリープ)が何やら思いつめた表情で旅行鞄に荷物を詰め込むシーンから始まります。

そこへ出世が濃厚となり浮かれポンチ状態のテッド・クレイマー(ダスティン・ホフマン)が帰宅。大きな仕事を任されたことを伝えようとするテッドをさえぎって、ジョアンナは言います。

別れたいねん。
私が使ってた鍵これ、置いてくで。
あとクレジットカード2枚と、クリーニングの引換券。自分で取っておいでや。ここ置いたよ。
ほな。
テッド呆然。
一応引き止めてはみるもののジョアンナの決意は固く、そのまま家を出て行ってしまいます。
ここはとりあえず大多数の母親のハラワタが煮えくり返る場面だと思います。だってこの人、息子のビリー(ジャスティン・ヘンリー)まで置き去りにして出て行くんですもん。

夫が気に入らんにしても子供は連れて行ったらんかい。
余りにも突然すぎてテッドですら何が起こったのか理解しがたい状況。ましてや幼いビリーなんて言わずもがな。最初は「お父さんがいるから」とテッドに励まされ頑張りますが、日に日に元気がなくなっていきます。
極めつけにこのセリフ。

いかなる理由があろうとも子供にこんなこと言わせたらあかんやろがあーっ!
ファッキンジョアンナ!
フレンチトーストを作れない夫と平穏をぶち壊す妻
まあ実際子供がいようがいまいが妻に出て行かれた仕事人間の夫なんてこんなもんですわね。何がどこに置いてあるか、それすらわかろうはずもありませんよ。
朝食にフレンチトーストを作ろうとしてキッチンで大騒ぎになる場面は特に有名ですね。

妻側の立場としては、この辺りは「ざまあみろ」とニヤついてしまうシーンではあるのですが。
しかし子供を置いて出て行ってはいかん。絶対いかん。
さて、仕事よりもビリーのことを考えるようになったテッドは、大事なクライアントを逃がしてしまい、会社を解雇されてしまいます。しかし後のジョアンナとの裁判に勝つためには無職では話になりません。テッドは年収は大幅にダウンするものの即採用してくれる会社を見つけ、幸運にもすぐに再就職することができました。

ジョアンナが出て行ってビリーと2人で暮らすようになってからというもの、出世の鬼だったテッドはすっかり変わりました。
これまでの生き甲斐だった「仕事」と「出世」を失ってもなんのその。
公園で初めて1人で自転車に乗れた息子と、その息子の写真を撮る父親の仲睦まじい光景。子供が1人で何かを出来るようになった瞬間というのは本当に、自分の出世なんかより何百倍嬉しいことかよ。
こうして父と息子、2人きりの生活もやっと落ち着きを見せてきた頃、出て行った時と同様にジョアンナが突如テッドの前に現れます。

ビリーと暮らしたいの。
はあ?
さすが名女優メリル・ストリープ、観ててイライラさせる演技まで完璧。
親権争いで「母親」に勝つことはできないの?
結局ジョアンナの申し入れは裁判にまでもつれ込み、【クレイマー、クレイマー】の後半は法廷劇となります。裁判はテッドの弁護士が唐突に子供を置いて家を出たジョアンナの精神的弱さを指摘し、テッド側に有利に動くかと思われました。

しかしそうは問屋が卸さない。
ジョアンナの弁護士はテッドの年収が著しく落ちた理由を尋ねます。


解雇やない!
会社の上層部と意見の相違があったんや…。
この答弁について、ジョアンナの弁護士は「解雇」という点で裁判官の心証を悪くしようとして、テッドはそれを避けようとしているわけですが、「解雇は解雇でもジョアンナがビリーを捨てて出て行ったせいで仕事に支障が出て解雇されたんやろがっ!」という方向へは持って行けなかったんですかね?
「仕事もおろそかにしてしまうほどビリーを大事にしとったんじゃ!」ってことが言いたいんですけど、無理なの?どうしても勝てないの?
ラストがしびれる映画【クレイマー、クレイマー】の感想一言

ラストシーンは唐突だけど抜群に爽快。
父親として立派に成長したテッドも、振り回されて可哀想なビリーも、小憎たらしいジョアンナも、いっぺんにみんなが愛しくなりますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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