1956年/アメリカ/監督:ジョン・フォード/出演:ジョン・ウェイン、ジェフリー・ハンター、ナタリー・ウッド、ワード・ボンド、ヴェラ・マイルズ、ヘンリー・ブランドン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

予てより当サイト「天衣無縫に映画をつづる」で一貫して主張しまくっていますが、私が世界でもっとも好きな俳優はジャック・ニコルソンです。
続いてマーロン・ブランド、ジーン・ハックマン、ポール・ニューマンなど…。
ジョン・ウェインも好きですけど5位以内には入りません。
しかし「ある部分」に特化するとダントツでジョン・ウェインが一番だと思っています。
それは「声」。
声だけで判定するならダントツ1位。
なんかええ感じのα波でも出てるんでしょうか、いつまでも聞いていたいようなシブくて深みのある心地いい声。ジョン・ウェインの映画だけは絶対に吹き替えでは観ません。
是非字幕版でご覧ください。
ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演による西部劇映画の金字塔、【捜索者】です。
映画【捜索者】のあらすじザックリ
テキサスの荒野、頑固な主人公、野蛮なインディアン…「ザ・西部劇」!
南北戦争からしばらく経った頃。
娘2人と息子1人の3人の子を持つ夫婦の元を、夫アーロンの弟イーサン・エドワーズ(ジョン・ウェイン)が数年ぶりに訪ねてきます。
久しぶりの叔父の帰還に沸き立つ子供たち、プラス家族同然に暮らしているチェロキー族の血を引く青年マーチン(ジェフリー・ハンター)。

イーサンは歓待を受けますが、のっけから大人たちの様子がなんだかちょっとおかしい。
数年ぶりだというのに兄のアーロンの喜びようも中途半端だし、兄嫁のマーサのぎこちなさもイーサンの居心地の悪さも見え見え。
それもそのはずで、映画では一切言及されませんがイーサンとマーサは原作小説では昔恋人同士だった設定。イーサンがやたらに優しくマーサの額にキスしたり、マーサが隠れてイーサンの外套を愛おしそうになでていたり、2人の恋の炎は完全に燃え尽きている訳でもなさそう。
「大根役者」と言われることが多いジョン・ウェインですが、この辺りの気持ちを隠しきれない切ない演技はすごく良かったですけどね。
個人的にもうちょい掘り下げて欲しかったとこではあります。
気が遠くなる広さのテキサスの大地
するとアーロン宅にまたも来客が。地域を取り仕切る警備隊大尉兼牧師のクレイトン(ワード・ボンド)の一行です。
近所の牧場の牛が盗まれたため犯人追跡に駆り出されるイーサンとマーチン。
牛泥棒を追ってしばらく進むと盗まれた牛の死体がゴロゴロ…。

なんかおかしいぞ…。
牛泥棒はカモフラージュで、狙いは手薄になった民家なんちゃうか!
急いで戻ろうとしたって、すでに家からはかなり離れてしまってます。

そない慌てて帰ったってもう無理や。
40マイルも来てしもてるぞ。
40マイル?
1マイル約1.6キロやから…約64キロ!!
競走馬は全力疾走して時速70キロ以上は出せるみたいだけど、持久力の問題もあるし少なく見積もっても1時間以上はかかるじゃん!
うおー!
テキサス!
広大!
頑固すぎる一匹狼イーサン・エドワーズ
警備隊らが着いた頃にはアーロン宅は焼き払われていました。
焼け跡の中からはアーロンとマーサ、息子の遺体が…。姿の見えない2人の姉妹だけはコマンチ族にさらわれた模様。
警備隊とイーサンとマーチン、そして姉の恋人ブラッド(ハリー・ケリー・ジュニア)らがコマンチ族を追跡しますが、イーサンのワンマンと衝突したクレイトン牧師率いる警備隊は離脱。
頑固なおっさんと若造2人との姉妹捜索の旅が始まります。

イーサンはヒーローではあるのですが今改めて観るとやっぱりかなりぶっきらぼうで不愛想で時代錯誤。男が優しい言葉をかけたり弱音を吐いたらあかんかった時代なんですかね。
加えてどないしようもない人種差別主義者。
とにかくインディアンへの憎悪が激しくて、せっかく探し出した妹デビー(ナタリー・ウッド)がコマンチ族の首領の妻になったと知るやなんと、殺してしまおうとする。



どけマーチン。
デビーはもう白人やない。
5年も探し続けたのにですよ?!

極端!!
それでも婚約者であるルーシーが殺害されたことを知って自暴自棄になりコマンチ族のキャンプに単身乗り込んで犬死にするブラッドよりは断然良いですけど。
野蛮に描かれてたステレオタイプのインディアン
姉妹をさらって5年も逃亡し続けたインディアン(コマンチ族)や、商談の末にマーチンの妻となってしまう友好的なインディアンなど、西部劇につきもののステレオタイプの先住民もドッチャリ出てきます。

「ウォホホホホ~!」と馬上から奇声を上げて荒野を駆け抜ける姿は分かっていてもやっぱり強烈。
しかし最強の敵となるはずだった酋長スカー(ヘンリー・ブランドン)がイーサンと一騎打ちすることなくマーチンに拳銃で撃たれて絶命する下りは拍子抜けました。

とどめ刺すのんお前か~い。
映画【捜索者】の感想一言
誰もがもう諦めろと助言する中で、たった一人デビーの奪還を諦めず、見事に本懐を遂げたイーサン。
なのにどう転んでも何年経っても本質は“一匹狼”で、デビーやマーチンの帰還に沸く家族の輪にも加わることができない不器用な男を捉えたラストのカットが哀しくも清々しい映画です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。