1965年/フランス、イタリア/監督:ジャン=リュック・ゴダール/出演:ジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナ、グラッツィラ・カルヴァーニ、ロジェ・デュトワ、ハンス・メイヤー、サミュエル・フラー、ジャン=ピエール・レオ
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

1950年代末~1960年代初めにかけてフランスで起こった新人監督らによる映画運動ヌーヴェル・ヴァーグの代表作。
主人公の“ピエロ”ことフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)が顔一面に鮮やかな空色のペンキを塗りたくり、真っ赤なダイナマイトと真っ黄色のダイナマイトを両手に持って浮かれるラストが実にトリコローリーな映画、【気狂いピエロ】です。
タイトルは「きぐるいピエロ」ではなく「きちがいピエロ」と読みます。
映画【気狂いピエロ】のあらすじザックリ
【気狂いピエロ】の謎と私的解説、と言うか解釈
それほど愛してもいない女性と結婚して一児をもうけたフェルディナン・グリフォン(ジャン=ポール・ベルモンド)。

時間ギリギリになってもまだ行くのを躊躇するほど退屈なパーティもそこそこに、会場に妻を残して一人自宅に戻ったフェルディナンは、椅子に座ったまま眠り込んでしまっているベビーシッターの女性に声をかけます。


送ってあげてる車の中で、ベビーシッターのマリアンヌ(アンナ・カリーナ)とフェルディナンは実は5年前に付き合っていたことが明かされます。

死ぬほど退屈な結婚生活に辟易していたフェルディナンは、そのままマリアンヌとあてのない恋の逃避行に旅立つのでした。

ねえホント、びっくりしますよね?
何回観ても斬新すぎて製作者の意図するところなんて謎だらけなんですわ。
以下の記述はノーヒントで考えてみた私なりの解釈です。内容を決定付けるものでは全然ございませんのでご注意ください。
謎①マリアンヌは何者?

まずはテンション高めのこの女ですよ。歌いだしたり踊りだしたりパニックになったり、メンヘラのケもあるこの女。
一体何者やねん。
何度本人に「俺の名前はフェルディナンや」って指摘されても徹頭徹尾彼のことを“ピエロ”と呼び続ける頭の弱い女の子マリアンヌ。その“ピエロ”曰くは、5年前に付き合ってた時からすでに素性がよく分からない謎の女だった模様。
その頃はどうだったのか分かりませんけど、今はどうやら「マフィアの一味」ってとこですかね。
“ピエロ”との再会が偶然だったのか必然だったのかは皆目分かりません。
謎②死んでた人は誰?でここどこ?

でさ、“ピエロ”は終電のなくなったマリアンヌと一夜をともにするんだけどさ、マリアンヌ宅だと思ったそのアパートの別室にはなぜか男の死体があるわけですよ。
視聴者二度見。
そして「あれ誰?」と詳しく訊くこともなくフェルディナンはマリアンヌとの逃避行を決意しますわな。
いやだからこれ誰よ。
フェルディナンそんな女について行って大丈夫?
そんでもしかしてマリアンヌって、ただのマフィアの情婦とかじゃなくて「殺し屋」なの?
謎③マリアンヌの兄は結局何者?
「正体不明の誰か」を殺したらしいマリアンヌは、“ピエロ”との逃亡生活のために「兄」にお金をもらいに行かなければならないとしきりに言っています。
いやいやまたそんなこと言うて…、「兄」って誰やねんな。

これは比較的簡単でしょうか。
終盤マリアンヌがその「兄」とキスする場面がありますから、「兄」と言うのは嘘で本当はボスか愛人なんでしょう。
…近親相姦関係にあるのかも知れないけど。
謎④音楽が聞こえるオッサンは何者?
クライマックスで突如姿を現す船乗り場のオッサン。

謎って言うか…いや謎か。
【気狂いピエロ】におけるコイツの存在価値は何やねん。
アメリカ人バカうけのベトナム戦争寸劇「アンクル・サムの甥 VS ホーの姪」
監督のジャン=リュック・ゴダールはアメリカのハリウッドに対して憧れとも憎しみとも取れる複雑な感情を持っていたとされますが、それにしても“ピエロ”とマリアンヌによるベトナム戦争の寸劇「アンクル・サムの甥VSホーの姪」はめちゃくちゃ面白い。
フェルディナン「yeah!」しか言うてへんし!

この寸劇で“ピエロ”が演じたステレオタイプのアメリカ人とジャン=リュック・ゴダールのアメリカへの愛憎は関係あるのかないのかは知らんがな。
映画【気狂いピエロ】の感想一言
ちょっと観ただけでは理解に苦しむ一方で、“ピエロ”とマリアンヌが急にカメラの方を向いて「観客」に話しかけてきたり、それぞれ別の車を運転する2人がすれ違い様に身を乗り出してキスしたり、いくつかの一風変わった描写が強烈なイメージを残す映画でもあります。
海辺の廃屋でひたすら缶詰食べて生活するのも憧れたなあ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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