【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソン

映画【黄昏に燃えて】あらすじと観た感想。だからってホーボーにならんでも

1987年/アメリカ/監督:エクトール・ベバンコ/出演:ジャック・ニコルソン、メリル・ストリープ、キャロル・ベイカー、トム・ウェイツ、マイケル・オキーフ、テッド・レヴィン、ダイアン・ヴェノーラ、ネイサン・レイン、リチャード・ハミルトン

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソン
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

感動の名場面はおろかヤマ場と言うヤマ場もないし、面白い!って感じではないけどめちゃくちゃ好きな映画です。

何を置いてもとにかく主演のジャック・ニコルソンメリル・ストリープの演技が素晴らしい。2人そろって第60回アカデミー主演男優・女優賞にノミネートされています(惜しくもノミネートのみ。この年の受賞者は、主演男優賞が【ウォール街】マイケル・ダグラス、主演女優賞が【月の輝く夜に】シェールでした)。

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大恐慌時代のニューヨークを舞台に、元野球選手の男と元歌手の女、2人の浮浪者の数日間が描かれる味わい深い静かな映画、【黄昏に燃えて】です。

 

映画【黄昏に燃えて】のあらすじザックリ

1938年ニューヨーク。宿無しのフランシス・フェランは寒さで目を覚まし、相棒のルディーと墓掘りの日雇い仕事に出かけた。そこにはフェラン一族の墓があり、フランシスの子供ジェラルドも眠っていた。フランシスはその夜、ここ9年間一緒にいるヘレンという女と合流する。

ある事件をきっかけに22年間ホーボー生活

ある冬の朝。

寒さで目を覚ます路上生活者フランシス・フェラン(ジャック・ニコルソン)。

底の抜けた靴を履いてヨタヨタと歩き、教会でふるまわれるスープをすする衝撃的な姿の“ホーボー”が【黄昏に燃えて】の主人公。

参考 ホーボー=19世紀終わりから20世紀初め頃の不況下のアメリカで、鉄道を無賃乗車しながら渡り歩いた労働者。

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソン
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

あらあなた、良いタイミングでフランシスを見つけましたね。

なぜって、偶然にもこの日フランシスが相棒のルーディ(トム・ウェイツ)と墓掘りの日雇い労働に出かけた墓地には、生後13日で死んでしまったフランシスの息子ジェラルドの墓がありまして、この墓を参ったことで22年間のフランシスの浮浪者人生に変化が訪れるからです。

フランシスを追ってくる3人の“死人ども”

ジェラルドを殺したのは何を隠そうフランシス自身。

酒を飲んで帰って赤ん坊を抱き上げようとしたところを、誤っておっことしてしまったんだそうです。

それが22年前の話。

それからフランシスは家を出て路上生活を続けています。

 

実はフランシスが殺人を犯したのはこの時だけではありません。

フランシスにはどこへ逃げてもついてくる白い服着た3人の男が見えていて、フランシスが“死人ども”と呼ぶこの3人は全員フランシスに殺されています。

【黄昏に燃えて】
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

ひとりはフランシスがまだ若い頃、ストライキの暴動中にフランシスが投げた巨大な石が頭に当たって死んでしまった“スト破り”の列車運転手。

その後路上生活者となったフランシスがとある列車に無賃乗車していると、同乗していたホーボーのひとりがフランシスに因縁をつけて襲い掛かってきて、反撃した拍子に殺してしまいました。これが二人目。

 

最後のひとりは…この人がちょっとわかりにくいんですけど、恐らくジェラルドなんだと思います。

死んだ時の赤ちゃんの姿じゃなくて、ジェラルドだけなぜか「22年後」の姿。

 

まあこの“死人ども”は本物の幽霊じゃなくてフランシスが勝手に生み出した幻のようですから、フランシスが「ジェラルドは生きていれば22歳だ」って思い込んでしまえば22歳の青年となって目の前に現れるのでしょう。

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソン
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

自らが生み出した“死人ども”に追い立てられるように、フランシスはあてもない路上生活を続けていたのでした。

歌手だったヘレンの体はボロボロ

フランシスには一応恋人がいます。同じ路上生活者であるヘレン(メリル・ストリープ)です。

元ラジオ歌手でピアノも弾けるし、お金持ちそうなご婦人と顔見知りだったことからも、元々は良家のお嬢さんで父親の遺産を巡って一家と断絶してしまったと言う本人の主張は真実であることがうかがえます。

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソンとメリル・ストリープ
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

ヘレンは9年前から何となくフランシスと行動を共にしています。きちんと職を持って一緒にアパートを借りていたこともあったみたい。

それなのに二人して結局この有様。

 

これがあのメリル・ストリープとはにわかには信じがたいほど、「ヘレン」は出て来た瞬間からもうボロボロ。酒で体を壊した以上に、足腰も思うように立たないみたいで、咳はするし固形物は受け付けないし、本当にもうボロボロ。

ブツブツ独り言をつぶやきながら通行人にガンくれる姿なんて真に迫り過ぎて「こんなオバハンおるおる…」って頷くしかない。

【黄昏に燃えて】メリル・ストリープ
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

ヘレンを演じた時、メリル・ストリープはまだ40歳手前のはずなのに、その安定の役作りと演技力で50代にも60代にも見せてきます。

個人的にはメリル・ストリープって余り好きな女優じゃないんですけど(悪魔ッパナが…)、やっぱりこの人ってすごいよね。彼女の出演作のすべてを観た訳ではないけれど、今のところメリル・ストリープが演じた役柄で一番好きなのはこのヘレンだったりします。

ラストをどんな風に受け止めるか?

フランシスは22年ぶりに家族が暮らす家を訪ねます。

どうして今さらって?

分かりませんよそんなの。ジェラルドの墓でジェラルドと話せたことで、彼の中の何かがそうしろと促したんでしょうよ。

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソン
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

22年前突然消えた夫を目にした時の妻アニー(キャロル・ベイカー)のリアクションは「数分固まる」

固まっているアニーに平静を装いつつ必死で話しかけるフランシス。

この場面はむちゃくちゃ泣ける。

 

ああごめんなさい、冒頭で「感動の名場面もない」って書いてしまいましたけど、実は結構あります。静かに心に響く感動の名場面ならいくつもあるのです。ただ「これ見よがし」の感動は皆無。【黄昏に燃えて】にあるのは水滴が石を穿うがつようにじわりじわりと身に染みる感動ですから、これを退屈だと思う人が多いのも事実です。

フランシスが家族を訪ねるこの場面然り、ヘレンとの別れの場面然り、朝日が入る孫息子ダニーの「良い部屋」が映し出されるラスト然り。

【黄昏に燃えて】
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

ラストは難解ですが、私はフランシスが家族が待つ家に戻ったと思いたい派です。

ラストでフランシスは、アニーの幻を見たあと持っていた酒瓶を投げ捨てて、「ダニーの部屋なら広々してるからまだベッドが入るわ」というアニーの言葉を思い出しているし、最終的にフランシスをホーボーの世界に留めていたのはヘレンだったと思うから。

いよいよ酒を断つ決心をして、「俺がいないとダメ」な女ヘレンがいなくなった今(そして仲間のルーディも死んだ今)、フランシスが家に戻らない理由はないと思うんです。

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソンとメリル・ストリープ
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

それに、家族と再会を果たしてから、フランシスは“死人ども”を見ていません。

その代わりにアニーの幻を見るようになっています。

これってフランシスがジェラルドも含めた“死人ども”の呪縛から逃れられたからだと考えられないでしょうか?

 

そりゃ本人も今さら家に戻ったところでうまくいくワケないって言ってますけど、フランシスの荷物を大事に屋根裏に置いていたことから考えてとりあえずアニーがフランシスをずっと待っていたことは明らかで、夫婦のお互いを思い合うその気持ちがあれば22年の空白なんてきっと埋められると思いたい。

夫婦の仲さえ修復できれば子供達は(孫も)何とかなるでしょう。

【黄昏に燃えて】ジャック・ニコルソン
©Ironweed/黄昏に燃えてより引用

「アニーの言う通りあのダニーの部屋で一緒に暮らすことができればどれほど幸せか…」って夢見ながら列車から飛び降りた…なんてフランシスの末路だけは想像したくありません。

映画【黄昏に燃えて】の感想一言

朱縫shuhou

朱縫shuhou

ホーボー達に囲まれていると威勢が良くて頼りになりそうな感じがするフランシスですが、自宅(?)に戻ると途端にみすぼらしく惨めに見えます。
小さく小さくぐっと体をすぼめて、涙を浮かべながらアニーに22年分の謝罪をする姿の哀れさときたらあなた…。
 
バーで自分に酔って歌ってるヘレンの姿にも目頭が熱くなります。
 
幸せの尺度なんて人それぞれ違うけど、フランシスとヘレンに比べたら自分の方が幸せなような気がして、おこがましくも彼らをそっと抱きしめて「大丈夫やで」と言ってあげたくなる映画です。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

朱縫shuhou 天衣無縫に映画をつづっている人

朱縫shuhou

「天衣無縫」と「温故知新」を信条として、主に古い洋画を好む映画好き。様々な映画を観たいのにホラーだけは怖くて観られない可哀相な初老。

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