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【失われた週末】ワイルダーの作風に「飲まれる」映画←うまい

クラシック
 20秒で読める概要とあらすじ

1945年/アメリカ/監督:ビリー・ワイルダー/出演:レイ・ミランド、ジェーン・ワイマン、フィリップ・テリー、ハワード・ダ・シルヴァ/第18回アカデミー作品・監督・主演男優・脚本賞受賞

かつて天才と呼ばれたドン・バーナムも、33歳となった今では無職のまま小説家の夢を追い続け兄ヴィックの世話になるアル中患者と成り下がっていた。ヴィックは再三に渡って嘘をつき隠れて酒を飲むドンに愛想をつかすが、恋人のヘレンだけはそれでもドンを救おうとする。

※このブログはネタバレしようがしまいが気にせずただ映画について書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

酒を求めて街を徘徊するドン

©The Lost Weekend/失われた週末より引用

「依存症」と聞いて、あなたは何か思い当たるものがありますか?

 

ニコチン依存症、ギャンブル依存症、恋愛依存症、カフェイン依存症、インターネット(携帯電話)依存症、ゲーム依存症、活字中毒、仕事中毒など…

数ある「依存症」と呼ばれる症状の中でも最も有名なもののひとつにアルコール依存症が挙げられます。

 

かく言う私はかつてかなりのニコチン依存症でした。

今ではすっかり日本を代表する嫌煙家の一人となってはおりますが(記事にしちゃうくらい)、依存していた頃の禁断症状たるやタバコのこと以外考えられないほどだったので、本作の主人公ドンの気持ちは痛いほど分かると同時に本当に依存症の怖さを思い知らされます。

 

ビリー・ワイルダー監督がスリリングな音楽とカメラワークで重度アルコール依存症の男の地獄のような週末を描いたアカデミー作品賞受賞作【失われた週末】です。

 

 

「そこまでせんでも…」から始まる依存症状

ニューヨークのアパートの高層階。開け放たれた窓からぶら下がる酒の瓶…。

室内では何やら荷造りしている男性が二人…。

朱縫shuhou
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窓からぶら下がる酒

©The Lost Weekend/失われた週末より引用

この瓶の謎はすぐに解けます。

ヴィック
準備できたか~ドン。

この週末はゆっくり旅行に行けて最高やな!

ドン
ホンマや。

兄貴、旅行先で小説を書くからタイプライターを持って行きたいんやけど、クローゼットを探してくれへんか?

ヴィック
よっしゃ分かった!

……クローゼットを探す兄のヴィック(フィリップ・テリー)の目を盗み、するすると窓の紐を手繰り寄せ、大事そうに酒瓶を旅行鞄に詰め込もうとするドン・バーナム(レイ・ミランド)。

 

そうです、この重度アルコール依存症・33歳・小説家志望・無職のドンという男は、あろうことか酒を断つためのリフレッシュ旅行にコソコソと酒を持っていこうとしているのです。

その時ちょうどドンの婚約者のヘレン(ジェーン・ワイマン)が訪ねてきて、ヴィックにこっそり「お酒は大丈夫?」と問います。

ヴィック
大丈夫、弟が酒を隠しそうな所は全部分かってる

どこにも隠してなかったよ

ヴィックは自信満々。しかしまさかの「窓に吊るす」。ドンのアイデアの勝利。

 

 

楽しいはずだった週末がガラガラと音を立てて崩れゆく

しかし詰めが甘くあと一息というところで隠していた酒が見つかってしまったドンは、ヴィックから大目玉食らって放置されます。

 

「放置」ってさらっと書きましたけど、小説家として芽も出ず無職で文無し、ヴィックの家に居候して生活費の一切まで世話になっているドンにとって、ヴィックにそっぽを向かれるのは死活問題。

それなのに売り言葉に買い言葉、ドンはヴィックに謝りもせずヘレンが止めるのも聞かず、再び酒を浴びるのです。

 

観ているこっちまでクラクラしてくる

ヴィックのへそくりを見つけて盗み、その金で買った酒が底をつけば他人のバッグを盗もうとし、危うく窃盗犯に成り下がろうかというほどの禁断症状に息を呑みます。

ナットに説教されるドン

©The Lost Weekend/失われた週末より引用

馴染みの店からツケ払いを断られ(大体ツケって言うてもヴィックが払うんやろ?)、自分の小説家の夢に不可欠であるタイプライターを質に入れてまで酒を買う金を作ろうとするドン。

しかしその日はちょうどユダヤ教の祝日でどの質屋も閉まっていました。

ドン
なんで質屋が全部閉まってるんや!!

なりふり構わずそこら中の人に怒鳴り散らし、汗を垂れ流しながらフラフラと酒を求めて街をさまようドンを観ていると、ピントのぼやけた映像とサスペンシフルなBGMも手伝ってこっちまで何とも言えない渇いた気分になってきます。

酒を求めて街を彷徨い歩くドン

©The Lost Weekend/失われた週末より引用

 

 

依存症を克服するには誰かの助けがやっぱり重要

禁断症状が進みすぎ幻覚まで見るようになってしまったドンは、ついに自殺を決意

実際私も映画を観ながら、「もうここまで行ったら死ぬしかないんでは…」なんて思っていました。

 

しかしピストルを持ち出し遺書を書くドンに向かってヘレンは言います。

ヘレン
お酒なんか好きなだけ飲みなさい!私も付き合うから!

死ぬよりマシだわ!

ドンを説得するヘレン

©The Lost Weekend/失われた週末より引用

…おお。

すげえ。そりゃそうだ。

 

×地獄のような週末を描いた映画→○禁酒の入り口に立てた週末を描いた映画

ヘレンの声にようやく耳を貸し、持っていた酒のグラスにタバコの吸い殻をポトリと落としたことでドンが永遠に酒と決別した かのような ラストで終わる【失われた週末】ですが、

私はまたきっとドンは酒を飲むと思っております。

こやつは絶対また飲みよる!

 

…でもね。

大丈夫だと思うんです。

ヘレンが側にいるんで。

ドンは酔っても酔っても(怒鳴り散らすことはあっても)ヘレンに手を上げることはなかったし、きっとヘレンのような人が側にいることですぐには無理でも少しずつ治っていくと思うんです。

そんなこんなして頑張っていればヴィックもきっと戻ってくれるだろうし、いっつも酔っぱらったドンにクダを巻かれているバーの店主だって破滅的なドンを心配してくれています。

 

とある重度アルコール依存症の男が落ちるところまで落ち地べたを這いずり、死を覚悟したことで真っ暗な闇の中にも微かな希望の光が残っていることに気付けた週末を深くえぐった映画。

 

あなたは何かに依存していますか?

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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