1987年/香港/監督:チン・シウトン/出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ウー・マ、ラム・ウェイ、ラウ・シウミン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

香港が本気で作ったロマンティック・ホラー映画。
武侠映画らしい剣戟アクションとダイナミックなワイヤーアクション。妖怪との激しい戦闘シーンや霊界の描写は当時の特殊効果技術の粋を集めたもので、今なお色褪せることがありません。それに加えて廃墟の寺、霧が立ち込める森、夜空に浮かぶ月明かりなど、まるで絵画のように美しいビジュアル。
そして幽霊と人間の禁じられた儚い愛。
コメディでもあり、アクションでもあり、ホラーでもあり、ファンタジーでもあり、ロマンスでもある。
色んな要素を贅沢に盛り込み過ぎてワケ分かんなくなってないのかって?
なってないんですよこれが不思議なことに。
幻想的な世界観と切ないストーリーで多くの観客の心を掴んだ香港映画の黄金時代を象徴する一本、【チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987)】です。
映画【チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987)】のあらすじザックリ
借金取りツァイサンと女幽霊シウシンのラブ・ストーリー
物語の大筋は、賃料などの取り立てをしながら各地を旅する書生ニン・ツァイサン(レスリー・チャン)と邪悪な妖怪に操られる美しい幽霊シウシン(ジョイ・ウォン)とのラブストーリー。
約一年前、旅の途中で悪漢に殺されたシウシンは無縁仏となって「蘭若寺」という寺に埋められましたが、千年樹妖怪“老老 (ラウ・シウミン)”に遺骨を押さえられたため、ロウロウの支配下に置かれています。

「蘭若寺」にやってくる旅の男を誘惑し、男が油断したところでロウロウに合図を送り、精気を吸い取らせるのです。
いつしか「蘭若寺」には誰も寄り付かなくなり、今ではすっかり荒れ果てた廃寺となっていました。
町の人々の様子から「あの寺はやべーよ?」っていう雰囲気は十分感じ取ったであろうに恐れることなく「蘭若寺」へやってきたのが今晩泊まる宿がなくて困っていた一文無しのツァイサンでした。

ホラーなのにふんだんに盛り込まれてる「香港流笑い」
本作の主人公であるこちらのツァイサンなんですがね、どうにもこうにも天然ボケでして、ええ。

どう考えても「何か出そう」な蜘蛛の巣だらけの廃寺に平気で泊まろうとするし、ゾンビが真後ろに居てもまったく気配を感じることなく絶妙なタイミングで彼らの攻撃(?)をかわすし、まあこういった天然要素は香港映画の主人公には欠かせないんでしょうけど。
不気味なシーンもあるのにツァイサンが絡むことでどこかほんわかしていて、安心して観ていられます。
ホントは優しい道士インが大活躍
そして香港映画といえば道士ですよ道士。【霊幻道士】。キョンシー。今関係ないか。
知らない人のために言っときますと、中国における道士ってのは道教を極めた僧侶のことで、広義には仙人を指すみたいです。
仙人て。神やんもう。

【チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987)】における道士イン(ウー・マ)もそりゃあもう、得体の知れない妖術を使って舞うわ戦うわ導くわの三拍子ですよ。
でもあかんでツァイサン、悪人面やからって殺人犯と間違えてイン道士を役人に突き出したりしたら。

ほろりとくるツァイサンとシウシンの別れ
出会ってすぐに惹かれ合うツァイサンとシウシン。

しかしツァイサンは人間、シウシンは幽霊でしかも凶悪な妖怪に囚われる身。
シウシンを救うためにはロウロウが宿る木の根元に埋められているシウシンの遺骨を掘り出し、二日後の黄昏前までにシウシンの生家に埋葬しなければなりません。
それを聞いたツァイサンはこれまでシウシンを狙う悪党だと勘違いしていた(お~い)イン道士の協力を得て、シウシン解放のために奔走します。

純粋な天然ボケのツァイサンと無敵のイン道士がついているんだからハッピーエンドに持って行けるんじゃないか、なんて思ったものですけどね。
そこは言うても人間と幽霊。
無敵の力を持っていようが深く愛し合っていようが自然の理 に抗うことはできないんですよ。

映像の美しさや華麗で力強いアクション、「ぷっ」と吹き出してしまうコミカルさにおどろおどろしい妖怪の描写。
そして悲劇的ともいえる恋人たちの結末。
視聴者に深い余韻を残す名画です。
映画【チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987)】の感想一言

シウシンを演じたジョイ・ウォンはまるで本物の幽霊のような妖艶な美しさでもって観客を魅了してくれます。「シャラーン」と腕輪の鈴を鳴らしながら長い衣をたなびかせて夜空に舞う姿は幽霊というよりは妖精に近いかも。
美しいシウシンが心を奪われたのが十人並みのツァイサンってのがまた良くってね。
だって医者でも弁護士でもプロアスリートでも芸能人でもない、ただのツァイサンですよ?
ツァイサンに限らず男はみんなシウシンの虜になってしまうでしょうが、シウシンがなんの変哲もないただのツァイサンを好きになるだなんて、きっと理屈じゃなく感覚で好きなんだろうな~って、なんとも微笑ましい暖かい気持ちになりませんか?
二人が来世で幸せになれますように…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。