1998年/イギリス/監督:レオン・ポーチ/出演:ジュード・ロウ、エリナ・レーヴェンソン、ティモシー・スポール、ジャック・ダヴェンポート、コリン・サーモン、ケリー・フォックス、アシュレイ・アータス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
愛を求めてばかりのお年頃って誰にでも訪れますよね。
与えることもせずただ求めるだけ。そして「誰も自分を愛してくれない」という被害者意識だけが膨らんでいく。
いつまでたっても満たされない。
いくつになっても満たされたい。
愛し合おうぜベイビー、【クロコダイルの涙】です。
映画【クロコダイルの涙】のあらすじザックリ
たぶん人間じゃないジュード・ロウ
変な映画です。
そもそも主人公のスティーヴン・グリルシュ(ジュード・ロウ)が人間なのかそうでないのかすらよく分からない。
ただ事実として、アメリカ人でも綴りを見ただけでは発音できないくらいに「Grlscz 」という苗字は珍しく、彼の社会保障番号は存在しません。極めつけにはグリルシュは、定期的に自分を愛してくれる女性の血を吸わなければ生きられません。それが“人間”としての特異体質なのか、それとも“吸血鬼”としての本能なのか、全然教えてくれないんです。
普段のグリルシュは「感情が極限に達した時に人体から出てくる“結晶”」の研究をしている医師。
しかしその陰で、手ごろな女性を物色しては「運命」をにおわす知的なアプローチでまんまと恋人の座におさまり、時にはプロポーズも厭わず幸福の絶頂にある恋人の首筋に牙を立て血を吸い殺害することを繰り返しているのでした。
たっぷりと吸血したあとグリルシュが口から「おえっ」と吐き出すのは、元恋人たちの断末魔の“結晶”。
こうして彼女らの「最期の感情」をコレクションするのがグリルシュの趣味であるらしい。
だから何者やねんお前は。
「ワニの僕がやりました」
グリルシュは次の獲物として、男勝りのアスファルト技師アン・レヴェルス(エリナ・レーヴェンソン)に目をつけます。
力強く聡明なアンを本気で愛し始めたグリルシュは、なかなか彼女の血を吸う決心がつきません。
これまでは「僕を愛して!そして僕の糧となって!」という欲望がむき出しだったグリルシュの、みるみる弱っていく自分を顧みずアンに手をかけることをためらう姿を観ていると、もしかしたら彼はただの人間なのかも知れないという気になってきます。
「愛される」だけじゃなく「愛せる」相手を求めてた?
「与え与えられる愛」が叶わなかったから殺戮を繰り返してた?
だとしたら治るかも。
彼が生まれながらにして血を吸わなければ生きられない“吸血鬼”じゃなく、妄信的に愛を求める奇病を患った“人間”であるなら治るかも。
もちろんこれまでの殺人に対する然るべき裁きは受けた上で、アンと共に生きるという条件つきで。
博識多才のグリルシュはアンに、とある神経学者が提唱する「3つの脳」の話をします。
その学者によれば、人間には脳が3つあると言います。
ひとつは「人間の脳」。その奥に「動物の脳」があって、さらに奥には「爬虫類の脳」があるんですって。
しばらくしていよいよ血を吸いたい欲望を抑えきれなくなったグリルシュは、意を決してアンの喉元に咬みつきます。
が、どうしても彼女の血を吸うことができません。
恋人の本性を知っておののくアンに、グリルシュは言い訳じみた持論を展開。
あかんやっぱり治らへん。
考察すればするほど分からない「鰐の空涙」
泣きながらアンを追い詰めていくグリルシュ。
その涙を見たアンは彼に向って「そら涙ね?」と言うのですが、これは恐らく「鰐 の空涙 」という諺からきています。
「鰐 の空涙 (Crocodile tears)」
偽りの涙のたとえ。鰐は偽善の象徴とされ、悲しそうに見せかけて涙を流しながら生き物を食べるという伝説から。
出典:ことわざ辞典ONLINE
タイトルの【クロコダイルの涙】について、私はずっとこの「『爬虫類 の脳』が稼働している時のグリルシュの涙」を指しているんだと思っていました。
でも実は【クロコダイルの涙】の原題って【Crocodile tears】じゃなくて【The Wisdom of Crocodiles】で、直訳すると「鰐の知恵」とか「鰐の叡智」って意味になるんですよね。
しかも字幕では「そら涙ね?」と訳されている先ほどのアンのセリフも、原文は「And are you sorry?」で、“鰐”にも“涙”にも全然かすっていなかった。
自分の中で一応折り合いがついてたのに記事にするに当たって色々考察しようとしすぎて何がなんだか分からなくなってしまった悪例。
映画【クロコダイルの涙】の感想一言
果たしてグリルシュは人間のフリをして生き血をすする吸血鬼なのか、すべてを「ワニのせい」にして殺戮を繰り返す異常者なのか…。
ジュード・ロウはこういう感情が読めないミステリアスな役がよく似合う。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。