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- 2026年1月2日
1921年/スウェーデン/監督:ヴィクトル・シェストレム/出演:ヴィクトル・シェストレム、ヒルダ・ボルグストレム、トーレ・スヴェンボルグ、アストリッド・ホルム、コンコルディア・セランデル、リサ・リンドブロム
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

本日の映画はなんと、1921年の映画です。
1921年ですよ1921年。
100年以上前の映画って。
なんかもうすごくない?
当然モノクロだしサイレントだし、退屈な映画なんだろうな~って思ってるでしょ?
ところがね、これが、面白いんですよ。
自信を持ってあなたにもおすすめしましょう。生死の狭間で自らの行いを悔いるアル中のおっさんを「死神の馬車」という人智を超えた存在を絡めて描いた名画、【霊魂の不滅】です。
映画【霊魂の不滅】のあらすじザックリ
大晦日、破滅的な生活を送る中年男デビッド・ホルムは、大晦日の夜に死んだ罪人はその次の一年間死神の馬車の馭者を務めなければならないという噂を聞きつける。新年になる直前、命を落としたデビッドの前に現れた「幻の馬車」の馭者はデビッドの旧友だった。デビッドは旧友に導かれ、自らの罪を悔いる旅に出る。
「幻の馬車」の馭者は大晦日に死んだ罪人
ヴィクトル・シェストレム監督による1921年のスウェーデン映画【霊魂の不滅】は、死と贖罪、そして魂の再生という重厚なテーマを詩的かつ革新的な映像で描いた傑作です。
妻子や友人、自分を心配してくれる優しい看護師に対して暴虐の限り(大袈裟でもない)を尽くして来たアル中のろくでなしが、死を前にして人生を振り返りながら己の罪に向き合う物語は、今なお観る人に強い余韻と教訓を与えてくれます。
ちなみに主役のろくでなしを演じているのはヴィクトル・シェストレム監督自身です。

大晦日の夜。
結核を患い死の床にある救世軍の看護師エディット(アストリッド・ホルム)が、しきりに一人の男の名を呼んでいます。
デビッド!
デビッド・ホルム!

エディットがいくら呼んでもデビッド・ホルム(ヴィクトル・シェストレム)は現れません。エディットはどうしても死ぬ前にデビッドに会って彼を救いたいのです。
その頃デビッドは、酒瓶を手に静かな墓地で飲んだくれていました。
かつては心優しい男だったデビッドですが、酒に溺れ、妻子が待つ家にも帰らず、今ではこんな風にすっかり堕落した生活を送っています。
あと数十分で新年を迎えようという頃、デビッドはその昔友人のジョルジュ(トーレ・スヴェンボルグ)から聞いた話を思い出し、語り始めます。

大晦日に罪人が死ぬと死神が「幻の馬車」に乗って現れて、その罪人は翌年の一年間、「幻の馬車」の
奇妙なことに、この話をしてくれた遊び仲間のジョルジュは去年の大晦日に死んでしまったそうです。
この話をしたあと、友人と口論になり小競り合いの末に死んでしまったデビッドの前に現れたのは、「幻の馬車」とそして、「幻の馬車」の馭者となったジョルジュだったのでした。

ジョルジュは去年の大晦日に死んでからの一年間「幻の馬車」の馭者を務めあげ、次の馭者であるデビッドと交代するためにやってきたんですね。
特殊効果で荘厳に映し出される「現世にはないもの」
言うてもジョルジュも友人のデビッドには優しくて、ジョルジュはデビッドに自分の過去を振り返る時間を与えてくれます。時空を超えてかつてのデビッドの行いを見に行かせてくれるんです。
過去の自分を振り返ったデビッドがどのように自分の罪と向き合うのか、罪を犯した彼にはこのまま天罰(=一年間「幻の馬車」の馭者として奉仕する)が下るのか⸻というお話。
【霊魂の不滅】の革新性はその卓越した映像技術にあります。
例えば以下のシーン。

霊体のデビッドが透き通ってますでしょ?
デビッドばかりでなく、ジョルジュも、「幻の馬車」も、この世のものでない存在はすべて透き通っているんです。
これは“多重露光”(本作の場合は二重露光)っていう技術だそうで、この特殊効果によって見事に死後の世界を体現しています。
もっぺん書いておきますけどこれ、1921年の映画ですよ?
過去の罪と向き合って悔い改めることができるかどうか
もちろん優れているのは技術的な部分だけではありません。

このデビッドがね、本当にろくでもないんですよ。
妻も子供もほったらかしてね?自分を想ってくれる(こんなおっさんのどこがいいの?って思うとこではある)看護師エディットには冷たくあたってね?ちょっと気に入らないことがあれば妻にだって友達にだって殴りかかるし酒ばっかり飲んで仕事はしないし、クズなんですよマジで。
昔は家族思いで勤勉で、弟も一緒にみんなで仲良く暮らしていた時期もあったんですけどね。
不景気や疫病の蔓延なんかで社会情勢も悪かったことでしょう。色々あって変わってしまったんですよ。酒に逃げるしかないほどつらかったのかも知れません。どうしたってこれまで通りには生きられなかったのかも知れません。
それにしたってクズなんですよ。

そのクズが、ジョルジュとともに過去を旅するにつれて改心してゆく様がすごいんです。
これに関してはサイレント映画であることがより効果を生んでいて、セリフの無い抑制されたサイレント映画であるからこそ、言葉を超えた哀しみが凝縮された演技が観る人の胸を深く打つんです。
スタンリー・キューブリック監督の【シャイニング】に影響を与えた映画
「でもこんな古い映画興味ないもーん」って思ってるそこのあなた。
実は【霊魂の不滅】は、映画好きなら誰もが知ってるであろう有名な作品に影響を与えた映画でもあります。
その有名な作品とは、何を隠そうスタンリー・キューブリック監督の1980年の映画、【シャイニング】。
愛しのジャック・ニコルソンの顔芸が超有名ですね。
※私はジャック・ニコルソンの熱烈ファンです。
スタンリー・キューブリック監督が影響を受けてオマージュを捧げているであろうことが明白であるシーンとはまさしくその、ジャック・ニコルソンの顔芸シーン。

【シャイニング】では、滞在先のオーバールック・ホテルの意志に取り込まれて錯乱状態の小説家ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)が、妻のウェンディ(シェリー・デュヴァル)が隠れているバスルームのドアを斧で破壊するという狂気の場面です。
【霊魂の不滅】でも同様。
妻と子供達が眠る寝室のドアをこじ開けるため、デビッドが何やら叫びながら斧でドアをカチ割るという場面があります。

良い映画はこうやって未来に受け継がれてゆくんですね。
映画【霊魂の不滅】の感想一言

単なる怪談なんかではありません。
宗教的要素は少々強めですけど、罪を犯した者の悔恨と贖罪という普遍的なメッセージを宿した傑作です。
死の間際…いや死んでしまってから己の罪に気付き、許してくれと子供のように泣きじゃくるデビッドの姿は他人事じゃないんです。
誰もが彼に同情し、共感し、感動に震え涙を流すことでしょう。
この先いくら技術が発達しても、【霊魂の不滅】ほどの映画が作られる可能性は極めて低いと思いますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。
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