1969年/アメリカ/監督:ジョン・シュレシンジャー/出演:ジョン・ボイト、ダスティン・ホフマン、シルヴィア・マイルズ、ジョン・マクギヴァー、ブレンダ・ヴァッカロ、バーナード・ヒューズ、ボブ・バラバン/第42回アカデミー作品・監督・脚色賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
この記事を書くために改めて作品の詳細を調べるまで知りませんでした。
主演のジョン・ボイトって、【17歳のカルテ】で一躍有名になったアンジェリーナ・ジョリーのお父さんなんですね。
まあアンジェリーナ・ジョリーはほぼ母親と暮らしてたみたいだし(ジョン・ボイトはアンジーが幼い頃に離婚してる)、私がこの映画を最初に観た時なんて恐らくアンジェリーナ・ジョリーは無名に近かったと思いますけど。
余談。
1960年代終盤から1970年代頃までにザクザク量産され反秩序な若者を描き多くはその無力さを無情に体現するラストが象徴的なアメリカン・ニューシネマの代表作、【真夜中のカーボーイ】です。
映画【真夜中のカーボーイ】のあらすじザックリ
カウボーイスタイルバリバリでテキサスからやってきました
スタイルをバッチリ整え、鏡に背を向けて立ち、気合を入れてパッと振り返り、鏡に映る自分を愛おしそうに見つめる男。
決まった…。
今日もクールだぜジョー…。
朝から(か真っ昼間か知らんけど)アホなことやってんのは食堂の皿洗いのジョー(ジョン・ボイト)。今日を限りで退職し、なけなしの給料と牛柄のスーツケースだけを手にニューヨークへ旅立ちます。
冒頭のこのシーンからも分かるように、ジョーは自分の容姿に相当自信を持っている様子。
それもそのはず、幼い頃から育ての親である祖母に可愛い可愛いと褒めちぎられ、成長すれば女の子達に素敵だ魅力的だともてはやされてきたんですから。
目指すはジゴロ!「お姉さん!お姉さんって!…えっと…お姉…」(ドン)「邪魔よ!」「…」
ジョーがニューヨークへやってきた目的は、金持ちの女と寝て大金をせしめるジゴロになるため(作品内では「ハスラー」と言っています)。
自信満々にニューヨークの街を闊歩するジョーは早速手頃なマダムの物色を始めますが、路上でくたばってる人がいても誰も立ち止まらない大都会の歩行スピードにさえついて行くことができずただオロオロ…。
足早に目的地を目指す女性達の前でのんびりポーズ決めてる暇なんてありゃしません。
なんとか化け物みたいな老女を捕まえてセックスに持ち込み「ジゴロ稼業(と本人は思っている)大成功!」と自信を取り戻しかけたものの、結局金を受け取るどころか逆にタクシー代をむしり取られ放り出されるという体たらく。
そもそもジョーは笑ってしまうほどええ奴で、向いてないんですよねジゴロとかホストとか。完全に職業選択ミス。自己能力誤認。
ちょいちょいフラッシュバックするジョーの過去
だからといってただの頭空っぽのナルシストかと言えばそうでもなく、実はジョーは壮絶な過去のせいで心に大きな傷を負っているんです。
ことあるごとにフラッシュバックしてくるジョーの過去をまとめるとこんな感じ。
いやシャレならんやん。
これらの過去を踏まえると、つらい出来事が重なったというのに前向きに(お気楽に?)生きてるジョーを応援したくなってくるよね。
汚いダスティン・ホフマン「ネズ公」!
かなり壮大なビジョンを描いて大都会へやってきたはずなのに何ひとつ思い通りにいかないジョーの前に現れたのは、顔見知り達から「ネズ公」と呼ばれている小男ラッツォ(ダスティン・ホフマン)。
嘘!これがダスティン・ホフマン?!
汚 っ!!
って我が目を疑ったもんですよね。この前々年の【卒業】で演じた清潔感溢れる若い青年ベンジャミンとは打って変わって、【真夜中のカーボーイ】では汚い乞食みたいな小男になってますんでね。
1967年/アメリカ/監督:マイク・ニコルズ/出演:ダスティン・ホフマン、アン・バンクロフト、キャサリン・ロス、マーレイ・ハミルトン、ウィリアム・ダニエルズ、エリザベス・ウィルソン、ブライアン・エイヴリー、バック・ヘンリー/第40回[…]
すごいです。
足は悪いし、背は低いし、声は甲高いし(あんまり関係ない)、変な病気持ちやし(最後まで何の病気か出てこない)、金も家も家族もないし、もう一体何重苦なんって感じ。
どうしてもフロリダに行きたい男
ニューヨークに憧れたジョーに対し、ラッツォが憧れるのは暖かいフロリダ。
高熱が続き全身がマヒして動かなくなり、あわや死のうかという緊急時であっても、ラッツォが口にするのはフロリダのこと。
男娼も厭わず犯罪に手を染めてでも金を工面し、ラッツォをフロリダに連れて行こうとするジョーの献身的な行動は、褒められたもんではないですが感動を呼びます。
マイアミ行きの長距離バスの中でおしっこを漏らし情けなさの余りサメザメと涙を流すラッツォと、「お前だけ先にトイレ休憩したんやろ?」と笑い飛ばしてくれるジョーの楽しそうな掛け合いの場面が普通に泣ける。
身長差30センチはあろうかという凸凹コンビの、友情とも愛情ともつかない固い絆を描いた名作。
映画【真夜中のカーボーイ】の感想一言
タイトルがなぜ「カウボーイ」ではなく「カーボーイ」なのかと言うと、かの映画評論家 水野晴郎氏が都会の象徴である「Car(車)」を連想させるイメージで考えたかららしいよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。