【ノーカントリー】映画レビュー:凄惨なのになぜか笑える殺戮劇

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20秒で読める概要とあらすじ

2007年/アメリカ/監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン/出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド/第80回アカデミー賞作品・監督・助演男優・脚色賞受賞

1980年、メキシコにほど近いアメリカテキサス州の町。溶接工のルウェリン・モスは偶然麻薬取引の末路と思われる凄惨な殺人現場と残された大金の入ったブリーフケースを発見する。金を持って逃亡したモスは麻薬組織に雇われたアントン・シガーに追われる身となる。

※このブログはスタンダードにネタバレしてます!未視聴の方はご注意ください!

現場を追う保安官

🄫No Country for Old Men/ノーカントリーより引用

暴力描写とか流血とか内蔵飛び出すスプラッターとか受け付けない私ですが、コーエン兄弟クエンティン・タランティーノの作品は観ることができます。

だってなんかおもろいねんもん。

めっちゃ人死んで血ぃダクダク流れてんのになんで笑えてしまうんでしょうか…。

まあ本作に限りましては、頭イっちゃってる殺人鬼アントン・シガーがおもろすぎたお陰で楽しく観ることができたわけですけども。

コーエン兄弟がアカデミー賞で作品賞他4冠に輝いた【ノーカントリー】です。

アメリカとメキシコの麻薬取引に巻き込まれたモス

物語の大筋はルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)の逃亡劇で成り立っています。

テキサスの荒野で鹿みたいな動物(プロングホーンってんだって)を撃っていたモスは、偶然数台のバンと積み荷に残された麻薬、その周囲にまるで銃撃戦の後のように転がるいくつかの死体を発見。

どうやら麻薬取引の交渉でも決裂した感じ…まだどっかに生存者がおるかも…と周囲を警戒しながらウロウロしているとさらに木の下に人影を見つけます。

近づいてみるとすでにこと切れてるギャングらしき死体と、傍には大金が詰まったブリーフケースが…。

モスは危険を承知でこの大金を奪って逃げます。

ルウェリン・モス

🄫No Country for Old Men/ノーカントリーより引用

鹿らしき動物(プロングホーンやってば)を狙っている時の鋭さや、転がる死体を見ても動じないメンタルの強さ、この後ギャングや殺し屋に追われても常に冷静で機転が利く様をみてモスって一体何者やねんと思っていたら、
実は2回も出征しているベトナム帰還兵だと中盤くらいで自ら明かします。

言うたらジョン・ランボーです。

やっぱりベトナム帰還兵は戦場でも市街地でもサバイバル力が半端ないです。

いくら頭のぶっ飛んだ殺人鬼が相手でも、ベトナム帰還兵やったら勝てるかも…。

殺し屋?「アントン・シガー」、君は一体なんやねん

アメリカ側の麻薬組織に雇われ、金を奪ったモスを執拗に追うまともに会話することも不可能な頭のぶっ飛んだ殺人鬼が、画面に映った瞬間からインパクト満点のアントン・シガー(ハビエル・バルデム)です。

ハビエル・バルデムはスペインの俳優だそうで、私は【ノーカントリー】を観るまでその存在を存じ上げませんでした。

コーエン兄弟もまあよくこんな俳優みっけてきましたね。

アントン・シガー

🄫No Country for Old Men/ノーカントリーより引用

もーまず見た目さあ~…

髪型!

そして 顔も変!(←褒めてる)

さらに頭もだいぶんおかしい!!

マスコット人形があったら絶対買ってる!

「殺し屋」って言うか、「誰かに雇われて命令されて人を殺す」って成り立つの?

だって言葉が通じませんよこのシト。

結局雇い主のボスも殺すし。
だた自分の気分で殺戮を繰り返すだけの猟奇殺人者のような…。

保安官助手に手錠をかけられ拘束されて登場しますが、その手錠で背後から保安官助手の首を絞め殺害します。

しかしその後はそんな力技での殺人は行いません。

その超万能でおもろそうな武器「家畜銃ピストル」てのはなんやねん

シガーが主に殺人に使う獲物は一見変な酸素ボンベみたいな代物です。

家畜中ピストル

🄫No Country for Old Men/ノーカントリーより引用

この武器に関しては作中でエド・トム・ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)がモスの妻カーラ(ケリー・マクドナルド)に対して世間話という形で明かしています。

「昔は家畜の牛を一頭殺すのも大変やってん。逆に人間がケガさせられたりしてな。でも最近は一撃で牛を仕留められる道具ができてんねん」

シガーの愛好する武器がまさしくこれ。

牛を一撃で安楽死させられる威力を持つ飛び道具で、「家畜銃ピストル」というそうな。

巨大な牛でも一撃で死に至るこの武器をシガーは容赦なく人間に向けて発射します。
撃たれた人間がどうなるかは推して知るべし…。

空気銃みたいな原理になってて、50~60cmはあろうかというエアタンクをブラブラぶら下げて静かにモスを探し回るシガーの姿は異様です。

しかもこの家畜銃ピストル、ドアの鍵穴に向けて発射すれば鍵穴ごと吹っ飛ばし施錠の意味をまったく無くしてくれるという本来の使い方以外の用途でも大活躍します。

🄫No Country for Old Men/ノーカントリーより引用

この方法で狙った獲物がどこに隠れようが籠城しようが次々と追い詰めていくシガーの無敵感がすごいです。

こんな武器ありかしかし。

個人的にはライトセイバーより欲しい!

用途わからんけど。
なんか色々吹っ飛ばして子供と遊びたい!

やっと主人公エド・トム・ベル保安官登場

シガーがインパクトたっぷりの存在感を見せつけ、
そのシガーに対抗できるんちゃうんかっていうポテンシャルを持ったモスが金を持って逃亡したあと、
ようやく冒頭で語りを披露してくれたエド・トム・ベル保安官が最初の麻薬取引の銃撃現場を訪れのっそりと捜査を開始します。

この辺りはコーエン兄弟の代表作【ファーゴ】の警察署長マージの登場シーンと被りますね。

ベル保安官は助手とともにウダウダ御託[ごたく]を並べながら事件を追います。

で?【ノーカントリー】ってなんやったの?

コーエン兄弟の作品らしく、ラストはやっぱり突然訪れるので、私は

「これで終わるんかーい!」

と1人でTVにツッコミながら自宅のソファに倒れ込みました。
映画館じゃこれができないんで、やっぱり自宅鑑賞はいいですよね。

【ノーカントリー】は難解であるがために数々の考察サイトがひしめき合っています。

正解なんてないのでしょうが、原作を読んだり最後のベル保安官の夢の元ネタの詩と絡めたりと様々な見解がある中、
原作も読んでおらず他国の詩の知識もまったくない私はタイトル【ノーカントリー】についてこう思います。

原題を理解していないと考察も不可能かも

ただの【ノーカントリー】だけでは祖国を追われた移民の話かしら?くらいになっちゃうので、やっぱり原題は大事ですよね。

原題は【No Country for Old Men】で、直訳は「老人のための国はない」。

ベル保安官は最終的に犯罪が若年化・凶悪化する世の中で自分の無力さを痛感して引退を決意します。

自分より若い人間が男女問わず次々と殺されていくというのに、老いた自分は生き延びて結局誰も救うことができず死に場所すらもなくおめおめと引退するしかなかったという悲しい現実を表現していると感じました。

妻に夢を語るベル保安官

🄫No Country for Old Men/ノーカントリーより引用

何度も観てもおもしろくて観るたびに新たな発見がある傑作です。

しかし【ノーカントリー】に関連するものでもっとも暴力的なのは原題の「for Old Men」をバッサリ切り捨てて危うく移民の映画なのかしら?と未視聴の観客に思わせてしまいそうな邦題の略し方だと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

【ノーカントリー】を観たくなったら

朱縫shuhou
【ノーカントリー】はアカデミー賞作品賞を獲得しています。

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