【西部戦線異状なし】映画レビュー:こんな映画が永遠に遺ればいい

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20秒で読める概要とあらすじ

1930年/アメリカ/監督:ルイス・マイルストン/出演:ルイス・ウォルハイム、リュー・エアーズ、ジョン・レイ、アーノルド・ルーシー、ベン・アレクサンダー、スコット・コルク/第3回アカデミー賞作品・監督賞受賞

第一次世界大戦下のドイツ。兵士達が街中を行進する中、ある学校で老教師が祖国のために戦場で戦うことこそが名誉だと愛国心を説き生徒達を鼓舞している。生徒達は目を輝かせながら授業を中断し揃って入隊を志願しに行く。しかし実際の戦場で待っていたのはこの世とは思えない過酷な現実だった。

※このブログはスタンダードにネタバレしてます!未視聴の方はご注意ください!

【西部戦線異状なし】タイトル

🄫All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

「フランスからの捕虜3万人や、はっはっは!」
「ロシアからはもっと多いわ!こりゃ笑いが止まらん!」
「僕も明日から出征ですねん!新人教育係!やりまっせ~!」

のっけからなんだか景気が良さそうな町民の会話が聞こえてきます。

軍国主義で好戦的なイメージがあるドイツが舞台の戦争映画やから「戦争バンザイ!」って感じのノリなんかな~って思って観てるとエライ目に遭います。テンション高めなのは実際に戦地に赴いていない町民達だけ…。

本作はドイツ側から見た世界大戦をアメリカが描くという異色の反戦映画です。

後世に遺ってほしい素晴らしい作品。【西部戦線異状なし】ホントおすすめ。少なくとも映画が好きなら一回は観ておいた方がいいと思います。

昭和初期の日本の学校教育もこんなんやったんかな

【西部戦線異状なし】には若い殿方(きゃ)がいっぱい出てきます。

高校生なんだか大学生なんだか定かではないですが、通りを練り歩く兵士達が窓から見える教室で、二十歳そこそこの若いお兄ちゃんたちが学校でじいちゃん先生に愛国心について説かれ、まるで洗脳のように目をキラキラと輝かせながら兵士に志願しに行きます。

じいちゃん先生の愛国心講座

🄫All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

生々しい戦場の描写

じいちゃん先生が掲げる愛国理想論で頭の中はお花畑状態、戦地の現状についての見聞などからきし持ち合わせていない若者達がこぞって戦場へやってきた時のビビりようったらないです。

そこには彼らが想像もしていなかった凄惨な世界が待っていました。

戦争映画といえば銃で撃ったり撃たれたり、爆弾落とされたり剣で刺されたり戦車が来たり戦闘機が華麗に舞ったり、そんなド派手な描写に持っていかれがちですけど、戦争の悲惨さってそんなとこだけじゃなくむしろもっと地味なとこにある事が【西部戦線異状なし】を観ていると分かります。

地味にめっちゃ辛いです。

ドブネズミ襲来

敵からの砲撃を避けるための塹壕で何日も過ごしていると、そこここに走り回るドブネズミが…。

1匹や2匹じゃないです。何十匹も…。

大の男が狂ったように狭い塹壕の中で小さなドブネズミを追いかけ回して砂煙が上がってまた見失って…見てるこっちも「わぎゃー!」です。

ネズミは病気も運ぶしこれ深刻。ハムスターももー全然かわいくない。嘘かわいい。

参考 塹壕[ざんごう] = 敵弾から身を隠して行動するために掘った空堀[からぼり]

耐えがたい飢餓

そして空腹

そうなんですよね。戦場ってどうやって飯食うてんねやろって思ってましたもん。

やっぱり若者達はまず飢餓に耐えられずギャーギャーと喚きだします。喰えるもんなら人でも殺しそうな勢いです。

塹壕内で砲撃が止むのを待つ

🄫All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

止まない砲撃音

これもやばい。

四六時中砲撃音が鳴っていればそのうち慣れてくるんちゃう?とかつい甘っちょろいことを考えがちですけど、塹壕で砲撃音を聞きながらひたすら身を隠す場面を観ていると素直に申し訳ございません、舐めてましたと土下座してしまいます。

この場面で思い出したんですけど、私なんか阪神大震災の時でも余震が怖くてしばらく安眠できなかったですもんね。戦争と比べたらアレですけど…寝てる間に命の危険が迫る状況ではやっぱり人間はまともに眠れないんでしょうね。

睡眠不足で冷静な判断もできなくなり砲撃音によってヒステリーが引き起こされるという悪循環…。狭い塹壕で大きな男達が数十人雑魚寝でさ。

いやもう精神崩壊する。

目の前で「人間」が死んで行く

彼らは実は自分達が「どこで」「誰と」戦ってんのか分かってません。

列車で最前線へ送られてきましたが駅のプレートは外されています。

「なんかわからんままに連れてこられたけど戦う相手はえっと…フランス?イギリス?

てかここどこ?」

【西部戦線異状なし】にはたくさんの若者が出てきますが、級長のポール(リュー・エアーズ)以外誰が誰だか私にはさっぱりわかりません。でもそれでいいと思っています。きっと私だけじゃないでしょう。

塹壕で数日間耐え抜いたかと思ったら最前線では誰が誰だか、ここがどこだか、何が何だか分からんうちに、目の前で敵か味方かも分からない「人間」がただバッタバッタと死んでいく…。

何のために?

誰のために?

胸が締め付けられて苦しくなります。

負傷した友を見舞う

🄫All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

誰も幸せにならない無情の映画

束の間の安息時間に兵士達が「なんのために戦争なんてやっとんのやろなあ~」とぼやきながらこんな冗談を言う場面があります。

「まあなんしか国と国が戦ってんねん!」

「『国』って何やねん、が戦っとんのかい」

兵士達は爆笑します。私も笑ろてまいましたけど。

「国と国が戦っている」と言ったとて、もちろんその国の山さん海さん原さんが戦ってる訳ではありません。実際に前線で殺し合いをしているのは「人間」であることが巧みに表現された映画です。

戦争映画が苦手な私が好きな映画ベストなんやらに挙げるほどの秀作、滅多に言いませんけど言います。

「未視聴の方は是非ご覧ください」

🄫All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

この物語は非難でも懺悔でもなくましてや冒険談でもない。

なぜなら死に直面した者にとって死は冒険ではないからだ。

これはたとえ砲弾から逃れたにしても戦争によって破滅させられたある時代の男達を描こうとしただけである。

出典:【西部戦線異状なし】冒頭字幕

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

【西部戦線異状なし】を観たくなったら

朱縫shuhou
【西部戦線異状なし】はアカデミー賞作品賞を獲得しています。

歴代アカデミー賞作品賞受賞映画が見やすく一覧になっている記事はこちらからどうぞお~。


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