1987年/イタリア、中華人民共和国、イギリス/監督:ベルナルド・ベルトルッチ/出演:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一、ケイリー=ヒロユキ・タガワ/第60回アカデミー賞作品・監督・撮影・脚色・編集・録音・衣裳デザイン・美術・作曲賞受賞
清朝最後の皇帝(その後満州国皇帝)・愛心覚羅溥儀。溥儀の自伝「わが半生」を原作として、僅か3歳で皇帝に即位し61歳で息を引き取るまでの波乱に満ちた生涯を描いた伝記映画。
※このブログはスタンダードにネタバレしてます!未視聴の方はご注意ください!

©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用
エンペラー=「行程」…ちゃうやろIME文字変換!
「皇帝」
ばばーん!!!
単語だけでなんかかっこいいですよね。
ばばーん!!!
…ところがどっこい。
記事にするにあたり久しぶりに観てみた感想をまず率直に。
「こんなにおもんなかったっけ??」
今日はもーアカデミー賞受賞作品に文句つけちゃうよー。
アカデミー賞9部門、じゅしょう…?
なんと9個ものアカデミー賞を受賞してるはずですが、私的に納得できるのは衣裳デザイン賞と作曲賞の2個だけ。
3歳で本当の母親から引き離された溥儀[ふぎ](ジョン・ローン)が連れてこられた紫禁城の情景は圧巻だし、城内で生活する人々の衣装も豪華で細部にまでこだわられていて素晴らしいです。
なんとも言えないアンニュイなテーマ曲も胸にジーンとくるのです…が。
9部門じゅしょう…???
正気か?
プチ溥儀はかわいかった
3歳のプチ溥儀が紫禁城に連れて来られてすぐ西太后と会話するシーンは、これからの物語のスケール感を表しているようで密かに心臓バクバクです。
西太后なんて魔女みたい…いやもう魔女。悪の化身。もう地球外生命体みたいになってますからね。
めっちゃ怖いし恐れ多いのにその御前を無邪気に「家帰りた~い!」とペタペタ走り回るプチ溥儀には、「こんな小さい頃に皇帝にされてしまって自由を奪われるんかあ…」と感情移入することがまだできました。
キャラクターの心情がまったく伝わらない
その後溥儀はおっきく成長していく訳ですが、歴史的事実を表現することに重きを置き過ぎたためか彼の心情がまったく伝わってきませんでした。
少年期くらいまではまだ、「あー外に行きたいんやなー」とか「好奇心旺盛よねー」とか、色々読み取ることができます。

©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用
しかし青年期移行、
己の地位に慢心した実力なき権力者であるのか、
権力など無用で自由を求めるアウトローなのか、
深い慈愛の心を持った人格者なのか、
何がしたいのかどんな人物であるのかさっぱり分かりません。
満州には日本側に誘拐されて無理やり連れて行かれたと証言したかと思えば再び皇帝に返り咲いてやると野心を持っていたり、
地位を追われ自殺未遂をしたあと、自分にもう価値はないと思っているのかと思えば収容所で召使だった男に偉そうに靴を履かさせていたり、
キャラが安定せず映画を観終わった時に思い出すのが紫禁城の荘厳な景色だけという最悪の事態におちいっております。
俳優の無駄遣い
溥儀も然り、坂本龍一扮する甘粕氏然り。

©The Last Emperor/ラストエンペラーより引用
無口で物静かな男性なのかと思いきや「アジアは日本のもんじゃおらーっ!」と突然声を荒げたりします。
でも観ているこちら側がキャラクターに入り切れていないので
あーびっくりしたー。
えーそんなこと言うんやー。(棒読み)
って感じです。
その甘粕氏と最後に手を絡め合うパイロット風の胡散臭い女の存在も意味不明です。
なんやこいつ。
【アラビアのロレンス】で有名なピーター・オトゥール扮する家庭教師のジョンストン先生も溥儀の生涯の友となるのですがどうしてそんなに慕っているのかが消化不足。
紫禁城の外の世界の雑誌を与え、自転車に乗せてあげ、溥儀の孤独な少年時代の唯一の友であることは間違いないのですが、それにしたって存在が弱い…。
溥儀がいた戦犯収容所の所長がデモ隊に拘束されているのを見た時、「この人はいい先生なんだ!」と庇う場面も、なんだか唐突に尊敬しちゃった感じ。
身を挺して守ろうとするに至った過程が薄いんですよね。
「所長とそんなに親密になる出来事何かあったっけ?」と視聴者が置いて行かれます。
史実を大きく曲げる訳にはいかないからか、過剰に脚色されることが少ない伝記映画が私は大好きなのですが、【ラスト・エンペラー】はちょっと理解に苦しみます。
プチ溥儀はめっちゃかわいんやけどなあ~…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。