1971年/アメリカ/監督:ピーター・ボグダノヴィッチ/出演:ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、ベン・ジョンソン、クロリス・リーチマン、エレン・バースティン、アイリーン・ブレナン、ランディ・クエイド/第44回アカデミー助演男優・助演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
こういう映画のことをどう説明したらいいんだろうってずっと考えてるんですけど思いつきません。
20年ほど前でしょうか、まだ小娘だった頃に本日の映画を観た時の感想は、「あんましオモロないな…」だったはずなんです。「思春期の男の子達がヤりたいヤりたい言うてる映画」くらいの認識でした。
それなのにこの度の再視聴でわたくし、不覚にも涙が出てしまったんです。
いいえ、例えば【スタンド・バイ・ミー】に代表されるような、「成長してから観るとますます感慨が深くなる」系のスルメ映画ではありません。「大人になったから意味が分かる」という漠然としたものじゃなくて、もっと具体的に、「経験者だけが分かること」ってあるじゃないですか。
「お父さんが死んでからというもの親が死ぬ内容の小説を読むと涙が止まらない」とか。「初体験してからというものドラマのベッドシーンを観るとムラムラしてたまらない」とか。そういう感じ。
映画と似た状況を経験してしまったら当時の自分を思い出して泣けてきちゃって映画どころじゃなくなってしまった映画、【ラスト・ショー】です。
1986年/アメリカ/原作:スティーブン・キング/監督:ロブ・ライナー/出演:ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル、リチャード・ドレイファス、キーファー・サザーランド、ケイシー・シー[…]
映画【ラスト・ショー】のあらすじザックリ
ストレス溜まってる小さな町アナリーンのみなさん
テキサス州の埃っぽい小さな町アナリーン。町の娯楽施設といえば食堂が一軒にビリヤード場兼売店が一軒、そして映画館がひとつ。以上。
これらの施設をすべて切り盛りしているのは“ライオンのサム”とあだ名される気風 の良いオッサン、サム(ベン・ジョンソン)。
一人息子のビリー(サム・ボトムズ)は知恵遅れらしく口をきくことができません。毎日意味もなくほうきを持って道路の真ん中を掃いています。
退屈な町の高校生の関心事
サムの映画館には毎日のように地元の高校生らが入り浸り、他にすることもなく退屈な彼らの関心事は男女問わずもっぱら「いつ初体験するか」ということ。
フットボール部のサニー(ティモシー・ボトムズ)とデュエーン(ジェフ・ブリッジス)も例に漏れず。
サニーは1年も付き合ったのにヤらせてくれないシャリーンをあっさり捨てる。
デュエーンは交際中の町一番の美女ジェイシー(シビル・シェパード)にいつでも臨戦態勢だけどなかなか許してもらえない。
ジェイシーはジェイシーで身持ちがいいのかと思ったら、町を挙げたクリスマス・パーティの夜に同級生のレスター(ランディ・クエイド)から“全裸プールパーティ(なんやねんそれ)”に誘われてデュエーンをほったらかす。
“全裸プールパーティ”に行きたそうすぎる超絶美人ジェイシー。
超絶美人のくせに根性ババいジェイシーは一周回って逆にイカす。
この思春期特有の軽薄で移り気で色気づいてる描写は好きだったような気がするんですけど、まあ初見の時はそれくらいの認識で終わってました。
もっとも変化がなさすぎて退屈なのは大人も同じらしく、ジェイシーのオカンでプチ石油王の妻ロイス(エレン・バースティン)は娘に向って偉そうに「イイ男の選び方」を指南するけど、自分だって金銭面以外は幸せじゃなさそうだし、かつては“ライオンのサム”と不倫してたらしい。
タンブルウィードがころころ転がるレイジーな町の雰囲気にぴったりの、グッズグズの町民のみなさんでした。
高校生と不倫する主婦の「ごめんなさい」
シャリーンとは別れるし、本当はジェイシーが好きだけど彼女は親友のデュエーンと付き合ってるから手は出せないし、サニーは仕方なく(?)縁あって知り合ったフットボール部のコーチの奥さんであるルース(クロリス・リーチマン)と寝ることにします。
ここです私が泣けたのは。
後半からがぜん厭世的なムードが増してはくるものの、本来であれば【ラスト・ショー】は泣けるような映画ではありません。
それなのに私は2人の恋を観て泣けてしまったのです。
サニーは17~18歳、ルースは40~45歳くらいだと思われます。その歳の差20歳以上。息子ですよこんなもん。「息子と寝る」。ここまで行くとさすがに気持ち悪いですけどちょっとそれは置いといて。
このルースがね、最初にサニーと関係を持つ時に、泣くんですよ。「ごめんなさい」って言って。
その時に思い出したんです、30歳の時に付き合ってた20歳の男の子のこと。
その前に付き合ってた彼氏と喧嘩ばっかりしてる私を見かねて「僕じゃダメですか?」って言ってくれたので、前の彼氏と別れてその男の子と付き合うことにしたんです。
今思えば10歳差くらいなんでもないやんって感じですけど、当時はその歳の差がすごく申し訳なくて、なんとなくいつも「ごめんね」って思っていました。
だから「自分はこの人にふさわしくないかも知れない」って悲観的になってつい謝ってしまうルースの感情がグサッと刺さって泣けてしまいまして。
こんな映画ってないですか?自分の経験がシンクロすると云うかフラッシュバックすると云うか。
こういう観方ができるのがふわっとしたノンジャンル映画の良いところなんですよね。娯楽大作ではなかなかこうは行かない。
【タイタニック】は20年後に観てもきっと【タイタニック】だし、【アベンジャーズ】は30年後に観てもきっと【アベンジャーズ】なんですよ。
映画【ラスト・ショー】の感想一言
娯楽大作が良いとか悪いとかでなく、映画って人間みたいにそれぞれ性質が違ってて、似てる部分があったとしても全く同じ映画は二つとなくて、同じ映画であってもその時の自分の状況や一緒に観る人で感じ方が変わったりして、とどのつまり観ても観ても「もっと映画を観たい」という欲求は尽きないなあ、っていうお話でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。