1972年/アメリカ/監督:ボブ・ラフェルソン/出演:ブルース・ダーン、エレン・バースティン、ジャック・ニコルソン、ジュリア・アン・ロビンソン、スキャットマン・クローザース、ジョン・ライアン、ジョシュ・モステル、サリー・ボイヤー、アーノルド・ウィリアムズ
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
名優ジャック・ニコルソンが1970年の【ファイブ・イージー・ピーセス】で二度目のオスカーノミネート(一度目は1969年の【イージー・ライダー】)を果たした2年後に公開された映画。
1970年/アメリカ/監督:ボブ・ラフェルソン/出演:ジャック・ニコルソン、カレン・ブラック、ビリー・グリーン・ブッシュ、スーザン・アンスパック、ロイス・スミス、ラルフ・ウェイト、ウィリアム・チャーリー注※このサイトは映画の[…]
1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:1969年/アメリカ/監督:デニス・ホッパー/出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン、アントニオ・メンドーサ、カレン・ブラック注※このサイトは映画[…]
2年連続オスカーノミネートという快挙を成し遂げこの頃にはすでに作品を選べる立場にあったはずですが、遅咲きの苦労人であるジャック・ニコルソンは古くからの仲間と映画を作ることを好んだようです(監督・脚本のボブ・ラフェルソンとは友人)。本日の映画を始め、有名になってからも結構地味な作品に出演したりしています。
それにしても長年にわたる彼のキャリアの中でもこれほど冴えない男を演じたのは珍しい。
キャラクターの「イケてない度合い」で言えばウォーレン・ベイティと共演した【おかしなレディ・キラー】の時か本日の映画の時か、どちらも甲乙つけがたし、と云ったところでしょうか。
1975年/アメリカ/監督:マイク・ニコルズ/出演:ウォーレン・ベイティ、ジャック・ニコルソン、ストッカード・チャニング、フローレンス・スタンリー、スキャットマン・クローザース、ジョン・フィードラー注※このサイトは映画のネタ[…]
「冴えない男」に扮したジャック・ニコルソンの演技が冴えてます(うまい!)、【キング・オブ・マーヴィン・ガーデン 儚き夢の果て】です。
映画【キング・オブ・マーヴィン・ガーデン 儚き夢の果て】のあらすじザックリ
破滅型の兄と堅実な弟の物語
【キング・オブ・マーヴィン・ガーデン 儚き夢の果て】におけるジャック・ニコルソンの、一体どこがイケてないのかと言うと、とりあえず眼鏡かけてるってとこでしょうか。
いやいやいや、眼鏡かけてても素敵な男性なんていくらでもいることは分かっています。眼鏡男子大好きです。うちのゴリラ(夫)だってかけてます。うちのゴリラは素敵じゃないけど。素敵ちゃうんかい。いやゴリラはどないでもええねん。
もとい、ひとくちに眼鏡って言うても色々ありますやんか。
この映画でジャック・ニコルソン扮するデヴィッド・ステイブラーがかけてる眼鏡はとにかくオサレさの欠片もない代物なんですわ。百聞は一見に如かずですね、まあとにかくご覧になってみてくださいよ。
ホラ。
“ビン底眼鏡”とは言わないまでも、そのデカいレンズの面積と半透明ピンクのフレームは何やねんって感じでしょ?
この眼鏡を装着した上で薄い頭髪を左から右へなでつける。
ぺたり。
どうですかこの、“イケてなさ”が“名優ジャック・ニコルソン”をも凌駕する眼鏡と髪型の破壊力は。
途中で普段のジャック・ニコルソンに戻るとかないからね。
ずっとイケてないまま。
逆にその勇気を讃える。
そんなイケてないデヴィッドは当然30歳を超えても独身で(イケてないからね)、よぼよぼなのに口だけは達者な祖父と2人でフィラデルフィアに住んでいます。一応毎週水曜に番組を持つDJ ではあるのですが、彼の放送は「DJ」と云うイケてる響きからは程遠い創作話の朗読会。
関係ないけどラジオ局のスタッフのフランクは、【プロデューサーズ】のゼロ・モステルの息子ジョシュ・モステルです。
毛髪以外クリソツか。
1968年/アメリカ/監督:メル・ブルックス/出演:ゼロ・モステル、ジーン・ワイルダー、ケネス・マース、リー・メレディス、エステル・ウィンウッド、アンドレアス・ヴシナス、ディック・ショーン/第41回アカデミー脚本賞受賞注※こ[…]
デヴィッドにはここ1年半ほど音信不通であったにもかからわず突然電話をよこしてアトランティック・シティまで来るようにと無茶な要求をしてくるジェイソン(ブルース・ダーン)という兄がいます。
人生にまったく面白味のない主人公デヴィッドの目を通して、夢見がちで破滅型の兄ジェイソンの波乱に満ちた人生を描く妙ちきりんな映画です。
そのメンヘラ女は一体どこで見つけてきたんや
ジェイソンに言われるがままアトランティック・シティへやってくるデヴィッドでしたが(ダサいコート着て無駄に重そうなトランク抱えた姿もイケてない)、久しぶりに再会したジェイソンはなぜか塀の中。
さらには継母 と継子 という怪しげな女性2人をはべらせている。
継子のジェシカ(ジュリア・アン・ロビンソン)はともかく、継母のサリー(エレン・バースティン)のメンヘラパーセンテージはかなり振り切ってる。
これね、ビックリしたんですよホントに。
サリーを演じたエレン・バースティンと言えばあなた、かの有名なウィリアム・フリードキン監督の傑作ホラー【エクソシスト】でリーガン(リンダ・ブレア)の母親クリスを演じたあのエレン・バースティンですよ?
「【エクソシスト】の出来た母親がイカれて焚き火の前で髪の毛切ってる…」と、クリスであることを認識しながら観るとかなり面白いんでおすすめです。
1973年/アメリカ/監督:ウィリアム・フリードキン/出演:リンダ・ブレア、エレン・バースティン、ジェイソン・ミラー、マックス・フォン・シドー、リー・J・コッブ、ウィリアム・オマリー、キティ・ウィン/第46回アカデミー脚色・音響賞受[…]
良い味出してる2人の黒人
「無料で世界一周に行けるぞ!」とか「ティキ島が手に入ったぞ!」とか胡散臭い話しを持ち掛けてはデヴィッドを巻き込もうとするジェイソンは、要するに夢と現実の境目が霞んで見えるちょっぴりビッグマウスなギャングの構成員。
兄弟でどうしてこれほど差ができてしまったのか理解に苦しむほど、現実主義で堅実なデヴィッドとは対角の位置におわす存在。
ジェイソンが属するギャング団のボス、ルイスを演じるのはこれまたジャック・ニコルソンと親交の深いスキャットマン・クローザース。
何となく「良いオッサン」のイメージがある彼だけど、これはこれで頭のキレる非情なボスに見えるから不思議。
ギャング団でもう一人煌めく存在感を放つのが、パンタロンにアフロヘアのこちらの男性(アーノルド・ウィリアムズ)。役名が分からなかったので便宜上“アフロ”と呼びます。
“アフロ”はボスであるルイスを裏切ろうとしているジェイソンを見張っています。しかしジェイソンの不在時に“アフロ”と鉢合わせてしまったのはどこまでもツイてないデヴィッド。
上の画像くらいの距離感で“アフロ”に会うと、その巨大な頭の視覚効果も手伝って、「ヤバイ!めっちゃデカくて怖そうな黒人来た!」って思ってしまいますやんか。
ところが近づいてみると驚きの事実が発覚するんです。
ツカツカツカツカ…。
リズミカルに足音を響かせてデヴィッドに歩み寄ってくる“アフロ”。
ツカツカ…。
ぴた。
あれちっさ!!
ハリウッド俳優の中では割と小柄な方であるジャック・ニコルソン(177cm)よりもさらに拳一個分ちっさい!
あの足音から言って絶対ヒールのある靴履いてんのに!
ちっさ!!
お爺ちゃんの哀しみが伝わるラスト
しかしこの映画はどうして無冠なのか。
アカデミー賞もゴールデングローブ賞もなんも獲ってない。
結局ティキ島を手に入れる夢を果たすことなく帰らぬ人となってしまったジェイソンを偲び、幼い頃の孫兄弟のフィルムをドアに映して観てるラストのお祖父ちゃんとか最高なんだけどな。
スクリーン代わりのドアを開けたまま出て行ってしまって「ごめん」って言いながら丁寧に閉め直すデヴィッドも何となく哀しくてじんわりきます。
映画【キング・オブ・マーヴィン・ガーデン 儚き夢の果て】の感想一言
ジェイソンは本気でティキ島が手に入ると思ってる。
デヴィッドはそんなこと不可能だと思いつつも兄を信じてみてる。
サリーはジェイソンを愛するあまりどんどん壊れていく。
ジェシカは本当はまともだけど大恩あるサリーを裏切ることができない。
さっぱり噛み合わない変な4人が大きな夢に向かって無防備に走り抜ける数日間を描いたシュールな映画です。
これもアメリカン・ニューシネマに属するのかな。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。