2015年/アメリカ/監督:トム・マッカーシー/出演:マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー、スタンリー・トゥッチ/第88回アカデミー作品・脚本賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
実在のボストンの日刊紙「ボストン・グローブ」の記者たちが、カトリック教会の児童への性的虐待を暴いた実話。
ボストンのみならずアメリカ全土における「カトリック教会」の影響の大きさを思い知らされます。
日本で「毎週お寺にお経を唱えに行ってる」とか「昨日はお寺でお坊さんと遊んだ」とか聞かないもんね。
身近ではないですが子供を持つ親の身としては戦慄を覚えます。
実話を元にした映画【スポットライト 世紀のスクープ】のあらすじザックリ
タブーである神父の醜聞を追うことになったきっかけ
地元の新聞「ボストン・グローブ」で過去に一度取り上げられた神父による性的虐待事件を再び調査してみないかと持ちかけたのは、新編集長マーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)。
よそ者を嫌うボストンの町の、内なる闇を暴くきっかけを作ったのは皮肉にも、外からやって来たよそ者だったのです。
舞台の背景にあるボストンという町について
事件を追う記者たちの行く手を阻むもっとも巨大な壁は「ボストン」そのもの。
まるで町中が教会の非道な行為を隠蔽しようと大きな意志を持っているようです。
アメリカなんて行ったことないんで、当初「へえー舞台はボストンかあー」くらいにしか思っていませんでした(私にとっては仮にボストンがカリフォルニアでもノースダコタでも何てことはない)。
ところが物語が進むにつれ、余りにも町の人達が非協力的であることが不自然に感じられて、知らないなりにボストンという土地柄を調べてみました。
アメリカ発祥の地として歴史は古く、アメリカでもっとも大学が集中していて活気がある反面、閉鎖的で未だに根強い人種差別問題も残る土地なんだってね。
舞台が例えばカリフォルニアだったら、記者たちの取材活動も少しは楽チンだったのかも知れません。
しかし結局はボストン・グローブ誌がきっかけとなっただけのことで、この問題は広くアメリカ全土をむしばむ「現象」だったんですけどね。
「敵は神」神父の児童虐待が与える深刻な影響
虐待被害者ネットワークのフィル・サヴィアノ(ニール・ハフ)によると、小児性愛の神父の餌食となるのに男女容姿は関係なく、主に家庭が貧しく父親がおらず内向的な性格の子供が狙われるとのこと。
家庭環境が複雑な子供が多く、居場所のない彼らにとっては教会と神父はいわば「神」のような存在。
唯一信じる「神」に「性的虐待」という最悪の形で裏切られた時、自ら命を絶つ者も多いと言います。
よってサヴィアノを含めた虐待被害者たちは、自分たちのことを「生存者」と呼びます。
教会が敵わないもの
唯一決定的な虐待の証拠が裁判所に保管されていることは序盤から判明していますが、簡単に閲覧することはできません。
法的に守られている証拠品であってもボストンの判事が教会の隠蔽に加担して許可を出さないのです。
たった一人で教会の悪事に立ち向かうよそ者の弁護士ミッチェル・ガラベディアン(スタンリー・トゥッチ)は、教会より強い力などないと言います。
司法をもってしても教会を裁けない現実がそこにはあります。
誰もが見過ごしてしまう小さな叫び
送ったはずの児童性的虐待事件に関する資料はどこに?
スポットライトの記者たちが情報集めに奔走していると、何人かにこんなことを言われます。
そう、新聞社宛てに送っているはずだと言うのです。
これにはスポットライトの記者たちも寝耳に水、でもそんな資料が社内にあったことは誰も知りません。
スポットライト班がこの事件にかかわってからことあるごとに「この事件からは手を引け」「無理やから止めといた方がいい」などと否定的な態度しか見せないベン部長(ジョン・スラッテリー)が何か隠していそう。
スポットライトのデスク、ウォルター・“ロビー”・ロビンソン(マイケル・キートン)もベン部長は何か怪しいと踏んだのか、最初は調査の報告を密にしていたのに途中から隠すようになります。
センセーショナルな記事を掲載した新聞の発刊はもう間近
バロン編集長とベン部長、それにスポットライトの記者たちで発刊前の最終ミーティング中、事件の隠蔽に加担していた弁護士を罵るみんなを制してロビーが言います。
情報は集まっとったのに何もせんかった。
予想通り反論するベン部長。
情報なんて一部しかなかったやろ。
言ったれロビー!
いや。
1993年に虐待しとった20人の神父のリストが弁護士から送られとって、首都圏(と呼ばれる部署)の記事で採用されとる。
ほれほれ、ベン部長、あんたやろ。もう白状せい。
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へ?
お 前 か い !
これを踏まえて最初から観直してみると、ベン部長って普段からあんな不機嫌で非協力的な感じなんですよね、怪しいもへったくれもない。
もともと完全シロでした!
いつもと同じ静かな朝、運命の新聞が町中に配られる
1993年の時とは違い、今回は決定的な証拠を掴み性的虐待に加担した神父の実名も多数入手することに成功しています。
練に練って満を持しての発刊日。
彼らは何かを変え、暗闇の中を彷徨う誰かの光(スポットライト)となることができたのか。
新聞が配られた日、鳴り止まない電話がその答えです。
映画【スポットライト 世紀のスクープ】の感想一言
映画の最後はこのような記述で締めくくられています。
2002年、スポットライトは600本近い虐待の記事を掲載。249人の神父が性的虐待で告発された。被害者の数は推定6000人以上にのぼる。
2002年12月ロウ枢機卿はボストン大司教を辞任。ローマにあるカトリック教会最高位の教会に転属した。
この記事の後虐待が判明した主な都市は
出典:【スポットライト 世紀のスクープ】字幕
この後神父による虐待が判明した都市の一覧が画面に映し出されます。
一体いくつの都市で虐待があったのか、ご自身の目で確認してみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。