映画【デッドマン・ウォーキング】あらすじと観た感想と深い内容について

1995年/アメリカ/監督:ティム・ロビンス/出演:ショーン・ペン、スーザン・サランドン、ロバート・プロスキー、レイモンド・J・バリー、R・リー・アーメイ/第68回アカデミー主演女優賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

ショーン・ペンとスーザン・サランドン
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

「まんが日本昔ばなし」と言うTVアニメをご存知でしょうか?

幼少期にこのアニメを観て育った私は、自分の子供にも観せてやりたくてDVDボックスが発売されるやすぐに購入しましたが、その中に「花咲か爺さん」というお話があります。

内容は皆さんご存知の通り。

拾ってきた犬のシロを可愛がっていたお爺さんとお婆さんが、シロが「ここ掘れワンワン!」と吠える場所を掘ると金銀財宝が出てきたり、死んだシロを焼いた灰を枯れた桜の木に撒くと花が咲いたり、という昔話。

 

誰でも知ってるこの昔話を子供達と一緒に観ていた時のことです。

とある描写で私はひっくり返るくらいびっくりしました。

 

シロが金銀財宝を掘り当てたことを知った隣に住む性悪のジジイとババアは、お爺さんとお婆さんにシロを貸してくれと頼みに来ます。

快く貸してあげる優しいお爺さんとお婆さん。

しかし性悪ジジイと性悪ババアがシロの示す場所を掘れども掘れども、出てくるのは土やら虫やらばかり…。怒ったジジイとババアは棒きれでシロをボッコボコにして殴り殺してしまいます。

 

いえ、ここでひっくり返ったのではありません。

ここはまあ、普通に子供の頃から「ひでえジジイとババアやな、許すまじ」と拳を握りしめていたので、びっくりはしません。

そのあとです。

 

我が子のようにかわいがっていたシロを殺され涙にくれてるお爺さんとお婆さん。

一度はジジイとババアに向って怒声を浴びせはするものの、なんとそのあと、殿様に嘘をついた罪でしょっぴかれそうになってるジジイとババアを、助けようとするのです。

 

なんで?!

 

恐らく子供の頃の私は「いいお爺さんとお婆さんだなあ」くらいにしか思っていなかったであろうこの場面。シロを我が子と置き換えてみればなおさら理解に苦しむ…子供をボッコボコにされて殺されたとしたら、私なら同等かそれ以上残忍に相手をなぶり殺しにします。

 

でもお爺さんとお婆さんはニコニコ笑いながら、「殿様、どうか許してやってくだせえ」

 

なんで?!

なんで許せるん?!

 

久しぶりに鑑賞したところ、ラストで涙に濡れながら、なぜかこの「花咲か爺さん」を思い出してならなかった映画、【デッドマン・ウォーキング】です。

参考 デッドマン・ウォーキング…死刑囚が死刑台に向かう際、看守が呼ぶ言葉

 

 

映画【デッドマン・ウォーキング】のあらすじザックリ

貧困地区でアフリカ系アメリカ人のために働くシスター・ヘレンは、死刑囚のマシューと知りあう。彼の罪状は、カップルの殺人及び強姦。彼は無罪を主張するが死刑は確定。シスター・ヘレンは彼のスピリチュアルカウンセラーとなり、その死を見届けることになる。

 

 

シスター(尼僧)と死刑囚の出会い

尼僧シスター・ヘレン
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

貧困層の黒人達のための施設「希望の家」で働く尼僧のシスター・ヘレン(スーザン・サランドン)は、施設に届いたマシュー・ポンスレット(ショーン・ペン)という死刑囚からの手紙を読んで、刑務所へ面会に訪れます。

 

マシューの罪状は若いカップルの殺害・強姦

カップルの男性は後頭部を2発撃たれ即死、女性はレイプされ17箇所も刺された挙句同じく後頭部を2発撃たれて絶命。

共犯の男と2人、凶悪犯として世間を騒がせ、裁判でもふてぶてしい態度で聴衆を挑発し、「死んで当然の人の皮を被ったモンスター」と言われています。

 

自分でもどうして面会に訪れたのかよく分からないまま、緊張した面持ちで待つシスター・ヘレンの前に現れたのは…

兵の中のマシュー
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

いやあ~…オットコ前ですねえ~ショーン・ペ~ン。

「モンスター」とは程遠い、一見だたのグッドルッキングガイが姿を現しましたとさ。

 

無罪な訳ないやろドアホ!

家族すら面会に来ないというのに、まさか女性のシスターが面会にきてくれると思わなかったマシューは嬉しそう。

聖職者と言っても高圧的でなく説教臭い事も言わないシスター・ヘレンを気に入ったマシューは、協力してほしいことがあると言ってきます。

マシュー

俺は殺してへんねん。

殺ったのは相棒や。

頼む、無実を証明したいけど金がない。

なんとかあんたから弁護士に頼んでみてくれ。

まあちょっと落ち着いてモンスター君。

直接手を下してなくても殺害現場におったのにとりあえず「無実」はないやろ。

 

 

シスター・ヘレンとマシューを取り巻く人々

シスター・ヘレンは弁護士にも手伝ってもらいながら手を尽くしますが、無情にも死刑執行の日は1週間後に決定…。

マシューは死刑執行のその時まで付き添ってもらうことができる「スピリチュアルカウンセラー」にシスター・ヘレンを指名し、シスター・ヘレンも戸惑いながらこれを承諾。

 

シスター・ヘレンとマシューのやり取りだけを観ていると、ついうっかり「死刑反対!」って言ってしまいそうになりますけど…。

ガラス越しに話すマシューとヘレン
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

【デッドマン・ウォーキング】では被害者の親の心情も、加害者の親の心情も、死刑に関わる人々の心情も、政治家も世論も宗教も、実に細部までもどかしいほどに描かれるため、もう自分がどうすればいいのか、誰に何をしてあげられるのか、考えすぎて頭から煙が出ます。

 

被害者の親

被害者カップルの親御さんなんてもう痛々しくて観ていられません。

笑いが絶えなかった家庭は変わり果て、特に被害男性の両親はついに離婚してしまいます。作中で、子供を亡くした夫婦の70%が離婚するというデータも出てきます。

殺害された女性の両親
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

被害女性の父親は、法廷でマシューとすれ違った時に殺しておけばよかったと言うほど…。

でも私はそれには反対です。

だって子供殺されたらそんな楽に死なせてやる気ないもん。

 

加害者の親

そして「モンスター」だって人の子。

親はいます。

 

さぞかし育児放棄したり虐待したり酒乱だったりしてどうしようもない親なんだろうと思っていたら泡食いました。

普通のええオカンです。

マシューのオカン
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

オトンはいませんが、4人兄弟を一人で育ててきた、貧乏だけど普通の、子供を愛するええオカン。弟達も男前でワルで頼りになる兄を愛していたのが見て取れます。

ちなみに次男は若きジャック・ブラック。笑いは一切なし。

弟たちと最後に話すマシュー
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

さらに、マシュー自身も、つっぱってはいますが、オカンをとてもとても愛しているんです。

死刑執行前に大の男が「ママ、ママ…!」としゃくりを上げて泣く姿なんて私、涙でよく見えません。

 

オカンが大事やったらなぜにそんなアホなことしでかした!

こんバカ息子が!!(号泣)

 

シスター・ヘレンの身内、その他外野

シスター・ヘレンはもちろん独身ですが、貧困街の子供達はしょっちゅう家に遊びにきているし、施設の人達とも家族のように接しています。

シスター・ヘレンが世間で「モンスター」と呼ばれる悪党を救おうとしていることで、子供達もまた、様々な葛藤にさらされます。

子供達とカードをするヘレン
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

「死刑廃止論」を掲げ、金もないマシューを救おうと尽力する弁護士も然り。

世論に背中を押され、人気獲得のためにも「モンスター」をさっさと殺してしまおうとする知事にだって、葛藤はあったことでしょう。

 

 

誰かが赦さなければ終わらない

朱縫shuhou

絶対許さん!!絶対許さん!!

いくら悔い改めようと、お前の親が泣き叫ぼうと、お前だけは一生許さん!!

死のうが朽ちようが末代までたたってやる!

生まれてきたことを後悔するがいい!

親となった今観ると余計に、子供を殺された両親の気持ちに移入してしまっていきり立っていた私ですが、最後にふと思い出したんです。

 

「花咲か爺さん」。

 

そして考えました。

 

お爺さんとお婆さん(被害者の親)がジジイとババア(加害者)を憎いのは当然として、

でももしかして、

私が「虐殺されたシロ(被害者)」の立場やったら、どうなんやろう…?

って。

朱縫shuhou

親が私のために、

怨念に憑りつかれて、

他人を呪うために人生を消費するやなんて、

考えられへん。

 

「殺された私」はきっと、私がいなくなっても愛する親には笑っていて欲しい

そんなことは一生無理だとしても…です。

「殺された私」の勝手な希望です。

 

 

「花咲か爺さん」の話に戻ります。

 

お爺さんとお婆さんに助けてもらった性悪ジジイとババアは改心し、その後は隣家同士4人で楽しく暮らしました、と続きます。

「人が罪をゆるす」ことで訪れた平穏。私がもしシロであったなら、4人で助け合いながら笑って過ごすお爺さんとお婆さんを見て幸せを感じることでしょう。

 

なんとなく聖書の教えっぽい流れになってきてますけど。

 

「俺は無実だ!相棒が悪い!政治が悪い!なんやったらデートしてた被害者カップルが悪い!」と言って反省の色なんてこれっぽっちもなかったマシューは自分の罪を悔い改め、死刑執行前には被害者の両親に心からの謝罪をします。

 

自分の罪を認め、悔い改めることで魂は救われるの?

そうなの?

聖書の教えはよく知りませんけど、きっとそうなんだわ。

聖書を聞きながら移送されるマシュー
©Dead Man Walking/デッドマン・ウォーキングより引用

マシューの魂は救われ、マシューの死によって被害者の親御さん達が憎しみの連鎖から少しでも解き放たれれば、それでもういいのかも知れない…。

 

とにもかくにも、作品のテーマとしては死刑制度反対の姿勢を貫くティム・ロビンス監督の思想がマシューの最期のセリフにずばり投影されています。

マシュー

最後に言わせてくれ。

人を殺すのはよくない。

それがあんたでも、俺でも、誰でもだ。

 

 

映画【デッドマン・ウォーキング】の感想一言

朱縫shuhou

最後まで考えがまとまらないまま、映画は終わってしまいました…。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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