1963年/アメリカ/監督:ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ/出演:エリザベス・テイラー、レックス・ハリソン、リチャード・バートン、マーティン・ランドー、ロディ・マクドウォール、ケネス・ヘイグ、フランチェスカ・アニス/第36回アカデミー撮影・美術・衣裳デザイン、視覚効果賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

カットにカットを重ねた劇場公開版でも192分。
全長版は244分。
それでもまだまだ日の目を見ない映像が残っていると言われています。
「ザ・ハリウッド」みたいなすごい映画を撮りたかったんでしょうけどね。
数多の予期せぬ不幸が重なり、とんでもない汚名をこうむることになってしまった悲劇の映画、【クレオパトラ(1963)】です。
映画【クレオパトラ(1963)】のあらすじザックリ
「映画史上空前の失敗作」!20世紀フォックスが赤字で傾く
先に言ってしまいますと、【クレオパトラ(1963)】は、「映画史上空前の失敗作」と言われるほどやらかしてる映画として有名です。
どのくらいやらかしてるかと言うと、製作・配給に携わった20世紀フォックスが倒産の危機に追い込まれるほど。
20世紀フォックスって言うたらあなた、ワーナー・ブラザースやパラマウント映画と並んでハリウッドのビッグ6と言われた映画会社ですよ?(現在はウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下)

20世紀フォックスが傾くってどんなんやねん。
よっぽどおもろない映画に違いないわ。
そんなことはありません。
決して「泣ける!」とか「熱い!」といった類の映画ではないにしろ、おもろないなんてことは絶対ない。
例えば下の画像を見てください。

序盤のワンシーンですけど、近景と中景にアホほどエキストラの兵士が配置されていますよね?
そこじゃなくて。
さらに向こう。
矢印で示した遠景にも、何百人もの兵士がウロチョロしているんです。馬を引いて尾根づたいに小山を登ったり降りたりしているのも判別できます。
めっちゃ向こうなんやでホンマに。
すごない?
山向こうのエキストラなんてカメラ回ってんのか回ってへんのか絶対分かってへんやろこれ。
【クレオパトラ(1963)】にはノンCGのこんな場面がたくさん映し出されます。

当時のハリウッドのスケール感がよく分かるし、レックス・ハリソンやリチャード・バートン、マーティン・ランドーなどベテラン勢の演技も良いし、何よりエリザベス・テイラーの「クレオパトラ度」が凄まじい。
この映画の30年前に公開された【クレオパトラ(1934)】でクレオパトラ7世を演じたのはクローデット・コルベールでしたが、正直言ってミスキャストでしたよ。1945年の【シーザーとクレオパトラ】ではヴィヴィアン・リーがクレオパトラに扮しましたが、これもまたちょっと違う。
クローデット・コルベールにしてもヴィヴィアン・リーにしても、ワタシ的にはまず単純に色気不足を指摘せざるを得ませんわ、ええ。
「クレオパトラ」のイメージってやっぱり、「その豊麗さで男を懐柔する」みたいなとこがありますやんか。
そのためにはマシュマロのようなふわふわボディが必須なんですよ。
これです。

ふわっふわ。
ベッドがふわっふわなんじゃないですよ?
ボディですよ。
ボディがふわっふわなんですたい。
もう隠すつもりがないならそんな少ない布っ切れ、いっそのこと取っておしまいなさい。
風紀係やったら公序良俗に反するから止めなあかんわ。
そのお姿だけで大半の男性は果ててしまわれるのではないでしょうか。
ムンムンムラムラ。
このクレオパトラらしいクレオパトラがですね、何百人もの奴隷に引かせた巨大なスフィンクスに乗ってローマにやって来るワケです。

着ているドレスは黄金。
並んで座る息子のシーザリオンも黄金。
台座も黄金。
TVの前でひれ伏すしかないでしょう。
「セリフないし、ちょっとトイレでも行こ」って席を外そうもんなら「退出を許可していません」って言われそうなんで注意してくださいね。
じゃあ一体どこが失敗作なのか
そんな見どころたっぷりの【クレオパトラ(1963)】。
興行収入的にも決して悪かった訳ではありません。当時映画自体は大ヒットしています。

じゃあ一体どこが「映画史上空前の失敗作」なのかと言うと、その大ヒットで得た興行収入では賄えないほどに膨れ上がった製作費が社運を傾けたという点なんですね。
要するに「事業的には」大失敗ってことです。
主な要因はこんな感じ。
- ロケ地の変更による撮影セットの再建
- エリザベス・テイラーの度重なる病気
- 配役・製作スタッフの変更
- 製作期間の延長(4年)
- エリザベス・テイラーとリチャード・バートンのW不倫
イチ視聴者にしてみたら関係ない部分かも知れませんね。20世紀フォックスの株主とか熱烈ファンとかだったら憤慨するでしょうけど。
煌びやかで壮麗なクレオパトラをご覧ください
ストーリー云々というよりは、アレキサンドリアの宮殿やローマの市街地の豪華なセット、クレオパトラを始めとする登場人物の煌びやかな衣装など、観ているだけでもため息とα波が出てしまうような視覚的癒し効果の高い映画なので、いくつか画像を並べてみました。

いきなりアレですけど。
ジュリアス・シーザー(レックス・ハリソン)に枕営業しかけた時のクレオパトラ。
匂い立つような色気で画面がよく観えない。

こちらはシーザー亡きあと、下心なしで純粋に愛するアントニー(リチャード・バートン)と初めて結ばれた時のクレオパトラ。
いつも毅然としているクレオパトラ女王が恋する乙女の表情になっていてかわいい。
しかしアントニーと絡む後半はどうしても不倫スキャンダルが頭をよぎる…。

おかっぱ頭に黄金の蛇の髪飾り。
もっとも一般的な「クレオパトラ」のイメージに近いような髪型のクレちゃん。

当たり前だけど基本的にはエリザベス・テイラーは全幕、アイラインをがっつり引いた古代エジプトメイクを施しています。お風呂も就寝時もセックスする時も絶対メイクは落としません。
現代やったら肌が荒れてしゃあないけどね。きっと当時は化学製品を一切使わない植物性化粧品しかなかったはずやからお肌に優しいんやな。

シーザーの助力で晴れてエジプト王となったクレオパトラ。
頭の長さが3倍にもなってるのになぜか可愛い不思議な帽子。

愛するアントニーの死を看取るクレオパトラ。
晩年はロングヘアを頭頂部で束ねて横に垂らす髪型が多くて、大人の女性らしさが増してる。エレガント。

毒蛇に腕を噛ませて自殺したクレオパトラ。
着ているのはあれですね、シーザーに呼び寄せられた時にローマに着て行った金のドレスですね。
最後の恋人となったアントニーが、このドレスを纏ったクレオパトラにひと目で恋したと言っていたドレスです。
エジプトのホルス神(ハヤブサの姿)を模してるみたいだけど、クレオパトラはホルス神の母とされる女神イシスであるはずなのに、母親が子供のコスプレってそれどういうことやねん。
まあ美しいんでどうでもいい。
映画【クレオパトラ(1963)】の感想一言

一番好きなキャラクターですか?
そりゃもうアイツですよ、クレオパトラの弟でエジプト王のプトレマイオス13世(リチャード・オサリヴァン)。
見た目も中身も超アホですんごい愛らしいんですよ。よくこれで聡明なクレオパトラに盾突こうとしたなあ~って言う…。
こいつ必見。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。















