1993年/アメリカ/監督:ヘンリー・セリック/声の出演:クリス・サランドン、キャサリン・オハラ、ウィリアム・ヒッキー、グレン・シャディックス、ポール・ルーベンス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
自分らしい創作法と表現媒体にこだわり、「理解されないはみだし者」を描き続ける鬼才ティム・バートンが、ついにストップモーション・アニメーションを再び映画の表舞台に解き放った作品、【ナイトメアー・ビフォア・クリスマス】です。
幼い頃からゴシック・ホラーや怪奇映画、怪獣映画、ストップモーション・アニメーションに多大な影響を受けていたティム・バートンの、不気味で奇怪で物悲しい世界観をこれ以上ないくらい満喫できる名作。
数年前「ティム・バートン展」を見に行きましたが、彼のこの独特の世界観は少年時代からとっくに出来上がっていて、ただ具現化する技術がやっと追いついただけのような気がしました。
ちなみに監督はヘンリー・セリックで、ティム・バートンは原案とキャラクター設定と製作として関わっています。
参考 ゴシック・ホラー=小説や映画のジャンルの一つ。ヨーロッパのゴシック風の古城や寺院などを舞台に、超自然的な怪奇を描いたものを指す。
映画【ナイトメアー・ビフォア・クリスマス】のあらすじザックリ
パンプキン・キング、ジャック・スケリントン
白くて丸い顔に空洞だけで眼球がない目、穴だけの鼻、笑うと耳まで裂ける口(耳は見当たらへんけど)という一見骸骨のような外見をしたハロウィン・タウンのパンプキン・キング、ジャック・スケリントン。
人を驚かせたり怖がらせたりするプロフェッショナルで、毎年ハロウィンに大活躍します。
ジャックのお陰で今年のハロウィンも大成功。やんややんやとハロウィン・タウンじゅうが大盛り上がり。
そんな中、なぜかジャックはひとり浮かない顔……。
今年も去年と同じく大成功。
その前も…その前の前も…毎年毎年人を驚かせて怖がらせて、同じことの繰り返し…。
えてして「型にはまった日常生活のループ」は時に人に虚しさを感じさせるものでして。
ジャックが「人」かどうかは置いといて。
ハロウィン・タウンとクリスマス・タウン
心神喪失状態で足を踏み入れた森の中、ジャックは不思議な形の扉のついた木々を見つけます。
その中で最も楽しげな光を放つ扉に触れてみると、ジャックはたちまち扉の中に吸い込まれ…。
たどり着いた場所はいくつもの明るい色であざやかに彩られ楽しげな音楽が響き渡る今まで見たこともない美しい世界、「クリスマス・タウン」。
そしてそこで聞いたのは、クリスマス・イヴの夜、良い子達にプレゼントを配って回る赤い服を着た「サンディ・クローズ(鋭い爪を持つ男)」の伝説。
ジャックはたちまちクリスマスの虜となってしまいます。
※最初にサンタクロースの影を見た時爪が長く映っていたことから、ジャックは「サンタクロース」のことを最後まで「サンディ・クローズ」だと勘違いしています。
「クリスマス」を理解したいジャックのひらめき
大急ぎでハロウィン・タウンに戻ったジャックは、ハロウィン・タウンでも「クリスマス」をやってみようと住人達に呼びかけます。
ところがいくら説明しても普段から不吉なことしかやってない住人達にはどうもうまく伝わりません。彼らにとってクリスマスプレゼントの箱は人を驚かせるためのビックリ箱であり、プレゼントを入れるための靴下は湿った汚い足で履くためのただの靴下なのです。
言い出しっぺのジャックだってそう。
楽しげで愉快で幸せで明るく温かい「クリスマス」が一体どんなものなのかよく分かっていません。
だってさっき初めて見たんだもん。
どうしたらええんや…。
僕にも「クリスマス」はできるはず…。
でも何かが違う…。
「クリスマス」を理解する為にジャックがやったこと
●柊の赤い実を顕微鏡でのぞく。
●プレゼントのぬいぐるみの腹を裂き綿をほじる。
●「クリスマス・キャロル」を何度も読む。
そしてとうとうひらめいたジャック。
そうや!
今年のクリスマスはサンディ・クローズに代わって僕がプレゼントを配ろう!
どんな思考回路やそれ。
拉致られたサンディ・クローズとまともなツギハギ人形サリー
サンタクロースに成り代わるためには本物は邪魔。
思い込みと勘違いのはなはだしいジャックは、ハロウィン・タウンの悪ガキ3人組を使って拉致ってきたサンタクロースに向ってこう言います。
今年は僕がクリスマスをやりますんで!
休暇だと思ってゆっくりしてください!
ただ「クリスマスっていいな、素敵だな、僕もやりたいな!」と憧れていただけなら可愛いかったでしょうに。
生半可ハロウィン・タウンで市長並みの権力を持ってるジャックの“独り善がり”は否応なしにハロウィン・タウンの住人達をも巻き込んで、ちょっとずつちょっとずつ斜め上のとんでもない方向へ流されて行くのでした。
何が何だか分かってないのに面白がってジャックの“クリスマスジャック”を手伝うハロウィン・タウンの住民達。
唯一「なんかこれヤバイんちゃう?」というまともな感覚を持ち合わせているのはジャックに想いを寄せるツギハギ人形のサリーのみ。
クリスマスの象徴であるツリーが燃えてなくなるという不思議な光景を目にしたサリーは、他人のホリデイを乗っ取るのをやめるようジャックに進言しますが、絶賛暴走中のパンプキン・キングはそんなもん聞いちゃいません。
サリー、僕のためにサンタの赤い衣装を縫ってくれ!
聞けーい。
見習おう!自分を認めてポジティブに!
ジャックの身勝手極まりない思い付きのせいでこの年のクリスマスはしっちゃかめっちゃか。
でも自らの失態に気付いた時のジャックの気持ちの切り替えの早さと前向きさは人として見習いたいところです。
まあいいだろう!
僕は頑張った!
「まあいいだろう!」!?
そして自己評価高!
いやでもこのスピリットですよ。誰でも失敗はする。大事なのは考え方とリカバーやん。
よっしゃみんな、レッツポジティブ!
映画【ナイトメアー・ビフォア・クリスマス】の感想一言
不吉で不気味なハロウィン・タウンの支配者ジャック・スケリントンは鉄の心臓と無敵のポジティブシンキングを有したダーク・ヒーローなのでした。
こうでなければティム・バートンが描く「理解されないはみだし者」たりえませんけどね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。