1946年/アメリカ/監督:ハワード・ホークス/出演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、ジョン・リッジリー、マーサ・ヴィッカーズ、ドロシー・マローン、エリシャ・クック・Jr
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
前作【脱出(1944)】で大成功したハワード・ホークス監督が、再びハンフリー・ボガートとローレン・バコールを起用して挑んだハードボイルド映画。
原作はストーリーが複雑であることで知られるレイモンド・チャンドラーの探偵小説「大いなる眠り」。
余りにも難解であるためホークスがチャンドラーに直接「詳しく説明してよ」とお願いしたところ、「俺にも分からん」と言われたらしい。
お前(作者)が分からずして一体誰が分かると言うのか。
でもホントそう。一回観ただけでこの映画の全容が分かる人なんているのでしょうか?
【三つ数えろ】です。
映画【三つ数えろ】のあらすじザックリ
ハンフリー・ボガートとローレン・バコールの絡みが妖艶な“雰囲気名画”
「ストーリーが複雑」とは言え、小説でじっくり活字を読んだらまあ理解できないこともないんじゃないの?って思ってます。原作読んでいないんで勝手な想像ですけど。
つまるところ映画【三つ数えろ】が難解である原因は「脚本の悪さ」にあるんですよ、たぶんね。
まず大富豪のスターンウッド将軍から探偵フィリップ・マーロウ(ハンフリー・ボガート)への依頼の内容が不明瞭。
ただでさえスターンウッド家の長女ビビアン(ローレン・バコール)は謎が多いのに、視聴者ウケを狙って無理矢理当時のビッグ・カップルであるボギー(ハンフリー・ボガートの愛称)とローレン・バコールそのものを彷彿させる意味深な会話を追加しているので益々何を言っているのか分からない。
次から次へと出てくる新キャラクターに新組織。
キャラクターが増えるたびにうやむやにされていく直前の目的。
行き当たりばったりで目の前の事件を追う主人公。
明かされることのない事件の全貌。
意味が分からないにもほどがある。
それなのになぜか目が離せない。
そうです、「全然意味分かんないのに目が離せない」んです。これが【三つ数えろ】のすごいところ。
男に例えるなら“雰囲気イケメン”。
よく考えたら男前でも何でもない。でも彼が醸し出す雰囲気はイケメン以外の何者でもない。
これを映画に当てはめるなら“雰囲気名画”。
よく考えたら名画でも何でもない。でも作品が醸し出す雰囲気は名画以外の何物でもない。
熱視線を送り合うボギーとバコール
そしてその“雰囲気名画”であるためにはボギーとバコールの共演は欠かすことができません。
15分に一度は交わされる二人の濃厚で艶やかな会話と会うたび縮まる距離感は、まるで【三つ数えろ】の撮影後にめでたくゴールインした彼ら自身の馴れ初めを描いているみたいでピンクのため息が出ます。
例えば最初にバコール(敢えて役名の「ビビアン」ではなく「バコール」と書きます)がボギーの事務所を訪れた時の、悩まし気に膝をさすっているバコールにボギーが「掻きなさい」と言う場面など、ラブラブの2人がかわいくて笑っちゃう。
パーティ会場で離れた距離から粋な挨拶を交わす2人とかね。絶対他の客なんて見えてない。
お互いに「好きだよ」「好きよ」と何度も気持ちを打ち明け合ったりしますし、マーロウとビビアンの会話なのかボギーとバコールの会話なのか、映画と現実の境目が曖昧でドキュメンタリーを観てるみたい。
「撮影当時恋人同士だったスターの共演作」なんて他にいくらでもありますけど、「主演2人の私生活が脚本に影響を及ぼしている」とまで感じさせる映画は【三つ数えろ】くらいのものではないでしょうか。
映画【三つ数えろ】の感想一言
結局賭博師の“マース”と言う人物が黒幕だったんですけど、“リーガン”や“ガイガー”や“ハリー”との関係はよく分かりません。
そんなことよりも(おい)「手が壁に当たってゴン!ってなったけど真顔で演技を続けるボギープロ」でもご覧になってほっこりしてください。※左手に注目。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。